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やどりぎ。(2010年12月)
拍手、有り難う御座います!
今月のお礼文はD3です♪
(と言うか、ルサン+A→3。エースの扱いが酷いのでご注意下さいませ。)

『やどりぎ。』


キスを  まってた。



所為で、油断した。

ちゅっ。

と、頬に触れる感触。
一瞬びっくり。
至近距離には、にしゃ、っと笑うルフィの兄貴のソバカス顔。
直ぐに、何がおきたかを理解する。
「何しやがる!バカ兄貴っ!!」
その鍛え上げられた腹筋に渾身の力で蹴りをくれてやるも、相手は人間ヒトダマ。
故に物理攻撃ではノーダメージ。
ええい、忌々しい!
「サンジ、知らないの?
Xmasにヤドリギの下にいる可愛いコちゃんにはキスしても構わないって。」
そんなコトも知らないのかと、さも意外そうに言ってくるが、
おれが誰を待ってるか分かってて言っていやがるからタチが悪い。

誰が可愛いコちゃんだ!
ツッコミたい気持ちよりも、キスをされたコトに対するムカつきが大きくて、思いっきり睨み付けてもどこ吹く風。
全く気に止める事すらなく、
ちゅ〜〜っ、と、
今度はおでこに2度目のキス。
プチっ。
ルフィ兄に対して怒りの沸点の低いおれは、簡単に堪忍袋の緒が切れた。



「わ〜〜〜っ!!
サンジ、サンジっ!!
ストップ!ストップ!ストぉ〜ップっ!!」
「なんだ?遺言なら10文字以内で遺せ。」
「カナヅチっ!
おれ、カナヅチなんだって!!」
「よし、分かった。"カナヅチ"だな。
安心しろ、しっかりルフィに伝えといてやる。」
荷造り用のロープでぐるぐる巻にして、船から投棄するべく担ぎ上げる。
海に嫌われた能力者。
縛らなくても沈むが、そこは気分の問題だ。
「違っがぁ〜〜〜うっ!!」

「サンジ!
エースは泳げないんだぞ!
海に投げたらダメだっ!!」

同情の余地なし!と、喚く兄貴を海へ放り込もうとしたその時、ルフィの制止が入った。
「「ルフィ!」」
全く反対の意味を込めて呼んだ名前が見事にハモる。
兄貴にしてみれば救世主、
おれにしてみれば邪魔者のご登場だ。
「サンジ!」
それでも兄を担ぎ上げたままのおれに対して、ルフィは咎める様にもう一度名前を呼ぶ。
「…………。」
兄貴を庇うルフィに言いたいコトはあるのに、言葉に出来ない。

無言の攻防。

(……ちっ!)
折れないルフィに、結局引くのはおれだ。
小さく舌打ちして、
エースをルフィに投げ返すと、自分よりも体格の良い兄を難なくキャッチする。
望みが叶ってにっと笑うルフィがますます気に食わなくて、
その横を視線を合わさず通り過ぎるとキッチンへ引き篭もる。



ルフィが悪いわけじゃない。
解ってる。

……でも!

あほルフィっ!!

少しはエースに対して怒りやがれっ!!

怒りの矛先を変えて、理不尽な八つ当たりを心の中で盛大に唱えると、
エースにキスされた頬と額をハンカチで拭う。

(……バチが当たったか。)
ルフィが知らないのを良い事に、呪いをかけようとした罰。

ヤドリギの下での口付け。
エースの言っていた風習も…と言っても、レディ限定で…確かにあるが、続きがあった。
それは恋人同士の場合。
勿論、ルフィがそんなコトを知ってるなんて思えないが、
だからこそ、いつもの調子で"キスさせろ!"と言ってくればOKしてやるつもりだった。

Xmasの魔法。

ささやかな期待と願い。

……はぁ。

アホは、おれだ。

自己嫌悪。
油断が、エースにキスされる隙を作ってしまった。
ゴシゴシ。
ゴシゴシゴシゴシ。
もう一度ハンカチで頬と額を拭う。
ソレで、キスをされた事実が消えるわけじゃないのに……。



