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今日も変わらず地球は回る




「……で、結局みんな京都なのね」
「やっぱり思い出作りは大事だよ!」
「そうそう!」

両腕を桜と海里にホールドされながら、体育の授業の為に更衣室へ向かう途中のこと。
桜達4人も私と同じ京都に決めてくれて、今度一緒に買い物に行こうと話していた。

「でも本当に京都で良かったの?」
「何言ってるの?イタリアくらいいつか行けるわ。それより皆で行くことの方が大切よ」
「楽しみだね!」

雪奈と紅葉がそう言って微笑んだ。
私も「そうだね」と笑って返した。
イタリアにも、いつか4人と一緒に行けたらいいな。

それから班を決めたり下調べをしたり買い物に行ったりで日々は過ぎ、あっという間に修学旅行前日となった。

学校が終わり、私の家で雅治は寛いでいて、その横で私は荷物を詰めている。

「案外少ないのう」
「そうかな?…あ、旅慣れてるからかな」
「ああ、彩音はイタリアによく行くんじゃったか」
「うん」

雅治が、雑誌を開きながら私の荷物を見て呟いた。

「お祖父様とお祖母様がいらっしゃるから、大きな休み毎に必ず会いに行くの」
「ほう…イタリアのどこなんじゃ?」
「ヴェネツィアよ。水の都。とっても素敵な街」

いつか一緒に行けたら……なんて、叶うはずのない願いを心の中で呟く。

「そんなにいい所ならいつか行ってみたいのぅ」
「…っ…い、いつかは行けるんじゃないかな?」

一瞬、返す言葉に詰まった。かろうじて返した私に、雅治は少しだけ不思議そうな顔をしただけで何も言わなかった。

「さーて、名残惜しいが明日は早いしそろそろ帰るか」
「うん…また明日ね」
「ああ、また明日……彩音、好いとうよ」

帰り際、雅治はいつも「好き」という言葉とキスをくれる。
言われ慣れてしまうと飽きると言う人もいるかもしれないけど、私はそんなことない。
その証拠にいつもドキドキしてしまう。

「うん…ありがとう雅治。大好き」

すごくすごく大好きだよ。

雅治が帰ると、途端に家が広く感じる。
点いていたテレビの音だけがやけに煩い気がした。

いつもなら少しだけ物悲しい気分になるけど、今日は明日からの数日が楽しみなおかげでワクワクしながら眠りにつけた。



(090518)

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