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She is queen.〜その女、最強につき〜
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後片付けを終えた蘭は砂浜へと出た。
今、跡部達は砂浜で体力アップのトレーニングを行っている。
きつい陽射しに日射病が懸念されるが、それは楓がしっかり見ているようなので大丈夫そうだ。

「楓、少し周りを見てくる。1時間程で戻る」
「うん、分かった」

楓にそう告げて、蘭は砂浜を歩いて行った。

「はい、では10分間の休憩入ります!」

楓がホイッスルを鳴らし、ドリンクとタオルを渡していく。
しかし、彼らは岩場へと向かう蘭に目が行った。
それに気付いた楓が苦笑して。

「お姉ちゃん、初めての場所は探索しないと気が済まないんですよー」
「意外やな…結構好奇心旺盛なんや」
「冒険心もすごいですよ。1時間程で戻るって言ってましたから心配しなくても大丈夫ですよ!」
「…は?し、心配なんかしてないって!」

慌てる向日に楓はクスクスと微笑んだ。
蘭の姿は岩場の向こうに消えていた。



蘭が岩場を歩いて『私有地』の看板を過ぎていくと、何やら声が聞こえてきた。

「おっ、けっこーデカイじゃん!やるねーいっちゃん!」
「こっちにも大きなサザエあったよ!」
「よし、いっぱい採れたしそろそろ戻ろう……わああ!」

声の主の一人は、岩場の陰からひょっこり出て来た蘭に驚いて思わず叫んだ。
彼の叫び声にそちらを見遣った他の者達も、こんな岩場で女の子に会うなどとは思わず驚いていた。
当の蘭はと言えば、叫ばれたことを気にもせず、少年が手に持つバケツを覗き込んでいた。

「……あ、あのー…」
「いいサザエだ。ここで採ったのか?」
「え、あ、うん、そうだよ。あのさ…」
「私でも採れるか?」
「(無視!?)え、採りたいの!?」

少年が驚いて聞き返すと、蘭はコクリと頷いた。
少年は少し考えて、仲間らしい他の者達を見た。

「まだ時間あるし、いいだろ?」
「もちろん!あ、でも貝類の採取には漁協の許可が…」
「私有地なら問題ないだろう?」

蘭が後ろを指差し看板を示す。

「あ、この先の別荘の人?だったら大丈夫だよ」
「私有地…しゆうち…羞恥し…」
「このダビデー!」
「ぐあっ!…せめて最後まで言わせて…」

何故かおかしなやり取りが挟まったが、蘭はスルー。蹴られた少年が軽くへこんでいた。

「でもサザエは潜らなきゃ採れないからいっちゃんに任せて、他の貝を採ろうか。いっちゃん頼むよ!」
「分かった」

『いっちゃん』と呼ばれた少年が海に潜っていくのを見て、蘭は尋ねた。

「いいのか?」
「気にしなくていいよ。僕ら貝採るの好きだから」
「そうか、ありがとう」

そう微笑んだ蘭に、場にいた全員が見惚れた。
ポカンとしていた一同だったが、次の瞬間凍り付いた。

「……教えてくれるのならさっさとしろ。夕飯に間に合わんだろ」
「「「は、はい!!」」」
「それでいい」

そうして蘭は初めて会った少年達と、夕飯の食材を手に入れたのであった。

「そろそろ行かねば」
「あ、そうなの?じゃあね!」
「うむ、中々楽しかったぞ。ありがとう」
「あ、ああ」

ニコリと笑顔を残して、重そうなバケツを軽々と持ち蘭は去っていった。

「あ!」
「何?」
「名前聞くの忘れた!」
「俺らも名乗ってねーし」
「アハハハ!」

それでも彼らの中に、蘭が深く印象付けられたのは言うまでもない。

それから数時間後。

「夕飯が出来たぞ」
「うお、スゲー!」
「貝なんて海っぽいな!」

豪華な夕飯に皆が喜ぶ中、唖然とする跡部が口を開いた。

「ちょっと待て!こんな貝なかっただろ!!」
「え!?」

またその展開か!?と思った一同は、蘭の言葉に固まった。

「ああ、端の岩場で地元の人に会ってな。手伝って貰って採った」

好奇心と冒険心が強いのも程があるだろー!と、全員が心の中で突っ込んだ。

その好奇心と冒険心が彼らに予想外の出来事をもたらすとは、この時誰も予測出来るはずはない。





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