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今日も変わらず地球は回る
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橋の上で俯く彩音の姿を、追いかけて来ていたジュリオが見つめていた。
本当は今すぐその背中を包み込みたいと思っているのだが、ジュリオは足が出なかった。

二人が初めて出会ったのは彩音が生まれた日。
5歳年下の彩音は、もちろん初めは妹のような存在で、ジュリオはいつも後ろをついて来る彼女を可愛がっていた。

婚約の正式な発表までは二人とも自由であるという約束もあり、これまでに恋をしたことなど何度もあるが、どれも長く続くことはなかった。
しかしある時、イタリアに帰って来た彩音に会って、その理由が分かった。

彩音が好きだからなのだと。
婚約者であるその前に彩音が好きなのだと気付いてから、他の女性に気が向くことはなくなった。
けれど、彩音はジュリオを家族以上には見ていなかった。決められた婚約者だと知っていても。

それでも、ジュリオは時間を掛けてでも彩音と気持ちを育むつもりでいた。
彩音もそのつもりでいただろう。しかし。

今、見つめている背中からは、日本のあの男への想いが溢れている。
きっと、一生、彩音の自分への気持ちが恋や愛に変わることはない、とジュリオは気付いた。

『それでも僕は…』

そっと彩音に近付いたジュリオは、持ってきたコートを彼女に掛けてやった。
振り向いた彩音の目は赤くなっていて、まだ潤んでいた。

『ジュリオ…』
『僕は、君が誰を想っていても君を幸せにするよ』

取った手を包み込み微笑むジュリオに、彩音は目を伏せた。

『たとえこういう形でも、君が手に入るのが僕は嬉しいんだ。君が、好きだから』

軽く引き寄せられ抱きしめられると、体は温かくなった。
けれど彩音の心の中は、仁王とジュリオ、二人への申し訳なさでいっぱいだった。

別れを告げなくてはならない仁王への罪悪感。きっと傷つけることになる。覚悟している筈なのに、好きになりすぎたから。

彩音は、ジュリオのことは好きだ。しかし、それはやはり家族、身内としての感情であり、仁王というかけがえのない存在を知ってしまった今、その感情が異性としてのものへと変わることはないと、彩音自身も気付いていた。

『…私、ジュリオのこと好きよ』
『うん。…幸せにするよ』
『……うん』

ジュリオの温かさに包まれながらも、彩音は仁王のことを想っていた。



(091021)

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