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小説
<ヒロト、守>笑顔の裏
 




守はとても優しい人だ。



俺は自分のことを話すのは得意じゃない。
嫌なことでも嫌とも言わずに笑顔で誤魔化す。
駄目なんだよね。
ちゃんと嫌なことは嫌だと伝えなくちゃいけない。

友達と遊んでいて、お前はこっちに来るな、他の所に行ってろと言われた。
俺は傷ついてるのに、分かったと笑って友達の輪から離れる。
その友達は俺の去る姿を見てニヤニヤしてると顔を確めなくても分かっていた。

友達というのは相手が怒らない程度土足で足を踏み入れて平気で傷つけるのが友達。
怒りのボーダーラインを越えない接し方を知っている。


俺も悪いんだ。
俺は何も言わないからいけない。
友達は俺のこと何も知らない。
何が好きか、何が嫌いか、何で傷つくか、何で悲しむかその友達は知らない。


ケータイを見たら三十件ぐらい電話の着信が入ってあって怖くてケータイを落とした。
これはバイトの店長から。
今日バイトを入って欲しいくて電話を何度もしたらしい。
それにしても三十件なんて異常だ。
五件でも掛けすぎだと思うのに心底呆れる。
電話を立て続け掛けても何とも思わない無神経な人間だと思っているのだろうか。
店長も友達と一緒の人間。
怒らなければズカスガ入る人間だ。

バイト仲間に話すと、店長からの電話なんて二件しか来ないだってさ。



泣きたい。
自分という人間に。
傷つくことをされても笑顔で返す自分が嫌い。
君らもされたら傷つくくせにどうして人に傷つくことが出来るんだろうか。
態度に出さなければ怒らなければ何をしてもいいと思っている。

彼らは、人にされて嫌なことは人にするなという戒めより
怒らない相手は傷つけても構わない対応している。

可笑しい、こんな人たちがごまんと居るだなんて。

だがこれが大半の人間がそうだ。

小学生の友達も
中学生の友達も平気で俺を傷つけた。
顔色気持ち悪い逃げろー!!
何度言われてきたことか。


そんな時俺はある人と出会った。
名前は円堂守。
高校一年の時たまたま同じクラスメイトだった子。
まだクラスに馴染めず昼食の時間を一人でご飯を食べていたら守が一緒に食べようと声を掛けてくれた。
そこから守と友達になった。
守は俺と出会った友達と違いとても俺を大事にしてくれた。

たとえば、この前のこと。
いつもニコニコして感情のない人間基山と陰口言われていたみたいだ。
みたいだと言うのは俺は知らなくて守がこの陰口を耳に挟んのだ。


「あんな奴らヒロトのこと何も分かっていない!!
ヒロトがいつも笑顔なのは相手との関係を大事にしたいからなのに…。
くそぉ、文句言いに行くぞヒロト。」


「まっ守…。」


「何だ?」


「俺のことそう思ってくれていたのかい?」


守が笑顔の裏を読んでくれていたなんて知らなかった。
笑顔で感情のないやつだから傷つけても構わないじゃなくて、守は俺の笑顔の理由を探していたんだ。
実際どうして何をされても笑顔で答えるのか自分でも分からなかった。
うん、守の言う通り相手を大事にしたい。だから俺は笑顔なんだ。


「文句言いに行かなくていいよ守。」


「嫌だと言わなかったら言われ続けるぞ。



困った顔をする守。
もういいんだよ。
俺のこと皆に無理して俺を分かって欲しくない。
俺をからかう人間なんて理解なんかできっこない。
何より俺に陰口言われて代わりに怒ってくれただけで十分なんだ。






end








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あきゅろす。
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