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危険人物。(2010年6月)

拍手、有り難う御座いますっ!!
今月のお礼文はA3です♪

『危険人物。』

「サンジ、食べさせて?」

おれは、自覚出来る程に人の好き嫌いが激しいが(勿論レディは無条件に全員愛している!!)、
それとは全く別次元で、
"苦手な人種"が居る。

こいつで2人目。

翌日の仕込み中、
いきなり背後から抱き竦められて、耳元で囁かれる。
吐息のくすぐったさに、鳥肌。
気配が、なかった訳じゃない。
こいつが入って来た事を思い返せる。
けれど、こいつが入って来た時は、意識出来なかった。
この感覚的なコトを説明するなら、多分、空気があるとかないとかに、近い。
「な?サンジ、お願い?」
「………ッ?!////」
あまりの出来事に反応出来ずにいると、甘える様な口調で重ね、今度は項を舐められた。
一瞬で全身の神経が騒めく。
「ふっざけんな!!
なんでおれがそんなコトっ!!」
それでも、どうにか気を取り直して不埒者を振り解くと、その腹に渾身の蹴りをくれてやる。
が、
「そんなコトって、どんなコト?」
にっこり。
先程の妖し気な雰囲気とはうって変わって、人懐こい笑顔を向けられてしまう。
……まぁ、ロギアに物理攻撃が効かないのは仕方ないとしても、この笑顔。
間違いなく、ウチの船長の兄貴だよ。
厄介なトコばかりそっくりだ。
「おれは、腹が空いたから、
コックのサンジにごはん食べさせて貰おうと思ったんだけど。
……もしかして、キタイ、させちゃった?」
「なっ!!////」
に〜っこり。
更に愉しそうに笑う。
この笑顔に、うっかり騙されてしまうレディも多いだろう。
「してねぇよ!!
ヒトをおちょくんのも、大概にしろ!
このバカ兄貴っ!!
セクハラで海軍突き出すぞっ!!」
「おれはいつでも真面目。
……でも、良いよ?
サンジがそうしたいなら。」
さらりと言ってのける。
おれの怒りなんぞ、柳に風。
自分の本心は欠片も見せないくせに、
ヒトの心を引っ掻き回すのは、あの男と同じ。
「ふざけんなっ!!」
苛立ちが余計に声を荒げさせる。
「本気、見たい?」
「!」
人懐こい表情はそのままなのに、鋭い威圧感。
ゾクッと、背筋に冷たいものが走る。
しまった。
虎の尾を踏んでしまった様だ。
緊張感が辺りを包む。
相手の眼を見返してはいるものの、
呑まれない様にするのが、やっとだった。


ほんの僅かな時間が、
酷く長く感じられた。
「……なんてな。
サンジはルフィの大本命だからなぁ。
弟泣かす訳にはいかないし。」
芝居掛かった仕草で肩を竦め、
さも残念そうに盛大に溜め息。
ルフィの兄貴が張り詰めた空気を壊した。
じゃなきゃ、とっくに掻っ攫ってるよ。
などと、物騒な言葉を言外に続けるも、
いつもの、人当たりのいい雰囲気に威圧感はない。
「言っとくが、ルフィと付き合ってる訳じゃねえ。」
必要がない事かもしれないが、
都合の良い勘違いを放置するのはフェアじゃ無い気がした。
なにより、ルフィの気持ちを自己防衛に利用したくはない。
「知ってる。
ついでに、サンジが誰を好きか、ってコトもな。」
ちっ!それもかよ。
ほんの暫く行動を共にしただけで、この船の人間関係を正確に把握してたのかと思わず感心してしまう。
あえて隠す必要のある事なんてないが、思う以上にこの船の事は知られていると思った方が良さそうだ。
日常的に物事を見ようとしているのか、心配性の兄貴のなせる技か。
「だから、
兄貴は弟の応援vV
いいよ〜!ウチの弟はっvV
可愛いのなんの!!
なんと言っても、
何しでかしてくれるか解らないんだvV
退屈なんてする暇がないのは、おれが保証するよ?」
続く言葉に、違うとわかっていても、後者の気がしてしまう。
ついでに、保証されなくても、この船の連中はそんなこと、全員身に染みて知っている。
その後も、ルフィ売り込みトークという名のノロケ話が永遠と続く。
話の内容は兎も角、
弟思いのいい兄貴だ。
ルフィの話をする時の暖かな声のトーンから、
弟を心から大切にしている事が染み染みと伝わって来て、
聴いていてとても心地が良かった。
しかも、それでいて、ヒトの気持ちに強制はしてこない辺り、
ほんのりと、好感を持ってしまう。
やはり、兄弟、か。
こういうトコも、ルフィに似ている。

「けどな、サンジ。」
ルフィ自慢をしていた兄貴が、
不意に話を変える。
「サンジがおれを好きになってくれるなら、
そん時は、ルフィとだって、
思いっきりケンカしてやるよ。」
イタズラっぽく、笑った。
ルフィの兄貴ではなく、
エースの笑顔。
初めて見た気がした。
不覚にもおれは、
そのギャップと、
エースの最大級の告白に、
ドキッと、してしまう。
「安心しろ!
兄弟喧嘩が必要になる日なんて、
一生こねぇからっ!!」
精一杯の強がりで、
きっぱり跳ね除ける。
こいつ等だけは、
好きになってはいけない。
本能の、警告。
「いいよ、それでも。」
おれの気持ちを知ってか知らずか、
キッと、睨み付けるおれに構うことなく、
本音の見えない顔で笑った。
そして、
当初の目的に、戻る。

「だから、サンジ。
今は、美味しいご飯を、
食べさせて?」


普段は本心を隠しているクセに、
時折見せるほんの一欠片の真実で、
ヒトをどうしようもない程に翻弄する。

全くもって、
厄介な人種だ。

益々、
ルフィの兄貴が、
"苦手"になった。

終わる。
(2010・6・2)

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