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小説
吉良ヒロトと基山ヒロト



※話が支離滅裂で何がいいたいか分からない内容になってます。





父さんの本当の息子吉良ヒロト。
今では彼の代わりが俺だ。名前は基山ヒロト。

まだお日さま園に来る前のこと。
うっすらとした記憶でしかないけど、俺には家族がいた。
母さんは毎日家に居て父さんはたまに家に帰ってくる。
母さんは父さんのことが嫌い。
よく俺に愚痴をこぼしていたし、母さんの友人にも言っていた。


「母さんと父さん、どっちが好き?」


どうして母さんはこんな質問するんだろう。
俺はどちらが好きという質問は苦手だ。
どちらかとればどちらか悲しませてしまうから。
母さんの顔を見ると好きって言えと書いてある。
子供ながら理解できた。
俺は母さんが好きと言うと、険しい顔を綻ばせにっこり母さんは笑う。


父さんが久しぶりに家に帰ると母さんはいつも不機嫌だ。
何で今ごろ帰ってくるの。
たまに帰ってくるくせに家で偉そうに脚を組んで腹が立つ。
母さんが俺に耳にあてて呟く。
何故か母さんが嫌な思いをしたら俺まで嫌な思いになる。
家の空気がずっしりと重くなった。
母さんが機嫌悪くなるから俺も父さんは家に帰ってきてほしくはない。
母さんが父さんをいらない者扱いをしてる態度顔をしているのにも関わらず、父さんは愉快にテレビを観ながら笑ってビールを飲んでいる。
父さんが母さんの怒りに鈍感なのは、母さんが父さんのこと嫌いなことを俺が知っているから母さんの込み上げる怒りを肌にぴりぴり感じることができたのかも。
しかし母さんは父さんに愛想笑いもしてない。
逆にゴキブリに殺意を向ける目をしている。

父さんが俺にプレゼントとケーキを買ってきてくれて俺はジャンプして喜んで早く食べようと母さんに頼む。
後で食べますと母さんは俺が抱えてるケーキの箱を取り上げられ冷蔵庫にしまわれた。
父さんが家から出た後で母さんは冷蔵庫にしまってあるケーキを全部ごみ箱に捨てたのを見た時はショックだった。
せっかく父さんが俺にと買ってきてくれたのに。
目がじわりと滲んで目頭が熱くなる。
母さんは俺を見て
父さんと母さんどちらが好き?とまた言われた。
俺は母さんが好きと言うといつもより機嫌よく笑う。

ケーキよりも、お前が欲しがっていたおもちゃ買ってきてあげるからと頭を撫でられた。



そんな母さんだった。
父さんのことになると邪険に扱う。
俺が高熱を出しても父さんは余所の女の人と遊んでいたのだ。
実際に母さんと俺のことはどうでもよくて父さんは浮気を繰り返し、たまに家に帰ってきては俺にプレゼント渡してご機嫌とるのが母さんは気にくわなかった。


母さんは俺を児童施設お日さま園に預けられた。
捨てられたと涙を流した日も恨んだ日もあった。
このやるせない思いが大人になるにつれ母さん父さんを恨むのもバカらしくなる。
施設に預けた親も俺が小さい頃におしめを替えてくれたのだから恨むことができない。
いや、血が繋がっているから憎くも愛しいのだろうか。
学校に行けば家族の話なんて恥ずかしいからしなくなった。女子でもあるまいし。


お日さま園に暮らして今にあたる父さんに名前をくれた。
昔母さんに言われた名前を忘れてしまいヒロトの前は一体どう呼ばれたか見当もつかない。
本当の名前を忘れるだなんて、自分の人生が可笑しくて笑ってしまう。




日中、自分の人生を反芻するのが多くなった。

前の家族と今の家族。

気づいたら俺は生まれていた。
そして気づいたら朝がきてアラームの音で目が覚める。
気づいたら毎日がきて気づいたら知らないうちに死んでいると思う。
あと十数年の命。
この肉体にお世話になる日も一時一時さよならを告げている。
時間によって削られる命の痛みに未だになれない。


友達にどうして死ぬと思うと聞いてみた。

分からないと手を振られ、どっか行かれた。

たしかに、俺もどうして死ぬのか分からない。
死ぬ理由がなければ永遠に生きてもいいのに。


「次に生まれる人の邪魔になるからだよ。」


今の声誰だろう。
声変わりしていない男児の声だった。
俯いて考え事をするのをやめて俺は声の主に導かれる方に顔を上げる。
そこには俺に似た顔と同じ髪をした小学五年か六年ぐらいの男児が俺の目の前に立っていた。
俺は寝ぼけているのかな。
目を擦って彼を見る。


