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今日も変わらず地球は回る




『彩音!久しぶりだね!』

そう言って、目の合った彼が突然私を抱きしめた。
私は彼を知っている。でも、まさか。

『え、ちょっ…ジュリオ!?どうしてここに!?』

日本では会わないであろう人物に会ったことで、私は軽くパニックしていた。
だから、雅治や皆が唖然と私達のやり取りを見ていても、気を向けることが出来ずにいた。

『ああ、本当に久しぶり…』
『ジュリオ…』

ジュリオが私の右手を取って甲に唇を落としても。
いつものように、それをハグと頬へのキスで返しても。

それは会えばごく自然な行動だから。

「……彩音?」
「!!」

かなり色々な感情の篭った雅治の呼び掛けで、私はここが日本だということを思い出したのだった。

ハッとして周りを見れば、精市くんまでもが驚いた顔をしていて、しまった、と思った時には、私は雅治の腕の中にいた。

「その男は誰じゃ」
「あ、あのね…」
『……日本人てのは野蛮だね』

ジュリオは自分を睨み付ける雅治を気にしない様子で睨み返すと、ふわりと微笑み私に紹介を促した。

『彩音の友達?』
『あ、う、うん。学校の友達…今、修学旅行なの』
『そうなんだ』
「みんな、彼は母方の親戚でジュリオ。こんな所で会うだなんて思わなかったからビックリして…」

皆に向いてジュリオを紹介すると、やっと固まった状態から戻ってくれた。
ジュリオにも皆を紹介して、最後に雅治を紹介した。

『彼とは…付き合ってるの』
『え……本当に!?』
『うん』
『……へぇ、そう。でもちゃんと分かってるの?』

一瞬驚いたジュリオは、直ぐに真剣な表情で私を見つめた。

『いいの』

そう言って笑って見せると、ジュリオは少しだけ眉を寄せた。

『…そうか。ああ、そういえば…』
『ジュリオー、これどっちがいいかしら?』
『え…?』

ジュリオが言いかけたのを遮って、第三者の声が彼を呼んだ。
この声、まさか…!

『お祖母様…?』

ジュリオの後ろから現れた年配の女性。
私のお祖母様だった。

『お祖母様!』
『まぁ、彩音!!』

私は思わずお祖母様に抱き着いていた。
まさか日本で会えるなんて!
夏に会えなかったせいか懐かしさも大きくて、あまりの嬉しさに少しだけ瞳が潤んだ。

『夏に会えなくて寂しかったわ。彩音、顔を見せて』
『お祖母様…』

イタリアに暮らす母方の祖父母には休み毎にしか会えないから、今日ここで会えた事は奇跡のよう。
ぎゅうと抱きしめると、『少し苦しいわ』と柔らかな声がした。

『ごめんなさい』
『ふふっ、いいのよ。何故か急に京都に来たくなってね。もしかしたら神様が彩音に逢わせてくれる為だったのかしらね』
『修学旅行なの。実はイタリアも選択出来たんだけど…もしイタリアだったら会えなかったのね』

だから私は知らなかった。

「彩音がお世話になってるね」
「…日本語出来るんか」
「クスッ…もちろん。今の彩音にケイゴ以外の友達がいるなんて驚いたけど…じゃあ君達は彩音の過去を知ってるんだね?」
「ああ」
「……。そうか……ニオウ、だったかい?……せいぜい今を楽しんでおくといい」
「…どういう意味じゃ」
「そのままの意味さ」

雅治とジュリオが険悪な雰囲気でそんな会話をしていたなんて。

『ジュリオ!』
『彩音、話は出来た?』
『うん。私達そろそろ行かなきゃ。また冬に会いましょう』
『ああ。……ねぇ彩音、本当に、冬に会うのを楽しみにしてるよ』
『…ジュリオ…?』

そうして、意味深な笑みと右手の甲への口づけを残してジュリオはお祖母様と行ってしまった。

なんだろう……あの笑み……。

「……あの、ごめんねみんな」

気にはなるけど、考えても分からないから仕方ない。
私はみんなに向いて、行こうと促した。



(090729)

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