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みえたりみえなかったり



この世界は俺の生きていた世界とは別のようだった。
すべての人間に妖が見える、不思議な世界だった。



虚しくなった。
悲しくなった。
寂しくなった。




そこに確かに存在するのに、それはまるで目の前で繰り広げられる喜劇のようにしか映らなかった。






5歳の頃に記憶を取り戻してからは力が強くなってしまったようで、どれが人に化けてる妖が分かるようになった。
オーラ、とでも言うのだろうか。雰囲気でも正しいかもしれない。
ただ、「あれは妖」「あれは人間」と区別が付くようになった。

年を重ね小学校に行った。
おかしな少年がいた。


奴良リクオ


あれは人間だ。あれは妖だ。
しっかりと貼られた境界線を曖昧にする存在。
境界線を歪める存在。
怖いわけではない。
むしろ興味がわいた。


ある日の事だった。
クラスで人気者の清継くんが取り巻きに囲まれながら「妖怪など存在しない」と豪語する姿、それに反論する奴良くんの姿。
遠巻きに見ていただけなのだが、何故か話を振られた。


「夏目くん!君はどう思うんだい!?」
「...俺?」
「そう!!常にこのクラスでの出来事を第三者の目線から見ている夏目くんは、どっちだと思うんだい!」
「...さぁ、どうだろうね。
自分の知識が全てではないし、身の回りで起こることだけが世界ではないから、いるという可能性も否定は出来ないと思うよ。」


俺がそう言うとクラスの女の子達は顔を赤く染める。
...最近の子どもはませているな、なんて他人事のように考えながら外に目を移す。
前の世界でも今の世界でも妖たちに美しい美しいと囁かれてきた今では、嫌でも自分の容姿に気づかされるわけだが、相変わらずこの女顔は俺のコンプレックスでしかない。


そんな、今更どうにも出来ないことを考えながら窓の外をみる。
空を飛んでた鴉。
服を着た、賢者のような格好をした鴉。
あの格好は天狗の装束じゃなかっただろうか。


(...そうか、鴉天狗か。)


向こうでは見かけたことが無かった種類の妖だったからなのか少し嬉しくなった。
それにしても妖にも種類があるのかな。









(だって誰も)
(驚いていないんだ)






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あきゅろす。
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