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るふぃ。
2ABO:前編
「サボ、勉強教えてくれ!」


弟の言い出した突拍子もない頼みに、
おれは"センセイ"になった。


「ルフィ、それじゃ"2"だ。
"S"は逆。
おれの名前くらい覚えてくれよな。」
簡素な机にノートを広げて、筆記の練習。
先ずは、自分たちの名前からと、
ルフィとエース、
それにおれの名前をお手本に書いて、それを真似させていた。
ルフィが最初に覚えたのは"ACE"の3文字。
Cが特にいびつな形に歪むが、どうにか読める迄に書ける様になった。
次に文字数の少ないおれの名前を覚えようとしているらしいが、
"S"が書けなくてどうしても"2"になってしまう。
「ばぁーか!」
眺めているだけで退屈していたエースが、笑いながらルフィをからかう。
「笑うな!
こんにゃろ〜〜っ!!」
ああ、もう。
只でさえ集中力のないルフィ。
エースにちょっかいをかけられては、簡単にそっちに気が行ってしまう。
「エース!
邪魔するなら、食いもんでも獲ってきてくれよ。」
全く、弟の勉強の邪魔をする兄がどこにいるのか。
困った兄貴に食糧の調達を頼む。
暫くの間で良いから、ルフィから離れてて欲しかったからだ。
が。
ん!
と、指差された窓の外を見ると、立派なワニがゴロンと転がっていた。
「!」
そうだった、エースの無駄な頼もしさを計算し切れていなかった。
この場に居なかったほんの30分程度の間に、
おれたちの分を含めた3人分のやるべき事をたった1人でキッチリ片付けてしまっていたのだ。

「一緒にやるか?」
聞いてみる。
「サボがそんなに言うなら、仕方ねェな!」
待ってました、と、ばかりに乗り気なエース。
いや、そんなには言ってない。

勉強は嫌いだろうと、あえて誘わなかったのがそもそもの間違いだった様だ。
でも、おれ、エースに教えられる事ってあるのかな?
それとも、エースもルフィのセンセイをやりたいのか?
「よし、サボ、
教えろ!」
そんな事を考えていると、エースはルフィの机の隣に自分の机を並べて、
準備は出来た、とばかりに、ばんとノートを広げる。
生徒役希望らしい。
が、ものには言い様ってものがあるだろう。
あまりにエラそうな生徒に苦笑する。


「なんだ、
エースも勉強するのか?」
仲間が増えて嬉しそうなルフィに、
「ヒマだからな。」
付き合いだ、と答えるエース。
「なぁ、
折角2人になった事だし、競争したらどうだ?」
「競争?」
おれの提案に、
2人の声がハモる。
「ああ。
終わりにテストをして、勝った方に、おれの晩飯好きなの一品やるよ。」
負けず嫌いのルフィ。
ライバルがいた方が張り合いがあるだろうと提案した競い合い。
副賞はオマケみたいな物だ。
「よぉし!
負けねェぞ、エースっ!!」
「バカか。
おれがルフィに負ける訳ねェだろ!」
案の定エースに対向心を燃やすルフィに、
余裕で返すエース。

ルフィには悪いが、
3才のアドバンテージ迄あるんだから、
エースの勝ちは疑いようがなかった。


……ん、だけど。


「ルフィ、何度も言ったよな?
それじゃ"2"だ。"S"は逆。」

テスト採点時、
同じ間違いを繰り返すルフィに、ため息が出る。
「ししししっ、
また間違えた。」
失敗を笑い飛ばす前向きさは良いが、
失敗から学習もしてくれ。
「ばぁーか!」
「なんだと!」
進歩しないルフィに、
再びエースのからかいが入る。
人に笑われるのは嫌らしいルフィは喧嘩腰で返す。
じゃれ合ってる場合じゃないだろう。
「エース、ルフィのこと笑えないぞ!
"S"が多い。
"ASCE"じゃなくて、"ACE"だ。
自分の名前だろ?」
流石にコレは想定外だった。


「ルフィ32点。
エース35点。」
答案用紙を2人に返す。
ちなみに、満点は50点じゃない。
100点だ。
圧勝の筈が、ルフィと良い勝負とは……。
まあ、若干飲み込みが速い分、救いはあるけど、
………エース。
残念な採点結果に微妙に切なくなる。

「なっはっはっ!
バカだったんだな!
エースっ!!」
「うるせェ!
それでもおれの勝ちだっ!!」
自分と差程変わらないエースの答案用紙を笑うルフィ。
ああ、
余計なコトを。
おもいっきりガツンと拳骨を食らっているが、
自業自得。
フォローのしようがない。

こうして、
本日の勝者のエースにワニ肉の唐揚げを譲って、
一日が終わる。


2人のお勉強会。
まだまだ先は長そうだ。

続く。
(2010・8・15)

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あきゅろす。
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