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She is queen.〜その女、最強につき〜
君と初めて出会った日・1



《君と初めて出会った日・1》



春は出会いの季節。

今年もまた新入生が真新しい制服に身を包み、学園の門をくぐる。

受け付けで先輩から花飾りを付けて貰うと、どこか誇らしげに、そして嬉しそうに顔を綻ばせる。

教室では幼稚舎上がりの顔見知り同士が話したり、外部入学の者達が同じ境遇に気を合わせて話したりしているが、皆一様にこれからの学園生活への期待に満ち溢れていた。

そんな空気の中教室の扉が開き、入って来た少女に目を向けたクラスメート達は言葉を失った。
凜と背筋を伸ばした少女――蘭の容姿に見惚れたからだ。
シンとなった教室の空気を気にも留めず、蘭は黒板に示された自分の座席を確認し、席に着いた。

幼稚舎からの上がり組は見たことのない少女に外部入学だと気付くも、蘭の纏う空気に当てられて話し掛ける事が出来ない。
方や外部入学組もそれは同じだった。

程なくしてチャイムが鳴ると、皆自分の席に着いたが、蘭が気になって仕方がなかったのであった。

そんな蘭と同じクラスとなった宍戸はポツリと「激ダサ」と呟いた。

「(なんかとんでもねぇ奴と同じクラスになったかも)」

第一印象――『美人、だけど一癖ありそう?』

宍戸の予感は直ぐに当たることとなる。



入学式は滞りなく執り行われ、新入生代表が突拍子もない挨拶をした以外は特に何もなく終了した。
ちなみに、新入生代表である跡部が会場を沸かせていても、蘭は表情を変えることはなかった。

「跡部君、挨拶ありがとう、お疲れ様」
「いえ」
「助かったわ。まさか代表挨拶を辞退されるなんて思わなかったから」
「……は?」
「あ、ごめんなさい…実は代表の子に挨拶を辞退されてしまったの…だから男子ではトップだった跡部君にお願いしたのよ…本当にありがとう」

知らされた事実に跡部は苛立つのを感じたが、辛うじて抑え教師に尋ねた。

「誰ですか…」
「え?」
「その代表だったのは誰ですか」
「C組の紀宝蘭さんよ」
「(紀宝蘭……俺様を差し置いて代表だと?しかも辞退とはふざけてやがる!)」

名前だけの第一印象――『ふざけんな!』

跡部はその苛立ちを直後のテニス部でぶつけたのであった。

2人の接触はまだ先。



面白い入学式に眠気も潜んで、ワクワクしながら向かった部活もこれまた面白いことになっていた。
跡部の強さに魅せられた芥川は、今日は道で眠ったりはしなさそう――かと思いきや、初日にして部長になってしまった跡部の組んだ練習メニューはなかなか厳しく、少し休憩と休んだ木陰で見事に夢の世界へとダイビングした。

そこへ偶然、学園内の施設を見て回っていた蘭が通り掛かった。
一度は放置しようかと思ったが、見上げた空にはほんの少し雨雲らしきものが浮かんでいて、恐らく確実に降るであろうと予測出来てはそのままにしておくのも――と、仕方なく芥川を起こすため傍らにしゃがんだ。

「起きろ、直に雨が降るぞ」

軽く揺さぶるが起きる気配は全くない。
そこで蘭は軽く手を上げて――。

ゴッ!!

「いぃ…ったーーッ!!」

グーで殴った。力いっぱい思いきり。

「なっ…にす…ッ」
「雨が降る。起きろ」

これで起きなければよっぽどだ。
頭を抑えながら傍らを見上げた芥川は、顔を引き攣らせ固まった。

蘭はそんな芥川を放置し、その場を去った。
固まったまましばらく動けずにいた芥川だったが、頬にポツリと当たった水の粒に慌てて家路を急いだ。

第一印象――『超恐いCー!』

美人は怒ると恐いという言葉を実感した。





(09.04.06)

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