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今日も変わらず地球は回る
心機一転?


一体、どういう心境の変化なのだろうか?



《心機一転?》



前回あれだけ言ったのだから、仁王君もさすがに今回は来てくれるだろう…と思う。
来なかったら本当に真田君に頼むしかないな。幸い、彼とは去年同じクラスだったし、面識はある。ちなみに部長の幸村君とは1年の時同じクラスだったしね。

そんなことを考えながら図書室のカウンター内で仕事に取り掛かろうとすると、扉が開いた。

――やっと来た。
手間掛けさせやがって、という言葉を飲み込んで(言葉悪くてごめんなさい。この口調は景吾くんのせいだ)入って来た彼――仁王君を一瞥した。

「今日は来てくれたんですね」
「ま、あれだけ言われたし、真田に言われるのは勘弁したいからの」

面倒そうにカウンターにやって来た仁王君は、ドッカリと腰掛けた。

「で、俺は何をすればいいんじゃ?」
「カードの整理でいいですよ。そこに座ってるだけですから」
「あんたは?」
「私は本を棚に戻してきます」
「ふーん」

そうして、私達はお互いに一言も話さず、仕事を始めて20分ほど経った頃。

「いたいた!もうっ、仁王くんってばこんなとこにいたのぉ?部活にいないからさがしたよぅ?」

甘ったるい声音で仁王君のファン…というより自称・彼女、という感じの女の子が図書室に入って来た。

「なんじゃ、お前か。今日は委員があっての」
「じゃあ、終わるまで待ってるぅ」

そして勝手にカウンターに入り、仁王君にくっついた。
ベラベラと、一人で勝手に話し掛け、納得している女。
…激しく邪魔です。煩いし。
何故か今日の図書室には人がいなくて、私以外(仁王君はわからない)に迷惑を感じている人はいないんだけど、でもやっぱり図書室はそういう場所じゃない。

「あの、図書室では静かにしてもらえませんか?」
「何、この人?」
「あぁ、うちのクラスの委員じゃ」
「ふーん」

ふーん、じゃないよこの馬鹿女ー!!
女見る目ないな、仁王君って。

「仁王君の彼女ですか?イチャつくのは結構ですけど、それなら余所でしていただけませんか?幸い、今日はもう誰も来ないようですし、仁王君ももう結構ですよ」
「話分かるじゃなーい」
「あんたは帰らんのか?」
「まだ片付いてませんからね。あぁ、そこに積んである本だけ準備室に置いておいてもらえませんか?処分する本なので」

私は今自分が抱えている本と同じくらいの山を指しそう言ってから、また棚の方へ移動した。
仕事しないならいてもらっても仕方がない。私も一人のほうがやりやすいしね。

「んじゃ、そうさせてもらうかの………ん?」

本を準備室に置いて戻った仁王君は、何を思ったか私に近付いてきた。

「におーくん?」
「んー、今日は気が向いたから仕事するき、お前は帰りな」
「え〜!」
「我儘言うなら別れるけど?」
「えっ!?…分かった…じゃあまた明日ね」

仁王君の突然の言葉に怯んだその子は、仕方なさそうに図書室から出て行った。

「我儘言わんでも別れるけどな、あんな馬鹿女」

そう小さく呟いたのを私は聞き逃さなかった。でも敢えて黙っておく。
それにしても…

「帰らないのですか?」
「ま、一応委員やき。ところでお前さん、よくそんなにたくさん持てるのう…重くないんか?」
「…別にそれほどでもないですけど」
「ホントに?」
「本当ですよ」

どうも納得はしてなさそう。でも本当に重くはないし。

「まぁいいけど。本は俺が戻すき、あんたカウンターの中で座っておきんしゃい」
「は?…どうして」
「いいからいいから」

そう言うと、仁王君は私の手から本を取っていった。本は思ったより重かったらしく「ホンマに重くなかったんかのぅ」と呟いていた。
私はカウンターに入って座っていたけど、はっきり言ってやることはない。仁王君は黙々と本を戻していた。

(何なのよ、一体)

そうこうするうちに、仁王君が持っていた本の山はいつの間にか小さくなっていた。
ふと見ると、戻し忘れの本があるのに気付いて、私はそれを持って棚へと向かった。

(うわ、よりにもよって同じ棚…)

最後の本を戻した仁王君が私に近付く。

(私に構うなー!!)

「のぅ」
「…何ですか?」
「今気付いたんじゃが、他のヤツは?」
「…一人は部活でどうしても来られないそうで、もう一人は…仁王君がいないから、じゃないですか?」
「俺のせいかの?」
「それは分かりませんが」

心外な、とでも言いたげな溜め息を吐くと、仁王君は私の持っていた本をヒョイと取り上げ、棚に戻した。

「今日も俺が来んだら一人で仕事しとったわけじゃろ?」
「そういうことになりますね」
「……」

私達は何故棚の間という狭い空間で話しているのだろう?いつまでもここにいてもしょうがないし、私はこの棚の群れから抜け出そうと仁王君に背を向けた。

「すまんかった」

突然投げられた謝罪の言葉に、私の足は止まった。少しの不信感を持ちながら振り返る。

「お前さんに任せきりにしてすまんかった。図書委員て結構大変なんじゃな。次からはちゃんと出るき、すまんかったな」

私は思わず言葉を失ってポカンとしてしまった。逆光眼鏡で良かったと思う、と同時に口元に笑みが浮かんだ。

「…分かってくれればいいですよ。ですが、仁王君はテニス部の大会が近いのでしょう?無理はなさらなくても結構です」
「じゃが、それではお前さんが大変じゃろ」
「…なら、30分だけで結構ですから、次からは来て貰えますか?」
「あぁ、約束する」

仁王君は本当に悪いと思っているらしく、態度からも真剣さが伺えた。

(…へぇ…少し見直したかも)

「じゃあ、次からよろしくお願いします。もう閉館時間ですし、仁王君は部活に行ってくれて構いませんよ」
「そうか?じゃ、悪いが先に行くぜよ」
「えぇ、どうぞ。頑張って下さい」

鞄とテニスバッグを抱えて図書室を出る仁王君を見て、私も自分の荷物を手に取った。



(仁王君は意外に優しいと思うのです…仁王の口調が難しい…!てか、名前変換がない…!!)

(06.10.16)


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あきゅろす。
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