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小説
<風介>愛からようこそ




ある夏休み。私がまだ小学2年生の頃である。



私は父と二人暮らしである。
父という存在は絶対的な支配者なのだ。
学校を下校し家に着くと不安になる。
家というのは心を落ち着つかせる唯一のよりどころのはず。
父が居なければ不安になる必要はない。

玄関を開ければ、テレビの声が聞こえた。
父はタバコを吐きながらゲラゲラ笑う。
私は父の笑い声が嫌いだ。こっちは父の機嫌を伺うのに必死なのに父はそんな不安も一切ない。
自分の部屋に行きたいが父のいるダイニングを通り過ぎなければ私の部屋にはたどり着けない。
RPGのゲームのようだ。
道ふさがれてモンスターが陣とっているのだ。そのモンスターというものが父だ。
私は足音立てずに父の後ろを通り過ぎる。幸い何も声をかけれなくて安堵する。
が、安心した束の間、父が手を口にあてずゴホゴホと咳をし菌をばらまく。そして父の視線が私に向けられる。
私は猫に睨まれたネズミだ。
息が上がる。


「お前夢あるか?」


ちょうどテレビが夢を語る内容だったのだろう。
父が私に夢を聞いてきた。
父は決して私の話なんか聞かない。
私が夢一つ語れば無理の一点張りで私を責め立てる。
人の気持ちも分からないお前が夢を語るな。
最低なお前は一生ニートだと家を追い出されるのが落ちなのだ。
だから私は黙った。
ちなみに夢がないと答えれば夢のない人間はいきる価値がねぇ死んじまえってこれも私を家に追い出す。


「おい、言えよ!!学校何しに行かしてやってんだよ!!!!」


何を答えても父は私を人間否定する。
答える余地がない。


「あとお前な成績いいからって調子のるなよ。成績よくても仕事が出来ない人間なんか山ほどいるからな。特にお前だよクズが!!!」


「……。」


「言えよ!!口がないのか?!!!!!」


父が立ち上がる。怖い怖い私を痛めつける!!!
私は震えた声で何度もごめんなさいごめんなさいと父に言う。
私の声など無視をして父は私の襟をつかんで不意に息を詰まらせた。
襟をつかんだまま私を引っ張り風呂場につれこまれる。
そして湯船になみなみに入っているお湯を父が私の髪を引っ張り顔を勢いよく突っ込めさせた。
水中で鼻孔に水が入り鼻がつうんと痛くなる。私は助かりたくて手足をばたつかせて体を起こそうとするが無駄な抵抗だ。
すると父が一旦私に空気を吸わせるため水中から引き上げ、私は命一杯空気を吸い込んだ。
鼻水が垂れてみっともなくても生きるために気にしてる暇などない。
上手く息が出来なく咳を立てる。父が咳をするなら口を手にあてろって腰を蹴りあげられた。
骨が折られたように痛くて立ち上がることさえ困難だ。
また私を湯船に私を顔だけ沈める。
沈めて上げて沈めてを繰り返されて、先ほど苦しかったのにだんだん和らいでくるのが分かる。
苦しみを越えると、脳が苦しみを緩和させドーパミングを放出し、わずかな快楽を得る。
簡単に言えば死と隣り合わせの状態。
意識がうっすらなくなって水が弾く音も、父が怒鳴る声も遠くに聞こえる。
私が死にかけを気づき父が無理矢理私を水面から顔をあげ床に倒れる私を背中を蹴りはじめる。
ううっと私が唸れば父が声を張り上げた。
俺を無視するからだ!!お前が悪いんだよそうさせたお前が!!!!!