「サンジっ!!」
そんな事を考えていると、
今、1番聴きたくて、
けれど、同じ位に聴きたくない声で呼ばれる。
一応はルフィに対しても怒っていたんだ。
このまま無視をするって手もありだ。
……けど。
「サンジ〜〜っ!!」
「なんだよ?」
もう一度呼ばれて振り返る。
こんな日に喧嘩した(と言っても一方的におれが怒ってるだけなんだが)ままじゃ勿体ない。

その瞬間。

ちゅっ。

唇に触れる感触。
目の前には、屈託ないルフィの笑顔。
「なっ!!///……にしやがる!あほルフィ〜〜〜っ!!」
条件反射の蹴りがクリーンヒット。
壁にぶつかって跳ね返るが、こちらもゴム人間。
やっぱりノーダメージだ。
兄弟揃って厄介な!
「いきなり蹴るなよ、びっくりするだろ!」
「だったら、蹴られる様な事をするな!」
突然ヒトの唇を奪うヤツに文句を言われる筋合いはない!
「してねェ!
エース、言ってたじゃねェか!
ヤドリギの下に居るヤツにはキスして良いって!!」
やっぱり目撃していたのか、アレを。
その上で兄貴の言ったコトだから間違ってない、と主張するルフィだが、
(その兄がどういう目にあったか迄には考えが及ばないらしい。)
それってあんまりなんじゃねぇのか?
そんな理由でキスされても嬉しくねェし、
おれがエースにキスされても本当に何とも思ってなかったのか、と虚しくなる。
そしてなにより"エースが言ってたから"という理由で、"無断でキスをしない"って暗黙のルールが蔑ろにされたのが悲しかった。

「…………出てけ。」
「サンジ?」
「キスして用は済んだんだろ、だったら出ていけ!」
訳の判らない感情に任せて声を荒げてしまう。

視線がぶつかり合う。

「いやだ、出ていかねェ。」
酷く穏やかなルフィの声。
そして、ゆっくりとおれに近付いて、抱き締めた。
「放せ!あほゴムっ!!」
予想外の行動にもがいて怒鳴ると、抱き締める腕に更にギュッと力が篭る。
「出てったら、サンジ落ち込むだろ。
だから出ていかねェ。」
「なんで落ち込まなきゃなんねェんだっ!」

その大人びた態度が気に入らなくて、そのまま思い付く限りの文句を言い続ける。
声に出して不満をぶつける間中、入れ替わりに流れ込んでくるルフィの温かな温度。

「気は済んだか?」
全部言い尽くした時、にっと笑うルフィと目が合った。
完全に毒気が抜かれた。
ってか、なんであれだけ言いたい放題言われたのに笑ってられるんだよ?
「…………。」
無言を肯定に取ったルフィがおれの頬に唇を寄せる。
その次は額。
丁度エースにキスされた場所だ。
「……なにすんだよ。」
「んんっ、なんとなくだ!」
なんとなく、と言い切るルフィに本当に理由なんてないんだろう。
それでも、たまらなく嬉しくなってしまう。
「あほルフィ。」
ギュッと抱き締め返すと、しししっ、と笑う気配があった。
(敵わねェな、てめェには。)
けれど、負けた感じが心地良い。
もっともっと体温を感じたくて、ギュ〜〜ッと腕に力を込めた。
ルフィの指が髪を梳き、頬を撫ぜ、唇でとまる。

「サンジ、キスさせろ!」

お決まりの文句。
その言葉を、待っていた。

「しゃあねぇな。」
(呪われてしまえ。)
おれは心の中でそっと唱えてから目を瞑った。







"永久の幸福"

Xmasにヤドリギの下でキスをした恋人達限定の呪い。


悪いな、ルフィ。
どんなに罰当たりでも、
てめェにかけたかったんだ。





終わる。
(2010・12・31)

って!!あと数時間でエース誕だってのに、これって……。

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あきゅろす。
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