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中編小説
今に至るまでA
「旦那!!無事!?」

「へっ?あっ、貴殿は…」

独眼竜の手を頭に乗っけた旦那がこちらを振り向いた
その姿に少しイラッとして
旦那の頭の上のそれを叩き落とす

「ちょっとちょっと独眼竜…あんた何してくれちゃってるわけ!?」

「Ah?俺は何もしてねーぜ?なぁ、幸」

「ゆ…幸!?なんでそんな親しげな…」

「貴殿こそなんでござるか!?某の友人に対してあまりにも失礼ではないか!?」

それまで黙っていた旦那が俺様に向かって怒った

今まで俺様が怒った事はあっても、旦那に怒られた事なんてほとんどなかった


あの時を除いては…
……まぁ、今あの話はしないけどさ


「だん…な…?」

びっくりして、どうしたの?って聞き返そうとすると
俺様の話を遮って旦那が怒鳴る

「先輩だからと言って、某の友人を侮辱することは許されませぬ!!某の友人に何の恨みがあるかは知らぬが、見ず知らずの貴殿が某の友人を侮辱するなど失礼でござる!!」

「見ず…知らず…?」

ズキッと胸が痛む
旦那には記憶がないのは知っていた
でも、それだけは聞きたくなかった…

「大体な…」

「……どうも…すみませんでした…」

旦那の言葉を今度は俺様が遮って、深く頭を下げた
もう聞きたくないと
何も言わないでくれと

これ以上旦那から発せられる『他人であるのに』というのを聞きたくなかった

俺様はこんなに必死に探していたのに…
ずっと大切に思っていたのに…

そんな事を思っていると、自然と涙が溢れてきてしまう

その涙を見られたくなくて
深く下げた頭を勢いよく、旦那とは反対に向けてその場から走り去った

少しでも旦那から離れようと…

ボスンッ
したのに、校舎に入ってすぐに誰かにぶつかってしまった

「ッ…たいなぁッ!!……あっ…」

完全に八つ当たりで俺様はぶつかった相手に怒鳴ってから顔をあげると

「す、すまねぇ。怪我はないか…?」

そこに居たのは片倉小十郎だった
小十郎はぶつかった俺様の顔を覗きこんでギョッとしたように

「な、泣いてるのか!?そ、そんなに痛かったか?」

とオロオロするものだから

「ッ…そう!!俺様ものすっごく痛かった!!だからちょっと来て!!」

そう言って、困った顔の小十郎を無理矢理腕を引っ張って屋上へ連れていく

そして、屋上についてすぐ俺様は泣いた
声を押し殺して泣いた
立ったままだけど気にしなかった
それを、小十郎は無言で抱きしめた
何も聞かず、静かに俺様の頭を撫でてくれた

いつもなら絶対人前で泣いたりしない
こんな事される前に避ける

でも、今日だけはこのまま甘える事にした
それだけ、俺様は傷ついていた…

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あきゅろす。
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