「こんにちは。俺は吉良ヒロト。簡単に言えば本当のヒロトだ。」


そう抑揚なく彼は答えた。


「俺は基山ヒロト。ヒロトくんは人間なのかい?」

「ううん、幽霊なもんだよ。どうやら君しか俺を見ることができない。」


「ふーん。」


吉良ヒロトと名乗る男児はくすりと笑った。


「はは、君俺のこと信じてるの?怖くない?
音を立てずに君の目の前に立って幽霊だと言ってさ。
君を呪いに来たのかもよ。」


「存在してるものを怖がるのは失礼だよ。」


ほほうと目を丸くさせ彼は頷いた。
俺の予想外の返事に驚いている様子だ。
ちらりと時計を見ればまだ朝の七時。
なんて運がいいのだろう。
今日は学校は休みだ。
休みの日は昼まで寝るのだが偶然に休日にアラームを切るの忘れてしまい、そのアラームで起きてしまった。
彼に話したいことが山ほどある。


「所で君は何しに俺の前に現れたんだい?」


彼は自分の顎を触る。
うーんと唸り、そして意を決して俺の顔を怪しげに近づいた。


「本当、お前は俺に似てるなあ。まあ、顔色や目は流石に似てないけどな。」


彼は俺を物珍しいそうに目をじろじろと顔を凝視する。
彼のエメラルドの瞳に俺が写っている。
ほっぺを揉まれたり、でこに手をあてられたり唇をなぞられた時はくすぐったくてビクッと肩が震えてしまい彼は見逃さなかった。


「はは、唇に何か感じたのか?」


「じゃ、君の唇を触ったら今と同じこと言えるかな?」


やってみろよと挑発するような目付きと、やけに顔が彼はのぼせている。
差し出す顔に俺は人指し指でゆっくりと上唇から優しく撫でるようになぞってあげる。
幽霊なのに、ふにっと沈み込む感触と生暖かさ、正真正銘の唇だ。
俺は一番神経が敏感なのは唇だと思う。
冷たいもの熱いものを素早く感じるのは唇だからだ。
口に入れるための安全上敏感なのだろうと解釈をする。
次に下唇をなぞる。すると彼はくすぐったそうに目をぎゅっと瞑り息は音立てて吐き出される。


「ほら君も感じてるじゃないか。」


にたりと口角をつりあげる彼は唇をなぞり続ける俺の人差し指をぱくりと口の中に入れた。
人差し指を引こうとすると抜けぬよう噛まれる恐れがあるから何もしないで人差し指を俺は人質にした。
口の中で人差し指が舌でぺろりと優しく這われる。
彼の顔を見るとしてやったりと言いたげな顔をしていた。
いたずらっ子め。
憎めないあどけなさをしているから可愛いらしい笑顔だ。
癒される。


「離してくれないかな。指をくわると出っ歯になるよ。」


俺の言う通り彼はそろーりと口を開ける。
俺の人差し指が彼の唾液にべっとりと付き、みょーんと伸びた。
多分、晴矢や風介に彼と同じようなことをしたら軽蔑をしていたかもしれない。
俺より歳が幼いというものは許容範囲が広くなると我ながら甘いなと首を傾げた。


「俺負けず嫌いだもん。
今のギブしたからヒロトの負けな。」


「勝ち負けの問題じゃないよ。」


「え、怒ってる?」


にたりと口角をつりあげ笑っていた彼が、口を唖然と開かせる。
彼が発する不安の空気が漂よい俺の肌に伝わった。

“勝ち負けの問題じゃない”

との言い方が怒ったように聞こえたのかな。
いたずら好きな彼だと思っていたけど、意外と相手の怒りに敏感で可愛く見えて本当憎めない。


「いや怒ってないよヒロトくん。言葉きつかったね、ごめんよ。」


できるだけ柔らかい口調で彼に言った。

外から見たら俺たちの姿は滑稽に見えるだろう。
容姿の似た双子の兄弟みたいで
たった今小さないざこざが生じ、世界で最もくだらない出来事が起こった。



「そうだな、死ぬのは邪魔になったからだ。」


先程の話を思い出して彼は言う。

俺は突然の会話の変化に頭が一時停止になり、はっと脳が動いた。


「期限が切れたら死んでしまう。若がろうと、それが俺。
車に轢かれて死んだんだ。
肉体は電気みたいなもんで終わりがある。
けど魂は死なないから電気が切れた肉体から離れまた違う新しい肉体に入り込む。
で、新しい肉体に入り込む前の姿が今の俺。
その前に俺の代わりに暮らしてるヒロトに会いたくてな。」


「どうだった?会ってみて。」


「姿が似てるだけで感情は違う。
お前は天然だな。」


俺は天然の言葉に首を傾げた。
自分で言ってみてあれだが天然だと自覚すらない。
すると彼はいたずらを企てる顔でにやりと口角をあげ、俺の口に彼の口と合わさった。
唇同士で押せば奥にある前歯が彼の前歯にカチリとあたる。
ん、と息が漏れた。
頭が真っ白に塗りつぶされ、俺だけ時間が止まったみたいで金縛り合った感覚と似ていた。
筋肉がビリビリして動かない。
金縛り起こせれるなんて流石は幽霊と感心する自分がバカに見えた。

金縛りが解け時間が流れだした途端キスをしてきた彼は居なくなった。
時計を見れば彼と会う前の七時前。




end










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あきゅろす。
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