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今日も変わらず地球は回る




学校に着くと雪奈と桜がいて、私に気付くと軽く手を挙げた。

「おっはよー、彩音!」
「おはよう彩音」
「おはよう」

2人が昨日の雅治のように私の持つ荷物を見て言う。

「彩音、荷物少ないのね」
「…そうなのかな?昨日雅治にも言われたよ」
「あたしなんかめちゃくちゃ重いのに!」
「桜…何入ってるのそれ?」

必要な物はちゃんと入っているんだけどなぁと思いつつ、パンパンになっている桜のバッグを見て苦笑すると、雅治を視界に捉えて顔を向けた。

「雅治おはよう」
「おはようさん」

まだ眠いのか、欠伸を噛み殺しながら肩から下げた荷物を抱え直す。
そこに精市くん達や海里と紅葉も来て、私の周りはすごく賑やかになった。
テニス部元レギュラーは、集まると引退しても近寄りがたいようで私たちを取り巻くように輪が出来ていた。

「(ドキドキしてきた…)」

景吾くん達と行く旅行とは違う、この雰囲気。
海原祭の時のような感じかな。

「どうした彩音、嬉しそうじゃな」

大分顔に出てるらしく、雅治が笑いながら尋ねてきた。

「楽しみでなんだかドキドキしてきちゃっ…わ!」
「まったく、可愛すぎるぜよー」

答えるなり雅治に抱きしめられて、周りが少しざわついた。
途端に海里の鋭い声が飛ぶ。

「こらそこ!アタシの彩音にセクハラするなっ!」
「バカじゃのう。付き合うとるんにセクハラなんか言わん。それにお前さんのじゃなか言うちょるじゃろ」
「こ、このペテン師!!」
「おー、褒めてくれてすまんのう」

また始まった…。
何故か雅治と海里は近付けばこんな調子なんだよね。犬猿、とでもいう感じ?
ただ、海里が雅治に勝ったことはないけど。

雅治に抱きしめられたまま、そんなやり取りを見ていると、先生の集合を告げる声がした。

バスで駅まで移動した私たちは新幹線に乗り込んだ。
棚に荷物を置いて席に着くと、列車は滑るように走り出し駅を後にした。



「3時間もすれば着いちゃうんだよね?」
「今日は全員で行動だね」

桜がしおりを見ながら確認すると、紅葉が私の髪を弄り始めた。
紅葉は美容師になるのが夢らしくて、ほぼ毎日、私は紅葉のスタイリングの練習台となっていた。

「はい完成!彩音の髪は弄り甲斐があっていいわ〜」
「すごい紅葉!彩音可愛い〜!!」
「ありがと、紅葉」

鏡で見てみると、ホントに可愛くしてくれていた。
こういうのは自分では出来ないから、かなり嬉しい。

「練習台になってくれるんだもん。こっちこそありがと!…よし、じゃあウノでもしようよ」
「あ、いいね」
「負けたら罰ゲームね〜」

そうしてウノとかトランプとかしたり、精市くん達が遊びに来たりして、新幹線での長い移動時間は全く退屈することなく過ぎていき、あっという間に京都に到着した。

だけど、この古き都でまさかの出会いがあるとは、この時の私が知るはずもないのであった。



(090529)

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