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She is queen.〜その女、最強につき〜
貴女と初めて出会った日



《貴女と初めて出会った日》



それから1年。
彼らも進級し2年生となりました。

そして新たに後輩を迎えるわけで。

入学式の会場では、真新しい制服に身を包んだ新入生達が校長の話に耳を傾けながら、ある方向へチラチラと視線を遣っていた。

昨年度の終わりに行われた選挙によって会長となった蘭へ、である。
現3年を差し置いての会長就任だったが、誰もが納得であった。

「生徒会長挨拶、2年B組紀宝蘭」
「はい」

司会の教師が名を呼ぶと、静かな会場に凛とした声が響いた。
壇上に上がり一礼した蘭が、やはり凛とした声で言い放った。

「新入生諸君、我が氷帝学園へようこそ。堅苦しい挨拶は抜きにする。この学園に来た以上、退屈することはない。日々を楽しめ!以上!」

再び一礼し下りると、会場内は拍手の嵐が巻き起こった。
一瞬にしてファンが出来たのは言うまでもない。

そんな光景を、妹、楓はニコニコ微笑みながら見ていた。

「(お姉ちゃんカッコイイ〜!!)」

同じく新入生である鳳や日吉、樺地も当然ながらその光景に出くわしている。

「すげぇ会長だな」
「ハハ…ほんと、凄いな」

幼稚舎からの同級生に話し掛けられ、鳳は苦笑を返し再び蘭へと視線を遣った。

第一印象――『跡部さん以外にも凄い人いるんだなぁ』



「カッコイイ〜!」
「蘭様〜!」

近く、もとい周りから飛ぶ黄色い声に顔を顰め、日吉は通り過ぎる蘭を見つめた。

教師が次の式次第を進めるまで続いた騒ぎにもその後見つめられる視線にも全く動じることなく後ろに控える姿は、生徒達を統べる生徒会長らしくそこに居るだけで大きな存在感がある。
しかし。

第一印象――『別に大したことないだろ』

かなり見くびっていたことに気付かされるのはすぐのこと。



そして、特に表情が変わることなく(そういう風に見えるだけかもしれないが)見ていた樺地。
入学式と、続いて行われたHRの後、彼は部活中の跡部の元へと向かっていた。

ほんの少し急いでいた樺地は、廊下を曲がったところで人とぶつかってしまい、当然ながら、相手がふらついてしまった。
しかし、咄嗟に手を出し相手の手を掴んで支えることに成功した。
相手は、先程入学式にて簡潔な挨拶で済ませてしまった蘭であった。

「すまない」
「……ウス」
「いや、私も前をよく見ていなかったしな。支えてくれて感謝する」
「……!?」

初対面で樺地の言いたい事を理解した人間は、跡部以外では初めてだった。
しかも、見た目の大柄さや無表情な樺地に驚いたりすることもなく。
思わず唖然とする樺地に蘭は柔らかく微笑み掛け、「急いでいるのだろう?私なら気にするな。次に気を付ければ良い」と、スッとその場を去っていった。

第一印象――『……ウス』

尊敬の念が芽生えました。



(091115)

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あきゅろす。
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