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今日も変わらず地球は回る
手を取り合って



しばらく校門前で賑やかに話し込んでいたが、ゴホン、と仁王が咳ばらいをしたことで彩音達は会話を止めた。

「いい加減限界なんじゃけど」
「あら〜ごめんなさいねぇ〜」
「仕方ないなぁ、離してやるか」
「妙な気分だわ。彩音がこんな可愛い格好してるから」
「そうね。わざとよね、この服。まるで…」
「「お嫁さんみたい」」

4人が揃って言うと、彩音が顔を真っ赤にさせてうろたえた。
4人が束になると、流石の彩音も敵わない。

「な、何言ってるの!?」
「だよなー。俺も思ってた」
「蓬莱先輩綺麗っス!」
「ちょっ、やめてよー!」

丸井や切原の言葉にさらに照れる彩音を、仁王がぐいと引き寄せ腕の中に閉じ込めた。

「あんまりいじめんといてくれんかのぅ?」

ずっとのけ者になっていたのもありむくれる仁王をクスクス笑って、幸村がじゃあそろそろ行こうか、と促す。この後、テニス部メンバーと桜達で一緒に遊ぶのだが、仁王と彩音は用事を済ませてから合流することになっている。
跡部は東京に戻るので、ここでお別れだ。

ふと、跡部が幸村と顔を見合わせて、彩音、と彼女を呼んだ。彩音が仁王に微笑み掛けてから二人のもとに駆け寄る。二人共幼馴染みなのだから、それは当たり前のようにも思えるのだが、仁王はほんの少しだけ嫌な予感がした。跡部と幸村の笑みを見て。

「彩音、すごく綺麗だよ」
「ありがと…」
「俺様の見立てだから当然だ」
「アハハ、そうだね!」
「「彩音」」
「ん?……っ!!」

二人に名前を呼ばれ、答えようとした、その時。
彩音の両頬に、同時にキスが落とされた。
流石に周りもシンとして、しかしあまりにも絵になる光景に見惚れてしまっていた。

「景吾くん、精市くん…!」

驚きに、またも顔を赤くした彩音に、二人は声を上げて笑い、ふっと優しい眼差しを向ける。

「幸せにね、彩音」
「幸せにな、彩音」
「…うん!ありがとう、二人とも大好き」

これまでずっと見守ってきてくれた二人。二人がいなければ、今の彩音はなかったかもしれない。
ギュッと二人を抱きしめて、そっと離れると、再び彩音は仁王に抱きしめられていた。

「おまんらなぁ…後で覚えとけよ!行くぜよ彩音!」
「はぁい。じゃあ皆、後でね」
「待ってるからね〜!」

先程よりもむくれる仁王に手を引かれ、桜達に見送られながら彩音は立海を後にした。
その後ろ姿を見つめ、跡部と幸村は互いに苦笑する。

「娘を嫁に出す父親ってこんな気持ちかな」
「せめて兄貴にしとけ」
「どっちにしろ変わらないだろ?」
「…だな」

二人の呟きは誰に聞かれることなく、春風に掠われていった。



手を引いたままどんどん進んで行く仁王に、彩音は悪いと思いつつもクスリと微笑んだ。
それが聞こえたのかどうかは分からないが、仁王がぴたっと歩くのを止め、不意に彩音に向き合った。

「お前さんは隙を見せすぎじゃ」
「でもあれは…」
「消毒!」

言うや彩音の両頬を拭って、軽くキスをする。

「消毒って…」

呆れる彩音の手を再び引いて歩き出す仁王は、内ポケットに仕舞ってある紙を、ブレザーの上から確かめるように撫でた。

見えてきた建物に入ろうとしたが、入口横に導いて、仁王は彩音の手を取った。
じっと自分を見つめる眼差しはとても真剣で、けれど吸い込まれそうに綺麗だと彩音は思った。
告げられる台詞は分かっていても、どうしようもなくドキドキする。
それは仁王も同じで、彩音が立海に着いてからずっと緊張しているのだった。

「彩音、もう一回言う……俺と、ずっと一緒にいてくれ」
「うん。一緒に歩いて行こうね」

彩音の答えに一度大きく息を吐き、再び見つめる。

「俺と結婚して下さい」
「はい…喜んで」

微笑み合って軽くキスを交わし、二人は手を繋いで建物の中へと入って行った。

これからも同じ道を歩むために――。



fin.



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