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17




『ふぁー…朝は、苦手だよ…』






ポツリ独り言。
眠いせいか、それが痛いことに気付けない


まだきちんと開かない目を擦りながら居間のを開け、私は中に一歩踏み出した……






「あ!?雛危ない!!?」

『へ?』






――ザクッ―






……ザクッ?
恐る恐る自分の足を見ると、噴水の如く溢れ出す血。






『…………ギャーーーー!!!!』






つる日々草
Act.17:茜-アカネ-






『うう…(泣)』






まさか朝から割れた茶碗の欠片で怪我するなんて…
弁慶さんの下で修行していたお蔭で、怪我の手当てはすんなり出来たけど…






『痛っ!』

「思ったより傷が深いですね…
この様子では1日安静した方が良いですよ雛さん」

『えー…』






せっかく今日はに行って、望美ちゃんの修行を見ていようと思ったのに…
神泉苑は景色も凄い綺麗らしいし…


ちょっと残念…






「ごめんなさい雛…」

『え?』

「私が、茶碗を割ったから…」

『あ、ううん!大丈夫だよ!!
これ位直ぐに治るし!』

「だけど神泉苑に行くの楽しみにしてたって…」

『うーん…でもまた何時でも行けるから、ね?
それじゃあ白龍!一つお願いして良いかな?』

「うん」

『私の代わりにで、望美ちゃんの修行や周りの景色を存分に楽しんできてもらえないかな?』

「うん!!」

『うん、良い返事!』

「それでは雛さん、僕達は少し此処を留守にしますがくれぐれも外に出ないで下さいね?」

「それと知らない人が来たら絶対に家に上げちゃ駄目よ!」

『はい…』






私子ども扱い…?
こう見えて私望美ちゃんと同じ17歳なんだけどなぁ…
ゆずるんの一つ上だし…






『頼り、無いのかな…』






確かに弁慶さんみたいにみんなを完璧に看病出来る訳じゃ無いし、ましてや朔や望美ちゃんみたいに龍の加護がある訳じゃない…
譲君が来てから料理も私はお手伝いしている程度のような…






『はぁー…せめてこの治癒力とか八葉や神子以外にも使えれば良いのにな…』






そしたらこの私の足だって治しちゃうのに!


だけど……アレ?






『お母さん…
八葉や神子じゃない私のケガも治せたよね…?』






そうだ。
ここに来てからしばらく経って忘れていたけど、お母さんは昔から私やお父さんのケガを治していた…

今思えば、凄く不思議。






『…………白龍なら、知ってるかな?』






八葉のカケラについても知ってたからもしかしたら…――






『よし!じゃあ神泉苑に…っ!』






い、痛い…!!
ああ忘れた…私ケガしてたんだっけ…
足を直につけなければ何とか歩けるんだけど…






『うーん…………あ!』






杖発見☆






***






『…………此処』






ガヤガヤと賑わう人混み。
六波羅に来ちゃったよ
あれー?なんで?
確か邸から上の方に行けば着くって朔が言ってたのに…






『…………と、とりあえず邸に戻ろいだっ!!






杖を使って片手で華麗に一回転。
しかしそれは見事に失敗してしまい、ケガをした足を思いっきり知らない人にぶつけてしまった。






『っー…(泣)
あ、あのすみませ…』

「すみません?それだけで済むと思ってんのかよお嬢ちゃん!?」

『…………』






あ、れ?
この男の人って…






「ん?お嬢ちゃん何処かで…」





「こんな若い娘…久しぶりだぜ」

「本当だよな?
俺の下の刀も張り切ってるみてぇだ」





ヤ バ イ !
絶対そうだ、あの時下ネタ言っていた男の人だ!!






『い、いえ気のせいじゃないですか?
オホホホ!私はコレで失礼し…』

「待てよ、あの時足引きずってたお嬢ちゃんだろ?
久しぶりだな?ちょっとおじさんと話しようか?」

『ホホホホ…』






どうしましょう、どうしましょう
やっぱり私の初めてはこの男とヤる運命なのかしら?


あー…こんな事になるなら初めては景時さんにあげとけば良かった。
九郎さんやゆずるんでも良いかなー…
あと将臣君や重衡さんとかでも…

弁慶さんと知盛さんは絶対ドSだから、体力持たなそうなので遠慮させてもらおうかな…
まさかの展開で望美ちゃんかも知れないけど、まぁそれはそれで良いかなー(壊)




じゃないよ!!






『嫌ー!離して!!』

「良いからこっち来い!!」

『ひっ!』






あ、もしかしたらこれって罰なのかな…
弁慶さんが邸から出るなって言ってたのに勝手に出て来ちゃったから…
だけど、それとこれとじゃ割が合わなくないですか神様?
と言うか龍神様






「前は変な野郎共に邪魔されたが今回はそうは行かないぜ?」

『あ…』






そうだ…前は…




「嫌がってる女を無理やり襲うのはねぇんじゃねぇの?」


「大丈夫ですか?今解きますゆえ…」





将臣君と重衡さんが、助けに…――






「ほら!早くし「待ちな」

「嫌がる女の子を無理やり連れて行くのは見逃せないね」

『え…?』






赤くて少しクセのある髪。
見た目は私と同じくらいだが、どことなく大人びている顔立ち。
服装も私や男の人と少し違い、色鮮やかで洒落ている…




この人…






「お、お前は…!!」

「ふーん、オレの事知ってるんだ?
なら分かるよな…失せろ」

「ひぃいぃ!!」






青年が男にそう告げると、男の人は顔を青ざめ一目瞭然と走り去って行った。
男が居なくなったのを確認した青年は、笑顔で微笑みながら私に一歩ずつ近付いてき…






「大丈夫かい、姫君?」






…………誰ですかこの人。






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あきゅろす。
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