中編小説 12 先ほどの刑事さんにもう一度詳しく聞こうと探していると、先ほどの刑事さんと誰かが話しているのが見えた よく目を凝らすと、見たことのある背中だ 「小十郎さん!!」 そう呼ぶと、こちらを振り返って、小十郎さんが目を見開いた 「真田!?なんでここに…!?」 「今日も佐助に会いに来ると約束していたので…。それより、…何か…あったんですか…?」 先ほど話した時はのんびりとしていた刑事が、小十郎さんと話し終わった途端、急に慌ただしくなる どこかに電話をしているようだ 嫌な予感しかしない 嫌な雰囲気が漂っている 本当は聞きたくない 先ほどの彼との会話で、なんとなく想像がついているから ただ、小十郎さんに『そんな事ない』と否定してもらいたくて、わざと聞いてみた 『大丈夫だ』と安心させてほしかったから なのに、小十郎さんから返ってきた言葉は、某の望んでいたものではなかった 「真田…。よく…聞いてくれ…。政宗様が…、何者かに襲われて………亡くなった。…さっき、政宗様から電話が来て…急いで行ったんだが…、俺が駆け付けた頃には…もう…」 小十郎さんは顔を歪めて俯き、そのまま黙ってしまったきっと、泣くのを我慢しているんだろう 小十郎さんはまだ、仕事中だから… 小十郎さんにとって、政宗殿は大切な人だったのだ 何があったのか詳しくは知らないが、政宗殿が良く言っていた 『小十郎だけは信頼出来る』と… それは、小十郎さんにとっても同じだろう 2人は強い…何か絆で結ばれていた …そんな気がする 2人はお互いが特別な存在だったのかもしれない なのに… 某が佐助に出逢って言ってしまった言葉によって、政宗殿の命があっさりと奪われてしまった 2人の仲を裂いてしまった 幸せな時間を…壊してしまった 某の目から涙は出なかった 小十郎さんが泣いていないのに、某が泣く訳にもいかなかったし 何より、これからどうするかを考えると涙は出なかった 某は酷い罪悪感に襲われながらも、某に出来る精一杯の事を考えた 某に出来ること… それは… ある決意を固めると、某は、キュッと踵を返し、走ってきた道をもう一度、音もなく走り出した [*前へ][次へ#] [戻る] |