[携帯モード] [URL送信]

She is queen.〜その女、最強につき〜
:4



ランニングに出た跡部達が別荘に戻ると、楓の笑顔とスパイシーな香りが彼らを出迎えた。

「皆さんお帰りなさい!ドリンクとタオルどうぞ!」
「ああ、サンキュ」
「ええ匂いやなぁ」
「腹減ったー!」

ドリンクで喉を潤し、汗を拭きながら入ったダイニングのテーブルには、既に食事の準備が出来ていた。

「カレーかー美味そー!」

席に着く一同の前に、キッチンから蘭が現れた。
当然ながら私服のうえにエプロン姿なので、思わず目が奪われる。しかし今は目の前の食事に気が向かう。

「まぁ食え」
「いっただっきまーす!」
「頂きます……っ…美味しいです!すごい美味しいです!」
「なんかすげぇコクがあるっつーか…」
「でもまろやかで…」
「短時間で作ったにしてはやるじゃねーか」

やはり料理の腕には文句の付けようがない。
跡部も大人しくスプーンを口に運んでいた。

「おかわりー!」
「後は自分でやれ」

流石、中学生の男子。運動がハンパない彼らは食欲もかなりある。
当然のように2杯目を口に運ぶ一同に、蘭は満足そうに微笑んだ。
しかし、跡部には少々腑に落ちない点があった。

「このカレー…市販のルー使ってるだろ…食材の中にはなかったはずだが?」

自分達が口に入れる物だけに、跡部は事前にチェックしていたのだ。
全て把握していたが、市販のルーはなかった筈だった。
跡部の疑問に蘭はサラっと答えた。

「ああ、昨日お前の執事に頼んで入れておいてもらった。今日は手早く作れるメニューにしようと思っていたからな」
「い…いつの間に…!」

跡部の知らぬところでそんなやり取りが行われていようとは夢にも思う筈がない。

「だからお前は何で俺様を無視しやがる!」
「馬鹿かお前は。全国で国光に借りを返すつもりなら、そんなことを気にしている場合か?」
「……!」

自身もスプーンを口に運びながら、ビシリと言い放つ。
跡部に二の句が継げるわけもなく、舌打ちをして、浮かせた腰を下ろした。
ハラハラしながら二人を見ていた他のメンバーも、ホッと息をついた。
そして食後。

「……この合宿は甘くねぇ。テメェら、覚悟して準備しとけ!」
「…おう!」
「当たり前や」
「練習は10分後だ」

跡部はニヤリと笑みを見せた宍戸や忍足達に頷いて席を立った。

「火ぃ点いたなぁ」

クスリと笑んだ忍足は、食後のコーヒーを飲む蘭を見つめた。
蘭の言葉はいつも跡部を動かす。
いや、跡部だけでなく、自分も動かされていた。

「(ホンマ、不思議やわ)」

そんな不思議な気持ちも嫌いではない自分に笑みが浮かぶ忍足だった。





[*←][→#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!