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She is queen.〜その女、最強につき〜
:2



さぁ、ついにやってきた合宿当日。
学園にはきっちり5分前には全員が揃っていた。
そして芥川もちゃんと起きている。

お察しの通り、蘭がいるのに遅刻などしては、後が恐ろしいからである。

「うむ、全員揃ったな。では行くか」
「部長は俺様だ!俺様を差し置いてテメェは!」
「喧しい、目立ちたがりやめ。小さいことで喚くな、馬鹿が」
「ば…っ!?ムカつく女だな!」
「早くしろ。時間の無駄だ」

跡部を無視してバスに乗り込む蘭。
肩を震わせる跡部を慰めるかのように、後のメンバーが肩を叩いて乗り込んでいく。
続いて、楓が申し訳なさそうに頭を下げた。

「せ、先輩、ごめんなさい…もーお姉ちゃん!」

前途多難のようである。



「蘭ー、ポッキーあげるー」
「ん、すまんな」
「楓ちゃんにもハイ!」
「あ、ありがとうございます」

バスの中は意外と静かであった。
何故なら、跡部が既に撃沈している為である。
だが、そんなことはお構いなしに、バスは目的地へと向かう。

「しばらく立ち直れへんみたいやなぁ」
「いいんじゃねーの?静かで」
「何気に酷いな、岳人」

落ち込む跡部を眺めつつ、時折お菓子を摘んで口に運ぶ忍足、向日、宍戸の三人は、跡部を哀れと思いながらも実は楽しんでいた。

『カシャッ』

「ん?……!」

音に振り向き後ろを見た忍足は唖然とした。

「な、な……」
「なんだよ侑士……て、あー!ちょっと見ろ宍戸!」
「んだよ!……て、え…」

忍足の様子に後ろを見た向日と宍戸も唖然とした。

「本人の許可なしの撮影は盗撮だぞ」
「う…じゃあ一緒に撮ろうよ」
「暑苦しい」
「まぁまぁそう言わずに!いっくよー…はいチーズ!」

イェイ!とピースを作り、蘭の横でニッコリ笑顔の芥川。
手には携帯。
蘭は笑顔こそないものの、目線は携帯に向いていた。

「蘭だって何気にカメラ目線だCー!…うわ、すげー美人!」
「ふむ、悪くない」
「あ、ジロー先輩、私とお姉ちゃんで撮って下さい!」
「いいよー」

和気あいあいと携帯での撮影会が行われていたのであった。

姉妹で撮った写真を確認する二人の様子はほほえましく、優しく微笑む蘭に三人はドキッとしてしまった。

「…お前達も入りたいのか?」

呆ける三人に気付いた蘭がニヤリと笑みを浮かべると、思わずぐっと言葉を詰まらせたじろいだ。
その瞬間。

『カシャッ』

「え」
「…フッ…」
「あ!撮っとんねん!」
「中々の間抜け面だ」

おもむろに携帯を向けた蘭が、シャッターボタンを押したのだ。
しかも、画面を彼らに見せてクツクツと笑う蘭は、普段の彼女からは想像もつかない程魅力的だった。

「だー!ハラ立つわー!消せ!今すぐ消せ!」
「断る。こんな使えそうなネタを消すわけなかろう」
「使っ…どこで使う気だー!!」
「……悪魔…ッ!」

あまりの仕打ちに、さっきの『ドキッ』を返せー!と、三人は内心で叫んだ。



芥川が今度はデジカメを取り出して、2年生にも声を掛けた。

「鳳、日吉、樺地も一緒に撮ろーよ」
「あ、撮りたいです!」
「俺は別に…」
「…ウス」
「そうか、なら入れ」
「「「え、そう言ったの!?」」」
「ウス」

相変わらず樺地と普通に会話する蘭に驚きつつ、なんだかんだでワイワイと撮影会は進むのであった。

ところで、何か忘れていませんか?

「テメェら……俺様を無視して何してやがる!」
「馬鹿は放っておけ」

そう、跡部である。漸く復活した跡部は、蘭の毒舌に何とか耐えて、彼女を睨み付ける。

「お前に言われる筋合いはねぇ!さぁ、美しき俺様を存分に撮るがいい!」
「うむ、さすが我が校のキングと言われるだけはある。撮ってやろうではないか」
「フッ…漸くお前も俺様の素晴らしさに気が付いたか!」
「ああそうだな」
「蘭が跡部を褒めとる…」
「嘘だ…」

跡部を褒めたたえる蘭など有り得ない。
忍足達は唖然として蘭を見たが、思わず頬が引き攣った。
何故なら、カメラを構える蘭の表情が……。

「「「(絶対、写真売る気だー!!!)」」」

自己陶酔中の跡部は気付いていない。





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あきゅろす。
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