今日も変わらず地球は回る
:2
料理は瞬く間になくなっていって、私と桜とで作ったケーキもほぼ一瞬でなくなった。
それからゲームをしたり話したりするうちに時間はあっという間に過ぎていき、気付けば外は薄暗くなり……。
「うわー、白いと思ったら雪じゃん!」
「ちょっと積もってねぇ?」
「うわっ寒そうっスね」
「本降りのようだし、そろそろ帰ったほうがいいかもね」
窓の外は白い雪がシンシンと降っていて、街中を覆いつくしそうだ。このまま降り続けば、もしかしたら電車が止まってしまうかもしれない。
カーテンを開けて騒ぐ海里や丸井くん達の様子を見て、精市くんが皆に声を掛けた。
それに皆も頷いて、今日のパーティーはお開きとなった。
「片付け本当にいいの?」
「あるのはコップくらいだし、大丈夫だよ」
「じゃあ次に会うのはもう来年?」
「イタリアに行くのは元旦の飛行機だから、それまでにも会えるよ」
じゃあメールするね、遊ぼうね、海里は勉強もね、なんて話して紅葉達は帰って行った。
「じゃあね彩音、また」
「うん。今日は楽しかったよ」
「俺も」
「蓬莱、騒いですまなかったな」
「大丈夫、大丈夫。皆、気をつけて帰ってね」
「またなー」
「んじゃなー…って仁王は帰んねーのかよぃ?」
雅治は私の横で、さも当然とばかりに皆を見送っていた。
丸井くんの言葉に、ニッと笑った雅治が私の肩を引き寄せた。
「俺は電車乗らんし。おまんらに邪魔されたけぇ、こっからは二人きりでのお楽しみぜよ」
「あーはいはい、それは悪かったなー。じゃあな」
「おう」
「またね」
皆がエレベーターに乗って扉が閉まるのを見て、私たちも部屋に戻った。
雪の降る外は流石に寒く、暖房で暖まった部屋に顔が緩んだ。
なのに雅治は、「あー寒い寒い」と言いながら私をギュウと抱きしめた。
今日は1日中皆と騒いでいたから、雅治と触れ合うのは初めて、かな。
「やっとあったまってきたぜよ」
「部屋は十分暖かいよ?」
「分かっちょるよ」
クツクツと笑いながら絨毯に座ると直ぐにキスが降ってきて、またギュッと抱きしめられて。
何だか、いつもより甘えてるみたい?
「雅治?」
「今日初めてキスできたー」
「雅治って、ば……?」
そっと声を掛けてみれば、少しふざけた声音で返されて。
けど、顔を覗き込んでみると、何か考えるような真剣な顔だったから、思わず言葉に詰まってしまった。
「彩音」
「ん?…どうしたの?」
「好いとうよ」
「うん、私も大好きよ?」
「離しとうないんじゃ…」
雅治は何故か辛そうに顔を歪めて、抱きしめる腕の力を少し強くした。
私の心臓が、ドクンと大きく音を立てた。
「離れとうないんじゃ…」
抱きしめる腕や体全体から、私への想いが伝わってきて、両手でそっと雅治の頬を包み、口づけた。
「彩音…っ」
「雅治……私も同じ気持ち。離れたくないよ…」
まだ中学生の私たちがこんなことして、悪いことなのかなんて、分からない。
でも、私も雅治も、今日は何故か離れたくなくて。
「彩音…彩音…大丈夫か?」
「ん、大丈夫…」
流れる涙を拭って、雅治が気遣ってくれる。
でもいいんだよ。この涙は嬉しいから出てるものだから。
私、本当に雅治が大好きで、今すごく幸せ…。
聖なる夜に、またひとつ、大切な大切な想い出を貰った。
2nd season END
(090910)
[*←]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!