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始まり。(2010年5月)



『始まり。』

拍手、有難う御座いますっ!!
今月のお礼文はロー×ルフィです♪

「なぁなぁ!
おまえ、ノースブルーの出身なのか?」
一見すっかり元気を取り戻した様にも見える麦わら屋がじゃれつく様に聞いてくる。
「ソレがどうした?」
「ん〜?」
隠す事でもないので、肯定を示すと、
おれの周りをゆっくりと周りながら、観察する様にしげしげと眺めてくる。
好奇心旺盛な野生の動物が寄って来ている様な仕草に嫌な感じがせず、放っておいたら、
おもむろに首筋を舐められた。
「?!
何しやがる!!麦わら屋っ!!」
麦わら屋のあまりに突拍子の無い行動に、思わず拳が飛ぶ。
本当に野生動物か!
だが、
ガツンと殴ったところで、
ゴムに打撃は訊かない様だ。
「ししししっ、
悪い、試してみたくなった。」
あっけらかんと謝られて、
怒るのが馬鹿馬鹿しくなった。
「試すって、何をだよ?」
「北の奴って、みんな肌がすべすべなのか気になったんだ。」
麦わら屋はどうやらあの金髪コックがお気に入りらしい。
そいつが"北の海"出身で、
同じ"北の海"出身のおれに興味を持ったと言う説明?(……の、つもりだろう。)迄は良かったが、
『サンジ』の飯が世界一旨い、とか、
ひねくれていてもすっごく優しいとか、
めちゃくちゃ美人だとか、
(こいつに美醜の感覚があったことに、僅かに驚く。
麦わら屋にとっては、あの海賊女帝屋よりも黒足屋の方が"美人"らしい。)
訊いてもいないのに次から次へと楽しそうに話してくる。
1日中どころか、三日三晩話し続けても終わらない勢いだ。
挙句に、
「あ、でも、取ったらダメだぞ!
いくら恩人でも、ぶっ飛ばすからな!!」
的外れな警告。
黒足屋に手を出せば一戦交える事も辞さないと、宣言されたところで、
興味がない。
向こうが言い寄って来るなら、話は別だが、
自分から…まして、麦わら屋を本気で敵にまわして迄手に入れたい相手では無い。
おれの興味はもっと別の…。

「じゃあ、黒足屋に手を出さなければ問題は無いんだな?」
「ああっ!」
おれの問いに含まれる裏などまるで気付こうともせずに、にかっと笑って元気一杯に答える。
コレじゃ只のガキじゃねぇか。
本当に兄貴救出の為、あの頂上決戦で暴れたヤツと同一人物か?
疑問が頭を過る。
が、どうでもいい。
おれは、全くの無警戒の麦わら屋に口付けをした。
簡単だった。
「何すんだ!」
麦わら屋の抗議。
「麦わら屋と同じだ。
東の奴の味見をしたくなった。」
「そうか。」
わざと平然と返すと、
あっさりと納得。
しししししっ、
と、能天気に笑っている。
あまりのアホさ加減にほのぼのとした好感を持っていたのに、
「けど、もうダメだぞ!
おれにキスして良いのは、サンジだけだからな!!」
余計な事を言いやがった。
イラっときた。

苛立ちの正体など、
考えるまでもない。

……欲しい、と、思う。
……まして、こんなチャンスは2度とは来ない。
こいつ1人、しかも万全では無い。
海峡屋や海賊女帝屋は気に掛かるが、
あえて言いふらす事は無いだろう。
千載一遇のチャンスが転がっている。
奪うなら、今。
不穏な視線を送っていると、
真っ直ぐな強い視線を返された。
おれの考えている事など、見透かす様に。
絶対的に不利な立場にありながら、僅かにも揺らぐ事の無い視線。

……つまらねぇな。

こいつを手に入れるのは、
今、じゃねえ。

煌くお宝を前に、
毒気が抜かれた。
滅多にない極上のお宝。
どうせなら、最高の状態で奪うべきだ。
入手の困難さえも付加価値となるそれは、
簡単に手に入っては実につまらない。

「あ〜、ハラ減った〜っ。」
言葉に違わず盛大な腹の虫の音。
おれの気が削がれたのが解ったのか、
麦わら屋は何事もなかったかのように、またいつもの能天気さに戻っている。
そして、思い付いたアイディアに笑った。
「あ、そぉだ!
今度、おまえらにもサンジの飯、喰わせてやるからなっ!!」
その言い方から、コレがこいつにとって最高のもてなしなんだろうと伝わる。
……面白えヤツだ。

こいつを助けたのは、
単純な好奇心と、
赤髪屋への思いだった。
だが、
それとは別に、
麦わら屋への興味も湧いてきたようだ。

覚悟しておけ、麦わら屋。
新世界では、遠慮はしねえ。
てめえは、いずれおれが手に入れる。

終わる。
(2010・5・17)


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あきゅろす。
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