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中編小説
今に至るまで@
それから数日
俺様は根気よく旦那に付きまとった
……まぁ、影からだけど

その結果
姿形だけでなく、話し方も性格も行動の仕方も…
全てが俺様の知る旦那そのものだった

旦那には過去の記憶だけがないのだ

「よぉ、猿飛。どうした、そんな顔して」

「あっ、右目の旦那…。今日は独眼竜は一緒じゃないの?」

「まぁ…学年が違うからな。政宗様にも予定ってもんがあるだろう。それより、なんか悩み事か?相談に乗るぜ?」

常に大人の雰囲気を漂わせている右目の旦那こと片倉小十郎は、俺様の座る席の前の席へと腰を下ろしてこちらを向いた

そう、この学園には旦那だけではなく元戦国時代の武将やら忍やらがたくさんいる
しかも、皆昔の記憶を持っていた

だから、旦那にも…と期待していたのだが…

「なんで旦那だけないんだよ…」

俺様はがくりと肩を落とす
あまりのショックに涙が…

と、悲しみに浸っていると
目の前のでかい男が無言で両腕を広げていた

「あ、あの…。何してんの?」

あまりに不可解な行動だったため、悲しみも冷め、つい不審な目を向けてしまう

「あ、いや…。なんだか泣きたそうだったから、胸でも貸してやろうかと…」

その視線に、小十郎は少し顔を赤らめて静かにその腕を下ろした

「心遣いは嬉しいけど…。生憎俺様人前で泣けるような子じゃないから…」

ハハッと笑って返すと、小十郎は真面目な顔で

「俺がいつでも相談に乗ってやるから。…待ってるから」

と言ってきた

その時、小十郎の言葉の裏に隠された思いなど露知らず

「あー、うん。どーも。でも俺様としては、独眼竜が旦那に近寄らなくなるのが一番助かるかも」

なんてへらりと笑って返した

小十郎は

「そうか…」

とだけ呟くと、じゃあなと少し寂しげに言って行ってしまった
なんだか少しだけ気にかかったが、今は旦那の事を考える方が大切なのでスルーすることにする

旦那は今頃何してるんだろう…

と、ふと何気なく窓の外を見ると
そこでは俺様が今一番心配していた出来事が起こっていた

……そう
独眼竜と旦那が2人きりで会っていたのだ

ここは2階
この距離では、さすがの俺様にも2人の会話は聞き取れない…が
独眼竜と旦那は楽しそうに会話をているように見えた

しかも、外から窓際に座る俺様を見つけた独眼竜は、にやりと笑い
わざとらしく旦那の頭を撫でた

「あの野郎!?」

俺様はガタリと音が立つほどあわてて椅子から立ち上がると、一目散にその場へと向かった

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