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ここの世界も空は青い
0歳の頃の記憶なんて当然ない。
きっと俺自身ちゃんと意識を持ち出したのは1歳かそこらだろう。
いつが始まりだったのかは覚えていないが、はっきりと感じていたことがある。
この世界に対する違和感
世界と言っても日本がだとか、宇宙がだとかそういった大それたものではなくて、自分の周り。
知人友人親戚家族。
幼い俺はその得体の知れない違和感に若干恐怖を感じていた。
3歳の頃に両親が死んだ。
事故だった。幼い俺は泣き喚くとかそういうことはせずに、ただ静かに涙を流していた。
違和感はあったがその人たちは俺の生みの親のはずなのに、悲しかったけれど何故だかすぐに受け入れられた。
数日後、身元引受人が決まった。
母方の兄で、既に奥さんもいるが子供を身篭ることのできない身体らしい。
そこで俺を引き取ったということだった。
何故だかしっくりきた。
違和感を感じなかった。
叔父さんも叔母さんも俺が来たことに対してすごく喜んでくれた。
俺は笑うのが下手だからお世辞のような笑顔になっていたかもしれないけれど、すごく嬉しかった。
それからは与えられる幸せを享受していた。
叔母さんは料理が上手だった。
たまに教えてもらう料理が楽しみでしょうがなかった。
叔父さんは物知りだった。
いろんな知識を持っているし、分からないものは理解できるまで探求する好奇心旺盛な人だった。
大好きだった。
それは突然のことだった。
5歳の時、事故にあった。
公園を通り抜けしようとしたモーターバイクに跳ねられた。怪我はそれほど酷くなかったが、頭を軽く打ち意識を飛ばしたために病院に運ばれ、検査入院。
目を覚ますと叔父さんと叔母さんが泣きながら喜んでくれた。
分からなくなった。
俺が意識を飛ばした時に思い出したのは思い出などではなくて、
前世のことだった。
思い出した。
俺は...夏目貴志だ。
偶然だとは言えない。
このことを運命の悪戯というのだろう。
今世の名前も夏目貴志であったし、引き取ってくれた夫妻の姓は藤原だった。
違うといえば夫妻の名前で美希子さんと拓哉さんという。
俺の妖力も相変わらずのようだで、記憶と一緒に妖力も取り戻した。
前世のことを思い出してからは心に穴が空いたような気分になった。
それほど俺はあいつらに依存していたということなのだろうか...。
自分がどうやって、どういう経緯で死んだのかはいくら考えても思い出せなかった。
ただ、温かかったことを覚えている。
温かかったということは、きっと俺は幸せに死ねたのだろう。
(それにしても)
(空が青い)
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