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She is queen.〜その女、最強につき〜
女帝と呼ばれる女



ここは氷帝学園。全国的にも有名なテニスの強豪校である。
その学園で有名な人物は誰かと聞けば必ず挙がる人物が3人いる。
一人は男子テニス部部長、跡部景吾。
一人は男子テニス部マネージャー、紀宝楓。
そしてもう一人は――。

氷帝学園生徒会長、紀宝蘭。

通称『女帝』である。



She is queen.〜その女、最強につき〜

《女帝と呼ばれる女》



「楓ちゃ〜んドリンクちょうだーい!」
「は〜い!」
「楓ちゃん、こっちもくれへんか〜?」
「はいは〜い!」
「楓ちゃ〜ん」
「楓ー」
「もお〜あんまり一度に呼ばれても無理ですよ〜!」

困ったようにドリンクを抱えて立っているのは、男子テニス部マネージャー、紀宝楓。
彼女は部のアイドル的存在である。今日も休憩に入ると、部員達は我先にと楓からのドリンクを奪い合うのだった。

「そんなに慌てなくても皆さんの分はありますから」

そんな彼らに少々呆れるものの、楓は微笑みながら部員たちにドリンクを配っていく。彼らはいつも、彼女の笑顔に癒されている。

今日も部員達は楓にメロメロ(死語)です。

「おい、テメェら、休憩終わりだ。早くコートに戻れ!」

部長、跡部の少し苛立った声に苦笑して、楓の周りにいた部員たち(主にレギュラー)はコートへと戻り始めた。

「はいはい。んじゃ、楓ちゃん、俺のカッコいいとこ見といてや〜」
「は〜い!忍足先輩!」

楓はにっこり笑って手を振った。忍足は楓の笑顔に思わず顔が緩む。

「楓ちゃん、俺も見といてよ!」
「もちろんですよ、向日先輩!」

同じように向日にも微笑んで手を振った。向日も顔を緩ませながらコートに向かって行った。
楓がテニス部のマネージャーになってからというもの、部員達の士気が目に見えるように上がった。
彼女をマネージャーにして良かったと、今更ながら思う。
今日も練習に励む部員達を見て、顧問の榊は満足気であった。



「今日の練習はこれで終わりだ」

跡部が部活の終了を告げた。さあ、これから氷帝レギュラー陣による(一般部員たちは怖くて参加できない)愛しのマネージャーの争奪が繰り広げられるところ…だったはずが。
いざ、彼女を探すも、見当たらず。
どこに行ったのだろうかとキョロキョロ探す氷帝レギュラー達。
周りから見ればかなり挙動不審だが、彼らにはそんな余裕はない。

(楓はどこだ!?)

楓は律儀な性格なので、仕事を途中にして帰る事は絶対にない。
見ると、仕事は完璧に終わらせているようだ。

(まさか、もう帰った!?)

少しの焦りとともにそんなことを思った時。

「あ、皆さんお疲れ様でした」

楓が女子更衣室からひょっこりと顔を覗かせた。

「楓、お前、仕事は?」
「もう終わってますよ。部日誌はさっき榊先生にお渡ししました」
「てか、着替えんのめっちゃ早ないか?」
「これから用事があってちょっと急いでるんですよ」
「…じゃあ〜今日は一緒に帰れないのぉ〜?」

いつも寝ている芥川が、やはり眠そうな顔で聞いた。

「そうなんです…ごめんなさい」

楓は申し訳なさそうに謝り、付け加えた。

「皆さんと一緒に帰りたいのは山々なんですけど、今日は前からお姉ちゃんと約束がありまして…」

楓の『お姉ちゃん』という言葉に、一同、ビクリと身体を震わせた。

「…蘭…か…?」

戸惑いながら聞いた跡部の問いに、

「はい!」

と、楓は見事な笑顔で答えた。
そんな楓の笑顔に見惚れながらも、一同、肩を落とした。

「チッ…あの女か…」
「…蘭やったらしゃあないか…」
「…だよな…俺らじゃ勝てねぇし」
「…ていうか、勝てる人っているんですか…?」
「…見たことねぇよ」
「…ですね…」
「……ウス……」
「……蘭…怖い」

それぞれ思うことを呟き、仕方ない、と諦めて自分たちも帰る準備をすることにした。

「それじゃあ、お先に失礼しますね」

楓はペコリと頭を下げてそこから去ろうとしたが、そこに少し遠くから楓を呼ぶ声が掛かった。

「楓」
「あ、お姉ちゃん」

楓がにっこりと笑みを向けた先からやってくる、一人の女生徒。
楓は一般的に言えば、『可愛い』と言われるが、その彼女は『綺麗』もしくは『美人』となるだろう。
彼女は楓に向けて少し微笑んだ。(但し、そう見えたのは楓だけだが)
彼女こそ、先に出た名前の持ち主。楓の姉、蘭である。

「生徒会の仕事が思ったより早く終わったからな、迎えに来た」

普通の女子が話す言葉より少し違う言葉使いだが、理由は追々判ることなのでここでは省略させていただくが。
蘭は楓の目の前までやって来ると、彼女の目の前にいる男達を見て一瞬だけ不満そうな顔をした。

「楓、行くか」

だがそこにいる男達を完全無視。挨拶すらせず、楓を促した。
しかし、無視されて大人しくしている奴らでもない。

「オイ、テメェ何無視してんだよ」
「………ん?………ああ、跡部以下、テニス部レギュラーどもじゃないか。いたのか」
「おったやろ目の前に!しかもちゃんとこっち見たやろ!…ていうか、跡部以下って何や!」
「あ?いちいち面倒じゃないか。お前らいつも一緒にいるのだから構わんだろう?まあいい、楓、行くぞ」

忍足の弱々しい反論も空しく、蘭は改めて楓を促した。
楓はがっくりと肩を落とす一同を心配そうに見る。

「えっと…皆さん…大丈夫ですか?…んもう、お姉ちゃんてば…」

蘭の彼らに対するこういう態度はいつものことなのだが、それでも、楓としてはもう少し仲良くしてもいいのではないか、と思うわけで。

「楓、こいつらなら放って置いても大丈夫だ。それより早くしないと売り切れるのではないか?例のケーキ」
「お姉ちゃんてば!…って、ケーキ?…あああ!それは大変だわ!行こう、お姉ちゃん!」

いつの時代でも女性というのは甘いものには弱いもの。楓がハッとして蘭の腕を引っ張った。

「それじゃあ皆さん、さようなら〜」

楓は蘭の腕を引っ張りながら、レギュラー陣ににっこり微笑んだ。
どんな時でも楓の笑顔はやはり可愛い。思わず見惚れてしまった跡部達に、蘭は腕を引かれながら少し振り返って…。

クス、と笑った。

(あ…あの女ぁ〜〜〜〜!!!)

紀宝蘭…氷帝において、最強の女帝である。





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(06・10・30)

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あきゅろす。
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