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中編小説

「して、佐助。佐助は何故人殺しをしたのだ?」

「それが俺様の仕事だから。それだけだよ」

「人を殺して…何とも思わぬのか…?」

「思わないね。だって俺様、人嫌いだもん」

彼はにっこり笑う
その笑みに、背筋がぞくりとした
そんな某をよそに、彼は笑顔のまま続ける

「旦那はきっと人の『本当の姿』を知らないんだ。人って凄く醜くて汚いんだよ?自分が良ければ後はどうだっていいんだ。裏切りなんて日常茶飯事。だからみんな俺様みたいな人殺しに罪をなすりつけて殺させるんだ。自分の嫌いな奴。自分を裏切った奴。自分を出し抜いた奴…。そんな奴らを殺して…殺して…殺して殺して!!そう頼むんだ。だから、俺様はそんな奴らの言うことを聞くだけ。自分が生きていくために。だって…俺様が他に生きていける場所なんてないんだもん…。でもさ、可笑しいんだよ。俺様が殺した人は、みんな最後に誰かに会いたいとか誰かの名前とか叫ぶの。もう死ぬんだから会えるわけないし、呼んだって聞こえるわけないじゃんね」

彼の瞳は酷く歪んでいて、悲しいと訴えているようだった
しかし、その悲しみに、自分では気付いていない…
いや、気付こうとしていないのだろう…

「俺様はさ。孤児だったんだ。誰も助けてはくれなかった。生きるのに必死で、時には人を殺してでも食料を手に入れた。ある時、名前も知らない殺し屋の人にあって、その人が俺様に殺しの技を教えてくれたんだよ。誰にも知られないで人を跡形もなく消す方法。だから、俺様も人殺しを仕事にする事にした。お金もたくさんもらえるし。楽だし…」

そう言って笑う彼の頭を、某は無意識の内に撫でていた

「旦、那…?」

「もう良い。辛いであろう?」

「辛い…?何が辛いの?俺様の生きてきた人生を否定しろってこと?」

「違う。そうではない」

「じゃあ何?同情?あっきれた。俺様の見込み違い?あんたも他の奴らと同じ…」

「佐助は…、佐助は優しさや愛をもらえなかった事が辛くて寂しかったのだろう?」

某がそう言うと、彼は某を睨みつけるように顔を歪め、噛みつく勢いで某の方へ顔を向け、怒鳴る

「優しさ!?愛!?そんなのあるわけないじゃん!!」

マジックミラー越しに見ていた小十郎は慌てて扉を開け、中に入る

「真田!!」

しかし、某は驚きも慌てもしない

「某があげよう」

そう静かに呟く

「はっ?何言って…」

「某が…佐助に愛や優しさを教えてやる。だから、某を信じろ」

そう言って、また彼の頭に手をポンと置いて

「また来るでござる」

とだけ言い残して、小十郎さんと部屋を出た


1人そこに残された彼は、

「某が教えてやる…ねぇ…」

と幸村の言葉を呟くと、クスクスと笑いだした

「なら、それがどこまで本当か試してあげるよ…。旦那…」

小さく呟いた彼の顔は、狂喜に満ちた笑みを浮かべていた

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