She is queen.〜その女、最強につき〜
ある日の放課後A
前回、カラオケにてその歌唱力に脱帽だった彼らだが、このままでは何となく負けたような気がして、今回、ゲームセンターに二人を誘ってみた。
「ていうか、跡部も行く?」
「誰も行かねぇとは言ってねーだろ」
「跡部は行ったことなさそうやな」
「そうだな。初めてだ」
「やけにあっさり認めたなぁ」
ワイワイがやがや、ただでさえ賑やかな集団は、どこにいても目立つ。
入ったゲームセンターも賑やかだが、思いきり人目を集めていた。
「あれって氷帝の跡部様じゃん!!」
「キャー!こんなところで氷帝テニス部のレギュラーに会えるなんて!!」
そんな声もあちこちから聞こえるが、例の如く気にもせず。というか聞こえていないと思われる。
「これがUFOキャッチャーやでー?」
「あのな、テメェ馬鹿にしてんのか!!俺様でもそれぐらい分かる!」
忍足が跡部をからかっていると、隣から感嘆の声と拍手が沸き起こった。
ふと二人が横を見ると。
「結局こーゆーことになるんやな…」
「一体、あいつの弱みは何なんだ?」
「わぁ、取れた〜!」
「まぁこんなものだろう」
機械の前で、大きなぬいぐるみを抱えた楓がニコニコ笑っていた。
「次あれ欲しい!」
別の機械を指差し腕を引っ張る楓に、蘭は苦笑しながら成すがままにされる。
そうしてまたもやあっさりと景品を獲得し、次へ。
音ゲーやシューティングなどのどのゲームも完璧にこなしていく蘭に、誰も何も言えないかと思ったが。
「流石になんか悔しいぜ…!蘭、勝負だ!!」
向日が蘭に勝負を吹っ掛けた。
蘭はそれをニヤリ顔で受け止めて、
「負けたほうが何か奢ること」
と告げたのだった。
「おまっ、生徒会長がんな賭けしていいと思ってんのか!?」
「なんだ、負けるのが怖いのか」
「はぁ!?そんなワケねーだろ!やってやろーじゃねーか!これでなぁ!!」
そう言って、向日は格闘ゲームの機械の前に座った。
ふむ、と目を遣った蘭は向こう側に座り、二人は100円を入れた。
「長太郎、どっちが勝つと思う?」
「蘭先輩」
即答した鳳に宍戸は目を瞬かせた。
それに忍足は「俺も蘭にカフェのケーキな」と言う。
「なら俺は向日にチーズサンド」
「だったら俺はデザートセットにしますよ」
「俺も向日先輩にカプチーノで」
こちらも賭け合いになり、最後に跡部が。
「俺様は向日にAランチだ。向日、思いきりやっちまえ」
「ったりまえ!」
「フッ…」
ニヤリと笑んだ蘭に気付いた者はおらず、ゲーム開始!
1回戦。
「おらぁ!」
カタカタ、パチパチ、スティックとボタンを操作する音が数回。
向日の画面に『YOU WIN!』の文字が。
まさかのことに向日本人も唖然。
「っしゃ!」
「嘘や!蘭が負けた!?」
全員が唖然とするが、負けた本人は相変わらずの無表情で、
「ふむ、成る程」
何かに納得しつつの2回戦。
『YOU WIN!』
「え」
「秒殺!?」
「さっきの何やったん?」
「お姉ちゃんもしかして初めて?」
「ああ」
「「はぁ!?」」
再び唖然とした一同が、楓の言葉に叫ぶ。
初めての格闘ゲームだったらしい蘭だが、やはりそこは女帝。
「やっぱりこうなるんやな」
「だから、こいつの弱味って何だよ」
「猫じゃね?」
「あれは弱味とはちゃうやろ。跡部ーカフェのケーキよろしゅうな」
「……チッ」
「……俺泣きそう…」
へこむ向日を余所に、蘭の前の画面には『YOU WIN!』の文字が輝いていた。
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