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今日も変わらず地球は回る
納得出来ない気持ち



梅雨の中休み直後、空は再びどんよりとした雲に覆われ、天気予報通り間もなく雨が降りそうだ。

昼休み、立海大附属高校の中庭。二人の男女が向かい合う形で立っている。一人は仁王、一人は同級生で違うクラスの女子。

「俺は誰とも付き合わん」
「……」

顔を真っ赤にして告白してきたのは、可愛いとは思う。以前の仁王なら付き合っていたかもしれないが、彩音に出会ってしまった彼が、彼女以外に心揺れることは今だない。
泣きながら立ち去って行ったのを冷めた目で見て、仁王は息を吐いて横の木に凭れた。

「忘れるんなんか、無理ぜよ」

期限付きの付き合いだと言われても、あの時は何も考えていなかった。ただ好きで、傍にいたくて。それに明確な期限を告げていた訳でもなかったので、いつの間にかずっと一緒にいられるのだと思っていたのだ。
理由も聞かされず、ただ一方的に告げられた別れを、そう簡単に忘れることなど出来る筈もない。
恨んでくれと言われても、あんなに好きだった…いや、今でも好きな彩音を恨むことも出来ずにいる。
幸村も、友人の桜達も何も知らないと言う。それが本当にしろ嘘にしろ仁王は何も出来ず、ただひたすらにテニスに打ち込んでいた。



そして、関東大会が始まった。



顔触れは中学の時と殆ど変わらず、試合の対戦もそう変わることもなく。
氷帝は準決勝で因縁の青学との対戦となった。手塚は中学卒業と同時にアメリカに行き、元3年生レギュラーの数人はテニスを辞めたり違う高校に進学したりしていて、前3年生レギュラーが揃っている氷帝の戦力が上回った。

そして、高校でも当然、常勝である立海が負けることはなく。
決勝戦は氷帝対立海となった。

試合時間が迫り、コートには人が集まってくる。氷帝、立海共に、部員、ギャラリー、応援団の数では引けを取らず、物凄いことになっている。さらにこれまで戦ってきたライバル達も、気にならない筈はなく観戦に来ている。

立海側にレギュラーメンバーがやってきた。周りの女子が黄色い声を上げて見つめている。彼らは気にすることなく談笑しているが。

そして、氷帝側も騒がしくなり、立海以上の黄色い声が響き渡る。
顔を顰めて見遣る立海メンバーをよそに、人波が割れて、跡部達が姿を現した。レギュラーメンバーの後ろから二人のマネージャーが来て、席にドリンクやタオルを置く。
柳が、ふと気付いた。

「氷帝にはマネージャーが二人いるのだな」

新情報だ、とノートに書き込む手がピタリと止まる。目を見開き、氷帝側を見つめる柳に気付いた丸井が、同じように視線を遣り、固まった。

「……え?」
「丸井君、どうしたのですか?」
「いや…あれ、って」
「……蓬莱だ」

小さく呟いた柳の声は仁王にも届き、彼はハッと顔を上げた。

「彩音…」

会いたくて会いたくて仕方がなかった、彼女がいる。
彩音が顔を上げこちらを見た瞬間、二人の視線が絡まった。



(100126)

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あきゅろす。
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