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She is queen.〜その女、最強につき〜
膝枕


ヤバイなぁ…めちゃめちゃ気持ちいいんですけど。



《膝枕》



現在、昼休み時間。
本日は放課後に生徒会の役員会議があるため、蘭は会議の資料を手に屋上への階段を上がった。
精神集中は得意なので教室でもいいのだが、やはり静かな場所のほうがいい、ということもあり、天気もいいのでほとんど人の来ることはない屋上に来たのだが。

……むぎゅ。

下を見ずに歩いていたことと、その人物が寝転がっていたこと、そして、屋上の扉から出てクルリと角を曲がった場所は死角だった、という偶然が重なった。

「いてっ!!」
「アン?」

足元の感覚に下を見ると。
どうやら踏んでいたようだ、何かを。

「…ジローか」
「蘭…く、苦し…足、どけ…」

自分が踏んだ何か…ではなく人物――芥川慈郎――を認識し、蘭はようやく足を退けた。


「ああ、悪いな」
「…えーそれだけぇ〜?」

芥川はわざとらしく潤んで見せながら、蘭を見上げた。
いつもならそのまま眠りに落ちることができる彼も、蘭の前では寝るに寝られず。
仮にも生徒会長でもある。その上、楓の姉である。怒らせるわけにはいかない。

「それだけ…とは?…貴様、この私に何かしろと?」

蘭は跡部さながら芥川を睨む。お前がそんな所で寝ているのが悪いのだと。

「…いや、何も…」
「だろうな。…お前、まだ寝るのか?だったら私は違う場所に……オイ…」

言いながら蘭は立ち去ろうとしたが。

「…やっぱさ、人のこと踏んでおいて行っちゃうなんて酷いよねぇ〜」

蘭の足首を掴んで離さず、芥川は言った。
蘭はしばらく彼を見下ろしていたが、仕方なくその場に座った。

「私は今日の会議の資料が見たい。邪魔をしないならいいが?…どうすればいいのだ?」
「しませーん!だから〜膝枕して〜?」

その場に誰かがいたら何と恐れ多いことを言うのだ、と思うだろう。だが、それを言うのが、そして、許されるのが芥川慈郎、である。
だからといって、蘭がそれを許したわけでもないのだが、彼を踏んだことは事実であって。

「仕方がないな」

蘭は溜息をひとつ零した。

「やっり〜」

蘭に膝枕して貰ったなんて俺くらいだろうなぁ…皆に自慢してやろう、などと思いつつ、芥川は、こてん、と蘭の膝に頭を乗せた…が、何故だか突然起き上がった。

「…何だ、寝ないのか?」
「…す…」
「…す?」
「スッゲェ!!!めちゃめちゃ気持Eー!!蘭の膝ってば柔らけ〜!!」
「…何だそれは」

蘭は微妙な表情で芥川を見た。

「つーか、楓ちゃんより寝心地Eー!」
「あん?貴様…楓にもさせたのか…?」
「…あー…」
「ったく、楓はお前らのマネージャーだが、お前らだけじゃなく、ただでさえ多い部員たちの世話をしているんだ。もう少し迷惑掛けないようにしてやれないのか?」

ただし、楓にとってはそれほど迷惑なことだと思っていない、というのは蘭も承知だが。

「ん〜…だったら蘭がしてよ」

玩具をねだる子供のように、芥川は蘭に向かって言った。

「私が?」
「うん」
「あのな、私は生徒会長なんだぞ……まぁ、楓にさせるよりはマシだがな」
「わ〜い、嬉Cー!」

芥川はパッと顔を輝かせ、蘭の膝に頭を乗せた。

「ただし、私の時間がある時だけだぞ」
「いいよ〜…あ〜気持ちい…ぐ〜〜…」
「もう寝たのか…まったく…」

あっという間に寝てしまった芥川の頭を撫でて微笑み、蘭は持っていた資料に目を通し始めた。
この笑顔を誰かが見たら、どう感じていただろう。
楓と姉妹だと納得せざるを得ない笑顔だったのだが…見ることができたかもしれない芥川はすでに夢の中。

どこまでも我が道を行く女、紀宝蘭。

…とういうだけではないと、芥川の蘭に対する印象が少し変わった、ある日の昼休みの出来事。



(ジロー、膝枕、ゲット)
(06・11・27)


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あきゅろす。
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