[携帯モード] [URL送信]

今日も変わらず地球は回る
始まり



私の生活は、一人の男によって180度変えられてしまった。



今日も変わらず地球は回る



《始まり》



友人の蓮華によく言われる。
『彩音は人生損してる!』と。
『本当は綺麗なのに勿体ない』とも。

「別に、本当の私を見てくれる人がいるから、他人にどう思われようと構わないの」

笑ってそう言ったら、蓮華は私をギュッと抱き締めてくれた。

『私が…私達がいるから…!』

――ありがとう、蓮華。



私、蓬莱彩音はこの立海大付属中学に入ってから2年、素晴らしい『普通の生徒』として過ごしてきた。
むしろ、普通より少し地味めに。とにかく目立つことはせずに。
眼鏡に三つ編み…これだけでも地味だし、勉強一筋っぽい感じで大人しい印象を与える。成績がいい優等生。
そうして2年間、何の問題もなく普通に過ごして3年になった。
あと1年、目立たないように…。

――と、思っていたのですが。
このままだとその計画が潰れそう…いや、もう潰れました…ていうか、潰されました。

クラスメートの仁王雅治によって。



事の発端は始業式の日。クラスで係を決める事になりました。私は1年の時からやっている図書委員が希望。皆がいろんな委員に手を挙げる。私も希望の図書委員になれて、ちょっとホッとしていた。

「あれ?えーと、誰か委員になってない人いませんかー?」

クラス委員長が数を数えて一人足りない、と呟いた。
その時、今まで伏せて寝ていた銀髪の男子がムクリと頭を上げた。

「あー…もしかして、俺かの?」

何人かの女子が「キャー」と小さく声を上げた。
それも無理はない。その男子はこの立海大付属で知らない人はいない(はず)の男―男子テニス部所属、仁王雅治だった。
私も名前と顔くらいは知っている。あまりに有名すぎるから…まぁ、あくまで名前と顔だけだけど。
ちなみに女子が騒いでいるのは彼が『カッコいい』部類に入るから。私にとっては普通なんだけど。

「じゃあ余ってるヤツでよか…何、俺の委員?」
「えーと、図書委員です」
「…ふーん」

そう言ってまた伏せて寝てしまった仁王君は私のような目立たない女とは違って、中3のくせに女の噂も絶えない目立ち過ぎの人。

(関わりたくない…)

と思ってハッとした。
ちょっと待って…彼は何の委員になったって…?

答『図書委員』

これから1年、この人と同じ委員!?そんな馬鹿な!!

「全委員、今日は委員会があるので必ず出席するように」

担任の話が終わり、クラスがざわめき立つ。
仁王君と委員になってしまった私を、クラスメートの女子が噂する。

「いいなぁあの子…仁王くんと同じ委員なんて」
「ホント…代わって欲しいなぁ…」
「…ていうか、あの子何て名前だっけ?」
「確か…蓬莱さんだったかな」
「ふーん」

仁王君と同じでいいなぁ、ですって!?
全く良くない!!代われるものなら代わって欲しい!もうすでに噂にされてるじゃない!
でも折角なれた図書委員を手放すのもイヤだ。(つまり意地)

クラスの皆が委員会に行くために教室を出て行く。
私は仕方なく、仁王君に話し掛けた。

「あの、仁王君…委員会なんだけど…」
「……」

まさか、寝てるの!?

「仁王君」
「……」

どうしよう…今日の委員会は全員出席しなきゃいけないのに。
本当の私なら、ここで「起きろ!」と怒声のひとつでも浴びせるところだけれど、この学校での私は優等生…そんなこと出来やしない。
困ったな…。
眠る仁王君の横で立ちすくんでいると、助け船が入った。

「仁王君、いい加減にしたらどうですか?」
「……」
「仁王君」
「…ハイハイ、分かったぜよ」

強めの口調で呼ばれた仁王君がのっそりと身体を起こした。

「蓬莱さんが困っていますよ」
「…蓬莱?」

仁王君は私を一瞥して「…誰?」と呟いた。

「同じ図書委員の蓬莱です。もうすぐ委員会だから」
「……仕方ないのぅ」

仁王君は本当に仕方なさそうに立ち上がって「んじゃ、行くかの」と呟いた。

「柳生君、ありがとう」
「いいえ。お気になさらず」

噂通り柳生君は本当に紳士なんですね。ありがたい。このクラスで唯一仁王君を動かせる人だと思う。同じクラスになってくれて良かった。

なんてことを思いながら廊下に出た。
廊下には生徒達が溢れ返っていて、私と仁王君が一緒に歩いていることに不思議がり、噂する。

「(仁王くんだー!カッコいいねー…ねぇ、あの横の女だれ?)」
「(知らなーい。何であんな地味な女が仁王くんの横にいるのよ)」
「(きっとただ委員が一緒なだけだよ。じゃなきゃあんな地味な女、仁王くんが相手にするわけないじゃない)」
「(だよねー!)」

しっかり聞こえてますが!?地味な女で悪かったわね!そんなに何回も言う必要ないでしょうが!!
もう、どうしてこんなことに…!
あぁ、腹立たしい!!
横の仁王君はその噂を聞いてかクツクツと笑っている。
ムカつくー!!

図書室への道がヒドく遠く感じた。
それもこれも、全てコイツのせいだ!!

今日は蓮華に愚痴を聞いて貰おう、と心に決めた。



(仁王夢と言いながら、仁王と甘く絡むのは遥か遥か先の話。しばらく糖度ほとんどなしで進みます…。一応は逆ハーぎみになっていく予定です…が、それもまたしばらく先の話だったり)

(06.10.05)


[→#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!