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今日も変わらず地球は回る
サボリ魔


こんなことだろうと思いましたよ!!



《サボリ魔》



委員会のあったその日、私は心に決めた通り親友の蓮華に電話した。
彼女は東京の私立中学に通う私の幼馴染みです。

「…そんなわけで、今年1年間の平穏がたまらなく揺らいでいるのよ…」
『…なるほど、仁王くんかぁー…解る気がする…うちで言えば侑士属性だよねー』
「そうかなぁ?どっちかと言えば景吾くんじゃない?」
『あー、色気とかはそうかも。2人とも黒子あるし!』

彼女は1年の時から男子テニス部のマネージャーだから、うちのテニス部の人くらい知っている。共に全国に出てるわけだし。話に出てきた侑士くんも景吾くんもそのテニス部の人。
笑って言う蓮華に、電話のこちら側で盛大に溜め息を吐いた。

『これからちょっと大変そうだねぇ…この際、本当の自分、出しちゃえば?』
「ぜーーーったい、嫌!!」
『……ふぅ……勿体ないなぁ…彩音も…立海の人たちも。こんなに可愛くてイイ子が近くにいるのに気付かないなんて』
「……私は…可愛くもイイ子でもないよ…私よりも蓮華のほうが…」
『ばか!もう、いつまでそんなこと言うかな!私より彩音のほうが可愛いの!!』

ば、ばかって…。
蓮華の勢いに押されて、取りあえず「…わかりました」と答えておく。

『分かればいいのよ』
「はぁーい…」
『ま、とにかく頑張れとしか言えないけど。また今度遊ぼうね』
「何とか頑張るわ…うん、部活休みの日教えてね。おやすみ」
『おやすみ〜』

ピッ、と電話を切ってベッドに突っ伏し、今日の委員会のことを思い出した。



図書室に入ると、すでに集まっていた人たちの視線を一身に受けた。(仁王君が)
ここでもやっぱり女子が騒いだ。
当番は2週間に一度。当然、仁王君と同じ担当になりたがる子はたくさんいたけれど、混乱を避けるため、先生によって勝手に決められてしまった。先生もテニス部の人気は知るところ。
そんなわけで、普通に1年A組から順番に、と。
うちのクラスと同じ担当になれた隣のクラスの女の子はすごく喜んでいた。
しかし、仁王君てそんなにイイ男かねぇ?胡散臭さ満載だと思うんだけど!
蓮華に言えば『彩音が美形を見慣れすぎてるんだよ』って返されそうだな。
確かにそうなんですけどね。

「あー!もうイヤー!」

くそう!あの詐欺師めー!!
…と、まだ何にもされてないけど仁王君に当たっておいた。



私達の担当は、第2と第4木曜日の昼休みと放課後。
今日はその担当日。
何となく、何かありそうだったから、仁王君に確認しておく事にした。
話し掛けるのはあれ以来だ。つまり2週間ぶりくらい。
仁王君が席に着いたところへすかさず声を掛けた。

「仁王君」
「……蓬莱さん、じゃったか?」
「(聞くなよ、クラスメートだろ!)……今日、昼休みと放課後、委員会あるから忘れないで下さい」
「ハイハイ、わかっちょるよ」

私は確認して、返事は聞いた。よし。

そして昼休み。

「来ない…」

やっぱりね。柳生君と一緒に教室を出て行ったから、テニス部の面々で昼食を摂るのだろうとは思ったけど。
予想通りだから構わない。

「あの、仁王君は…?」
「…さぁ…忘れてるのかも」
「そっか…」

同じ担当になった女の子はとても残念そうに呟いた。
フン!どうせサボリでしょうよ!
この分だと放課後も…



「来ない…か」

チッ…心の中で舌打ち。
しかも、他の子達も来ないってどうよ?
どうせ仁王君は来ないと知って自分達も来ないんだろうね。
一人の男子は部活だって聞いたけど。
ここは天下の立海大付属ですよ。テニス部に限らず全国区の部はありますからね、仕方ないですよ。
でもさぁ。

「普通、委員会を優先すべきじゃないですか?」

誰に言うわけでもなく、私は返却済みの本を棚に戻す。
図書室の利用者は多く、たくさんの返却本がある。私は2年もやっていただけあって、戻すのも慣れているけれど、その間にも借りたり返したりする人がいるから、一人では思う様には捗らない。やっぱり人手は必要だ。
結局、全部の本を戻すことは出来なかった。

「次は大丈夫なんだろうか…」

大丈夫ではないと思うけど!

次の日、来なかった理由を聞くと『あぁすまん、忘れとった』と飄々と答えやがりました。
嘘吐け、この詐欺師…!平静を装い「次はちゃんと来て下さいね」と言っておいたけど、どうだか…



そして2回目の担当日。一応、また朝に確認したけど、やっぱり。

「来ねぇ…」

あ、しまった。景吾くんみたいな口調になっちゃった!誰もいなくて良かった!
もう一人の男子はやっぱり部活で来れないらしい。大会が近いんだそうだ。
そりゃ、テニス部も確か大会が近かったはずだけどさ。

「どいつもこいつも…!」

部活だと言えば許されると思うなよ…!
普通の女子ならちょっと持てないくらいの本の山を軽々と持ち上げた。(腕力には自信ありなので)
今日は意地でも全部片付けてやる!!



2度あることは3度あると思うな。
私は次の日、仁王君に人気のない所で話し掛けた。
人がいるとちょっと嫌だから。噂されそう。

「委員、昨日も来なかったですね」
「あー…部活があってのぅ」
「それなら前もって言って欲しいんですけど」
「それはすまんな。んじゃ言っとく。『部活があるから委員には出れん』…これでよか?」

……ざけんなよ。(心の声)

「…それで許されると思ってるんですか?」
「…なんじゃと?」
「部活動も委員会活動もどちらも学校生活のひとつなんです。あなたは委員になったからにはそれを務める義務と責任があるのでは?そういう言葉は一度でも委員に出てから言ってください。次、来なければそちらの副部長さんにお願いすることにしますので」

無表情で(心の中は鬼の形相で)某ドラマばりの長台詞を言い切った後、予鈴が鳴る中教室へと戻った。

次の授業に仁王君はいなかった。



(友達はあの有名中学校。名前呼びする彼らとの関係が気になるところ?)

(06.10.05)


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あきゅろす。
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