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今日も変わらず地球は回る
初デート



待ち合わせの時間まであと10分。
放課後デートはしてたけど、ちゃんとしたデートは今日が初めて。
嬉しくて少し早く着いてしまった駅前で、私は仁王くんが来るのを待っていた。
道行く人がチラチラ私を見ていく。そんな相変わらずの視線は全然気にならない。

「ね、君一人?良かったら俺らと遊ばない?」

いきなり大学生くらいの男の人2人に話し掛けられた。
ナンパかぁ…ハァ。
見て分からないのかなぁ。

「人と待ち合わせしてるので結構です」

そう言って一度場所を変えようとしたけれど、一人の人が行く手を遮った。
しつこいなぁ。ムッとして思わず眉を寄せる。

「待ち合わせって友達?」
「だったらその娘も一緒にどう?」
「違います。友達じゃありません」

キツイ口調でそう答えた時、知ってる声がした。

「しつこい女は嫌われるぜよ」
「だって君カッコイイんだもん」
「待ち合わせって友達?」
「違うぜよ。彩音、おはようさん」
「おはよう仁王くん」

女の人と話しながら、私の前に仁王くんがやって来た。どうやら仁王くんは逆ナンされてたみたい。

「…俺の彼女に何しとる?」
「あの、彼に何か用ですか?」

私たちは互いに話し掛けていた相手を見て(仁王くんは睨んで)言った。
その人達は、それぞれの待ち合わせ相手である私たちを確認すると、バツが悪そうにそそくさと逃げて行った。

2人で顔を見合わせて、あまりに可笑しくて笑えてしまった。

「今度から迎えに行くぜよ。毎回こんなんは敵わんからの」

彩音が無事で良かった、と頭を撫でられて、待っている間に落ち着かせていた胸がドキドキし始めた。
景吾くんや精市くんにされても何とも思わないのに、仁王くんにされるとすごくドキドキするんだよね…。

「んじゃ行くかの」
「そうだね」

ほれ、と差し出された手に自分の手を重ねると、キュッと握られ歩き始めた。



特にどこかに行こうという話はしてなかったけど、仁王くんは迷うことなく2人分の切符を買い電車に乗り込んだ。

「仁王くん、切符代…」
「デートで女に金出させるような男はいかんぜよ」

そう言って、結局仁王くんは最後まで私に財布を出させることはしなかった。

しばらく電車に揺られて、着いたのはデートの定番スポットである海が目の前にある公園。
仁王くんが定番スポットに来るなんて…。

「…似合わんか?」
「ちょっと意外…て、あはは…顔に出た?」
「思いきり」
「いたっ」
「ククッ…」

ピンと額を小突かれ、摩りながら歩き出す。
秋晴れの暖かな日曜だからか、人手はかなり多い。
カップルもいれば、家族連れもいて。
私たちもちゃんと付き合ってるように見えてるかな?

「…どうした?」
「ん?…何でもないよ?」
「そういう顔はしとらんぜよ。つらまんか?」

心配そうな顔で私を見つめる仁王くんに笑顔を見せて、繋いだ手に少し力を込める。

「私ね、誰かを好きになるなんてこと考えもしなかったの。ましてや付き合うなんて…。でも今、私幸せだよ。今日のデートも嬉しくてしょうがないの」
「彩音…お前さん」

過去を知っても付き合おうと言ってくれたあなたがとても好き。
この恋を一生一度のものとしようとしている私の気持ちはきっと重い。
でも今は受け止めて欲しい。

「大好きだよ、雅治」

付き合い始めて1週間、何だか気恥ずかしくてずっと呼べなかったんだけど。
すごくドキドキしてるけど、それはとても心地良い。

「はぁ〜…やっと呼べたぁー」

大きく息を吐くと、雅治にギュウと抱きしめられた。

「お前さんはなんちゅう可愛いことをしてくれるんじゃ」

ニッコリ笑った雅治が私を見つめた。

「のう彩音、俺も嬉しくてしょうがないぜよ」

そう言った雅治が再び私の手を引いた。

「今日は思いきり楽しむぜよ」
「うん!」

それから私たちは、言葉通りデートを楽しんだ。
初めてのデートは私にとって一生の宝物になると思った。





(09.03.25)

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あきゅろす。
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