父は本当は優しい人なのだ。
誕生日プレゼントは一緒にハワイに行って海で父と遊んだ。
晩御飯は豪勢で沢山の食事が大きなテーブルに並んで真ん中には風介LOVEと書かれたホールのケーキが置かれている。
こんな不器用なお父さんについて来てくれてありがとうと涙流して私の頬にキスをする。
父は感じていたのだ。普段の私の接し方について。
父は不器用なだけなのだ。
だから私は父を許してあげる。

寝る前に裸にさせられ、父に抱かれた。
父が言う。
人を好きになると体ごと欲しくなるんだって。
だから私は父に抱かれるまま身をあずけた。
好きだよと私に連呼しながらキスをされたり下をいじられたりされた。
実はいうと怖かった。
何故裸になるのか、どいうものが気持ちいのか分からなかった。体が熱くなって私の性器から白濁が出た時も怖かった。
裸にならなくても私は言葉だけで十分だった。
何もわからず私は下になって父に手解きされる。
大人の愛の仕方に私はまだ早過ぎた。






冒頭に戻そう。
夏休みを向かえても私は学校に来ていた。
学校には放課後に児童を預ける児童園があり私はよく利用している。
夏休みに入り私は児童園に行き誰いもない教室を晴矢と探検するのが好きだった。

でも今日は違う。
晴矢に激怒している。
晴矢をトイレの手洗い場の洗面器に顔を突っ込ませながら空いてる手で水道口をひねり水を勢いよく流した。
だんだん水域があがり、洗面器から水が溢れ晴矢が腕を乱暴に暴れだす。父にいつもされるように、晴矢の耳をじりじりと噛み痛みに逆らえず晴矢の腕がびくりとも動かなくる。
ぶくぶくと水面の泡沫が聞こえなくなったのでそろそろ水中から顔をあげてやる。
晴矢が噎せて息が出来ずに咳をする。
だから私は晴矢の腰に蹴った。咳をするときは手口に当てなって。
また晴矢を水中に沈めては空中に空気を吸わせて沈める。
晴矢と遊ぶ約束をしていたのに私を無視して違う子と遊んでいたからこうなるのだ。
君が悪い。最低な人間だ。


そろそろ晴矢が意識がなくなる頃に晴矢を水中からあげ背中を蹴る。
起きろ。


「風介!!!」


振り向いたら後ろにヒロトがいた。
ぐったりした晴矢を見て最後に私に目を向けられた。
ヒロトが何故焦っているのかわからない。
駄目な私に父が叱るの晴矢に再現しただけなのだ。
私は正しい。


「トイレから水が溢れてる音がすると駆けつけたら…。晴矢が死んだらどうするんだい風介!!!」


地面に転がっている晴矢は昼ごはんに食べた魚や野菜が消化されずに口元から流れている。
胃液臭い。


「死なない。それぐらい加減できるさ。」


「死ななかったらいいなんて許されない!!」


「どうして怒る。」


「風介本当に言ってるの?苦しませて胸が痛いなんてないの?」


悪びれない私にヒロトの目元が引きついている。
私を怖がってるのかい?
晴矢がゆらりと上半身をを起こす。
そして、うっうっと声を引きついて大きな声で泣き出した。
泣いている晴矢をヒロトが背中を優しく叩いている。
晴矢が風介が怖い怖いと嗚咽混じりながら言う。
怖がらないように晴矢に頭を撫でてやると、触るなと手をはね除けられた。
胸が痛い。私は嫌だと伝えただけだ。
君が怒るのはお門違いじゃないのかい。


「君が悪い。私の約束を無視しただろう。なのに君が逆切れして。
もう一度やられたいかい?」


晴矢がひっと悲鳴をあげ、かかさずヒロトが怒声をあげた。


「いい加減にしなよ風介!!」


「私は父さんにされたことを晴矢にしてるだけだ!!何も間違ってなどない!!
君らも怒られるとき沈められたり殴ったりされるだろう?!」



空気が変わった。

ヒロトが目を充血させて目を潤ませる。
何故か私まで泣きそうになって、ひっ、ひっと、しゃっくりをあげた。
怖がっていた晴矢が私の頭を撫でる。


父から受けていた愛がただ私を嫌っていただけと気づいた小学2年の不思議な夏休みのできごとである。





end











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