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16




「――…は……ぁ」






っ…!なん、だろう…?
凄い圧迫感を感じる…‥


そして、この切ない声…

この正体は一体…――






「はぁ…はぁ…雛の寝顔可愛い!」

『…………』






これは夢ですか?現実ですか?






つる日々草
Act.16:辛夷-コブシ-






「ごめんね雛…!
あまりにも雛の寝顔が可愛くて…」

『あ、ううん…大丈夫』
(ぶっちゃけ怨霊かと思った( ̄u ̄;))

「本当に、朝から迷惑ですね僕達の神子は」

「夜中こっそり夜這いに来ようとしてた人よりはましです」

「ですが、僕は行ってませんよ
実際に夜這いに来る、君よりはましです」

「ふん!私に恐れて帰っていったくせに!」

「恐れる?それは違いますよ
別に今回で無くとも夜這いをする機会なんて幾度なくありますからね
それに女性同士では契りを結ぶことすら出来ないじゃないですか」

「私と雛なら愛の力で結婚くらい出来ますよ!」

「「「『…………』」」」





今日も2人は元気ですねー…
2人のせいで影が薄いゆずるんや九郎さんの影が更に薄くなるよ。
しかもあの景時さんの影すら薄くなってる…
これは喜ぶべきなのかしら…?






「んー!それにしても雛ちゃんの太ももは気持ちいね〜
最近よく眠れなかったから、これならぐっすり眠れそうだよ…」






ああ、コイツは薄くなってなかった。
可笑しいなぁー、私膝枕した覚え一切無いんですけど…






「ゴフッ!!」






あー…W神子に殴られてる
あ、朔に別室に連れて行かれた






「そうだ!ねぇ雛!!
これから私と一緒に市に行かない?
私この服以外持ってないし…
それに雛もあんまり服持ってないんでしょ?」






望美ちゃんからの突然の誘い。
望美ちゃんの言うこの服とは、望美ちゃんがこの世界に来たときに着ていた服のこと。
確かに私もこの世界に来たときの服と、朔のおさがりとしてもらった着物が一着だけ
しかし、今までの暮らしでは私にはこの二着だけで充分だった。






『だけど…私お金ないし…』

「何言ってるの!
ここに良い金づ……お金を持って居る人が居るじゃない!!」






ちょーっと!望美ちゃん?!
今金づるって…
しかもその人って九郎さん?!!






「はぁ!?望美、お前何を言っ「ちょっと九郎さん顔かして♪」

「『…………』」






あー…九郎さんが(違う意味で)戦場に連れて行かれる…
つか望美ちゃん恐い






『譲くん…』

「何ですか雛先輩…」

『あの子で良いの?』

「良いんです…良いんですよ…」






恋する少年、声が小さくなってるよ




五分後、とても良い笑顔で大金を両手に望美ちゃんが来たのは言うまででもありません…






***






「此処が市かぁ!結構大きいんだね!!」

『うん、ちょっとしたショッピングモール?』

「あはは!なるほど!!」






ふふ、望美ちゃん楽しそう。
両手のお金はスルーするよ
だけどせめて巾着袋にでも入れれば良いのに…






「わー!この着物可愛い!!」

『本当だ!!』






望美ちゃんが手に持っているのは薄ピンクがベースの桜の花びらが散っている着物。
その着物自身もそうだけど、望美ちゃんのピンク色の髪の毛が見栄え良さを更に引き出していた。






「よし!私はこれにしよう!!
雛はどうするの?」

『そうだなぁー!私は…――』






目に留まった一つの着物
紺色がベースで月と桜や梅などが咲き乱れている柄…
それは重衡さんに貰った舞扇の柄ととても類似していた。






『…………』

「どうしたの?
あ!その着物にするの?」

『え…?あ、ううん!!
綺麗だなぁって思っただけ!
それに私になんかこんな大人っぽい柄似合わないよ…』

「そんなこと無いよ!
それに雛はそれが気に入ったんでしょ?
ならそれ買おうよ!!」

『望美ちゃん…』

「ね?」

『うん…!』






そして私達はそれぞれ自分の好みの着物を買い、ついでに朔から頼まれたお使いを済ました。






「ねぇー雛?」

『なに?』

「もし私達の運命が変わったとしても…またこうして一緒に買い物しようね?」

『もちろんだよ!約束!!』

「うん!約束!!」






そして私は望美ちゃんの意味をきちんと理解せず、小指を絡ませ約束を交わした。
少し苦笑している望美ちゃんに気づかずに…――




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あきゅろす。
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