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中編小説
14
ふと気が付くと、目の前から真田が消えていた

「おい。真田…、さっきまでここにいた奴がどこに行ったか知らないか?」

先ほど、俺が仕事を頼んだ部下を振り返ってみると

「あっ、少々お待ち下さい。……はい?何か言いましたか?」

と、彼はまだ電話中だったようで、電話の口元を押さえて聞いてきた

「いや…。何でもない。悪かった」

それだけ言い残して、外へと歩みを進めた
もし、真田がまだ居れば車があるはずだ…と
しかし、そこに車はなかった
俺はホッとして、政宗様の葬儀の手配などに集中することにした



その時の小十郎は政宗の死に酷く動揺し、冷静な判断が出来ていなかった
“幸村は車の免許を持っていない”
いつも、政宗が幸村を迎えに来るものだから、幸村が外へ出るときはすでに車が来ているが、その前まで車はない

まして、政宗が居ない今、車が止まっている訳がないのだ



その事に気付いたのは、もう日が落ちた頃だった

『お掛けになった電話は、電波の届かない所にあるか、電源が入っていないため、掛かりません』

「くそっ!!」

俺は今日の朝まではしっかりと拘束した殺人鬼が居た部屋に佇んで、壁に携帯を投げつけた


俺が気付いて駆けつけた時には、すでにもぬけの殻だった…



「はぁ…はぁ…小十郎…」

「政宗様!?どうかなさいましたか!?」

「いいから…はぁ…、黙って聞け…。俺は…、もう…幸を守ってやれ、ねぇ…。幸を…幸を…守ってやってくれ…」

「政宗さ…」

「あいつ…、意外と寂しがり屋なんだ…。だから…、ッ…こまめに連絡してやって…くれよ…」

「今どちらにいらっしゃるのですか!?すぐ向かいますから!!」

「小十郎…。今まで…無理ばっかり言って…悪かったな…」

「何を言っていらっしゃるのですか!!縁起でもない!!」

「それと…奴に…気をつけてくれ…」

「奴…?奴とは誰ですか!?」

「幸を…狙って…」

プッ…ツーツー

「政宗様!?政宗様!?」



政宗様の元へ辿り着く数時間前の、政宗様との最後の会話だった

その後、すぐに携帯の場所を逆探知して見つけたが、既に遅く
政宗様は亡くなってしまっていた

俺にとって政宗様は、唯一無二の存在で
本当に特別な方だった
誰よりも深い愛情を注いでいた

そんな大切な方からの最後の頼みだったと言うのに…


殺人鬼が消えたのと同時に、真田との連絡が一切取れなくなった

家を捜索しても、その後、その家へ出入りする事はなかった

俺は政宗様どころか、政宗様から頼まれた真田すらも守れなかったのだ…


俺に残されたものは何も無くなった

俺は殺人鬼を逃がしてしまった事の責任を取り辞職し、その後、行方を眩ました…



生きているかわからない、大切な友人を捜す為に…

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あきゅろす。
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