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今日も変わらず地球は回る
選択



学校内、特に三年生の階は受験モードに染まっていた。
殆どの生徒がエスカレーターで高校進学するけれど、だからといって試験がないわけではない。
一般入学よりも多少は緩いけど、立海の試験はそんなに甘くない。
海里が溜め息を零しながら参考書と睨めっこしていた。

そんなある日、家で寛いでいると、テーブルの上の私の携帯が鳴った。
ディスプレイに写された名前を覗き込んだ雅治がむすっとしたのに苦笑して、私は通話ボタンを押した。

「もしもし」
『ああ、元気か?』
「うん、元気だよ。どうしたの?」
『お前に聞きたいことがあってな。お前、高校は立海に行くのか?』
「へ?」

何でそんな当たり前のことを、そう思って一瞬ポカンとしてしまった。

「もちろんそうだよ?なんで?」
『……ふーん…いや、これからのことを考えれば、氷帝を選んでもいいんじゃねぇかと思ってな』
「これからの、こと…」

ツキリと小さく胸が痛んだ。

『ジュリオに会ったって言ってたろ。なら、忘れちゃいねーだろ?』
「…わかってるよ。でもそれはまだ先の話でしょ」
『確かにそうだが、そう先って程じゃねぇのも確かだぜ』
「…いいの。私はこのまま高校に上がる」

はっきりとそう告げれば、景吾くんは『彩音が決めたならもう何も言わねぇよ。聞いておきたかっただけだ。じゃあな』と通話を終わらせた。

会話の内容を思い出し、ぼんやりしてしまっていると、雅治が不機嫌そうに私を睨んでいた。

「つまらん」
「…ごめん。ちょっとしたことだよ…高校どうするかって」
「なん、それ。高校は立海なんじゃろ?」
「そうだよ。でも家のこととか考えると、氷帝のがいいんだけどね」

そうなんか?と首を捻る雅治にぎゅっと抱き着いて、胸に耳を宛てる。
あ、少しだけ鼓動が早くなった。
直ぐに背中に回された腕が私を包み、体いっぱいに幸せが広がる。

「でも私、雅治と一緒にいたいし」
「俺も彩音と一緒におりたいぜよ…けどそんなんで決めてもええんか?」
「それだけじゃないよ。高校までの授業じゃ大して変わらないし、大学に入ってからで構わないもの」

それに、家のことは昔から勉強してるし、私も少しだけ関わった事例もあるんだけど……それは言わなくてもいいよね。

「そうか」
「うん、だから、一緒に高校行こうね」
「ああ」

顔を上げて、軽く唇を重ねた。

この選択に迷いはない。
私はまだ雅治と一緒に歩きたい……。



(090823)

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