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マイ・スイート・ホーム
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授業が終わり、部活へ行こうとする俺の足を止める声がした。
廊下の途中で俺に声を掛けたのは、見たことも話したこともない女子じゃった。

一緒にいた丸井は先に行かせ、俺はその女子に向き合う。

「なんか用か?」
「あ、あの…」

自惚れとる訳でもないが、こんな態度じゃあ聞かんでも用件は分かる。

「あたし、仁王君のことが好きです…付き合って、ください…」

あぁ、やっぱりな。まあまあ可愛い子だとは思うし、中学の時なら暇つぶしに付き合ってみてもいいか、と思ったかもしれんが。

「悪いが、話したこともないやつとはいきなり付き合えん」
「……っ」
「すまんのう」

下手に慰めて気を持たせるようなことは出来ん。
俺は振り返らずにその場を去った。

それにしても、今日はこれで2人目じゃ…。昼休みにも呼び出された。
部活に行ったら面倒なことになりそうじゃのう。



「仁王ー!!さっきの、やっぱアレ?」

案の定じゃな…。

「まぁ…」
「結構可愛い子だったじゃん!付き合うのか?」
「いや、付き合わんよ」
「ええ〜!?マジで?めずらしー!」

丸井が目を丸くして俺を見る。
そこへ幸村が顔を出して来た。

「どうしたの?」
「お、幸村くん!仁王ってば告白されたのに付き合わねぇんだって。珍しくね?」
「へぇ、それは珍しいね」
「幸村まで…俺を何だと思っちょるんじゃ」
「来る者拒まず去る者追わず」
「ひどいのぅ……否定はせんが」
「否定しねぇのかよ!」

丁度来たジャッカルのツッコミが入った。
気付けばいつの間にかいつもの仲間達が集まっていた。

「仁王は昨日と今日ですでに5人の女子から告白されているな」
「よう知っとったのう…ま、参謀なら当然か」
「だが、仁王が誰とも付き合わないというのは確かに珍しい…何かあったのか?」
「別にないけど、高校生じゃし?」
「フフッ…何か仁王らしいね」
「俺にはさっぱりわかんねー」

俺が誰とも付き合わんのがそんなに珍しいかのう?
確かに、中学の時の俺から見ればそうかもしれんがな。



部活が終わって、今日も仲間より先に部室を出た。2日連続で寄り道をせず真っ直ぐ帰る俺を、柳あたりは不思議に思い始めているみたいじゃが、もうしばらくは黙っておくつもり。

少し薄暗くなった道をマンションへ向かって歩きながら、そういえば今日は桔梗さんはバイトだったと思い出した。

部屋に帰るとやっぱり暗くて、丸井達と寄り道してもよかったな、と思いつつ着替えてキッチンに立つ。
キッチンを漁り、ストックがあったパスタで簡単に夕飯を済ませソファで寛いでいると、玄関のドアが開く音がした。





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