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She is queen.〜その女、最強につき〜
他人の目は気にしません(幸村/100000hit澪羽様へ)



ある日曜日の立海大附属中学のテニスコート付近にて。
午前の練習を終え昼食をとる部員達。
お弁当やらコンビニのパンなどをそれぞれが広げている。

全国大会も終わり引退した3年生が、この日は久しぶりに集まろうという話になり後輩達の指導に来ていた。そんな元レギュラー達も輪を作り、部員達と同様に昼食を広げている。

「相変わらず旺盛な食欲じゃのう」
「育ち盛りだからな!」

食の細い仁王が呆れ気味に丸井の前に積まれているパン達に目を遣る。
丸井が今食べているのは母親の作った弁当だが、彼は更にパンも食べるのだ。しかも一つや二つではない。

「胃にもたれそうじゃ」

見るのも嫌だとばかりに仁王は他のメンバーの昼食へと視線を変える。
久しぶりの部活とは言え、スポーツ部員だけあって、家から弁当を持参している者がほとんどだ。

その中で、一際バランス良く彩りの綺麗な弁当を見つけ、「それ、くれ」と仁王は手を伸ばす。
……が、寸前でぱちんと叩かれ、むすっとしながら仁王は叩いた相手を見た。

「ダメだよこれは」
「幸村はケチじゃのー」
「いくら仁王でもこれは絶対にあげない」

にこやかに、笑顔で拒否の言葉を紡ぐ幸村に、仁王は僅かに引き攣る。
不穏なオーラが幸村の背後から迫るのを感じてしまったが故だ。
その様子に、時々おかずを貰ったりする丸井もやめておこうと思った。

「お前がそんなに弁当に固執するとは珍しいな」

柳が幸村を見遣り言うと、彼は先程の不穏さとは全く逆の笑顔になった。
そのギャップに柳でさえも固まりかける。

「だって彼女の手作り弁当だもん」

その笑顔で紡がれた発言に、誰もが一瞬その言葉を理解できず、しかし幸村は気にすることなく美味しそうに弁当を食べ進めている。

「「え?……ええええ!!?」」
「煩いなあ」

全員が全員叫んで幸村を見た。
当の本人はムッと眉を寄せながらもその手は止まらない。

幸村に彼女がいるなど、全員が知らないことだ、叫ぶのも当然。

しかも幸村。幸村である。
彼の気に入る女子となると、そうそういる筈もないと思っていたし、実際これまでそうであった。
それに、テニスに賭けていた彼が彼女を作るということに驚く。

「彼女、出来たんか?」
「うん」

唖然としながらの仁王の問い掛けにも手を休めずあっさり返す。

「い、いつから!?」
「うーんと、9月かな」
「先月……か」

幸村は昨年の冬から今年の夏まで病で入院していた。しかし学校内でもかなりの人気の幸村を見舞おうとする女子は少なく、それから今まで接触のあった女子と言えば、看護師以外に特にはいなかった筈だ…と皆が思ったその時。夏に出会い、全国大会でも会った女子を、彼らはふと思い浮かべた。

「(いや、まさかな)」
「(それはないじゃろう)」
「(うん、有り得ねえ)」

だが全員が即否定した。確かに幸村は彼女を気に入っていた。しかし彼女のほうは絶対にそういった気持ちにはならないだろう、有り得ない、と。

そして何より、二人が恋人であるなどと信じたくないが故の否定でもある。

だが幸村の彼女がどんな女子なのかが気にならない訳はない。

「どんな子なんスか!?」
「すっごく可愛い」
「立海生なのか?」
「ううん。東京なんだよね。だからなかなか会えなくて」
「だったらなんで弁当があるんだ?」

桑原の疑問はもっともだ。東京から持ってくるとなるとそうとう早起きしなければならないだろう。
その問いに幸村はこれまでで一番の笑顔で答えた。

「昨日家に泊まったんだ」
「「ぶっ!!」」
「うわ、汚いよ皆」

幸村の発言に全員が吹き出した。サッと弁当箱を避けた幸村は少しむすっとして。

「と、とと泊まったって!?」
「たたたるんどる!!」
「…まさか、ホンマにそういう意味なんか?」
「……可愛かったなぁ」

赤くなる真田や丸井に、へらりと笑顔を向ける。仁王の言葉に返した幸村の台詞に、二人や切原が更に真っ赤になった時、聞いたことのある凛とした声が響いた。

「誤解を招くような言い方はやめろ。ただ家に泊まっただけだろうが」

声の主を確認した幸村以外のメンバーは固まった。対して幸村は周りに花が飛んでいるかのようにな笑顔を見せて、彼女の名を呼ぶ。

「蘭!来てくれたんだ」
「お前が来いと言ったのではないか」
「そうだけどー」

彼女は、そう、先程彼らが即否定した、氷帝学園の女帝こと紀宝蘭であった。
否定していたその彼女がやはり幸村の彼女であったことにかなりショックを受けているようで、メンバーは愕然としている。
幸村の、蘭に対する懐きようにも。
言葉を継げられない彼らをよそに、幸村と蘭の世界が繰り広げられる。

「ほら、レモンのハチミツ漬けだ。休憩にでも食べろ」
「わ、ありがとう!美味しそうだね。そうだ、お弁当すごく美味しいよ。あ、もう最後だね。……はい」
「…まったく、お前は」
「ふふ……うん、美味しい。ご馳走さま」
「どう致しまして。ああ、待て」
「ん?……っ、ちょ、それ反則」
「顔が赤いぞ?」
「もう、敵わないなあ」

会話だけでは分かりにくいと思うので説明しよう。
弁当が最後の一口になった幸村は、それを蘭に差し出した。蘭は直ぐに理解し、苦笑を浮かべながら受け取ると、箸を幸村の口元へと持っていく。所謂『あーん』の状態である。そして食べ終わったのだが、幸村の口端にソースが付いているのを見て蘭がそれを指で拭い取りペロッと舐めたのだ。それをサラっとやってのけてしまう蘭に、流石の幸村も照れてしまったのだった。

――とまあそんな状況である。

「「もういいわ!」」
「あは」
「……」

見兼ねたメンバー達は食べ終わった昼食を片付け散って行った。もうこれ以上ショックを受けたくないからだと思われる。
そして残されたのは、ニコニコ微笑む幸村と、蘭。

「当てつけるのはやめたらどうだ」
「だって自慢したいじゃないか」

呆れた溜め息をひとつ零して言う蘭の膝に頭を乗せた幸村はそう返す。
くすりと笑んだ蘭の頬に手を伸ばし触れると、ふわり、と彼女の香りが近づいた。

「「(そういうのは他所でやってくれ…!!)」」





END





xxx
10万hitを踏まれました澪羽様に捧げます。
大変遅くなってすみませんでした…!

初めての女帝if設定ということで、とても楽しく書かせていただきました!\(^▽^)/
リクを頂いた際、手塚君とどちらにしようかはあまり迷わず、この二人が付き合ってたら面白いだろうな、と思いました。
手塚君とでは普段通りになりそうでした(笑)手塚君が他人の目を気にしそうで。
女帝様はあまり気にしないタイプ。ツンデレでもなく、他人がいようとサラっと「好きだ」と言えます(^^)

澪羽様、こんな感じになりましたがいかがでしたか!?お気に召されなければいくらでも書き直します!本当、遅くなってすみませんでしたm(__)m

リクエストありがとうございました。キリ番ゲットおめでとうございました!!


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あきゅろす。
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