短編小説@ 甘い蜜にはご注意を(中) 「……はぁ、はぁ…。まったく、俺様の仕事と給料って絶対見合わないと思うよ…。旦那…俺様の給料…もうちょいあげてくれてもいいんじゃない?……って、聞こえてないか…」 と愚痴をこぼしながら 教団からある程度離れた所に来た時だった 「ワンッ」 「ん?犬?まったく、野犬も増えてんのか…」 「クーンクーン…」 「……ちょっと待って。なんでこんな耳元で………ッ!?」 耳元で犬の鳴き声がする 気のせいではない と思って、恐る恐る後ろを振り返ると 先ほどまで旦那がいたはずの背中には 耳を垂らした大きな犬がいた 「うわぁぁぁ!?」 「キャン」 びっくりしてその犬を背中から地面に落としてしまうと 犬は痛そうに鳴いた でも、そんな事に構ってる暇などなくて 「犬!?な、なんで犬!?だ、旦那は!?えっ!?俺様旦那と間違えて犬を!?いやいや…さっきまでは確実に旦那だった…。もしかして、俺様幻覚見せられてたの!?くそッ…やられた…」 「クゥーンクゥーン…」 「何?俺様今忙しい……ん?」 自己嫌悪していると 先ほどまで背負っていた犬が俺様の下ろされた手にすり寄ってきた 最初は無下に扱おうとした ………が、その犬が身に纏っているものに物凄く見覚えがあった 「もしかして…旦那…?」 と聞くと、犬は嬉しそうに尻尾を振って 「ワンワンッ」 と吠えた ………………って、いやいやいやいや。 有り得ないでしょ 犬が旦那!?なーに言っちゃってんの俺!!! 「って…んな訳ないか」 とぼそりと呟くと その犬は 「クゥーン…。ワン!!ワンワンッ!!」 と何か言いたそうに吠えた 確かに、その犬が身に纏っているのは紛れもなく 先ほどまで旦那が身に纏っていた服だ ……ただ、犬にはちょっと…ってより、かなり大きい 明らかにその服は人間用のサイズだ だけどさ!? 犬が旦那って有り得ないでしょ!? 「俺様は旦那を探しに行かなきゃいけないから。お前さんに構ってあげてらんないの。悪いけど、ここからは1人でいてね」 と犬に背を向けた瞬間 グイッと後ろに引っ張られた 振り返ると、犬が泣きそう… ………いやいや、犬が泣きそうとかあるのって感じだけど!! 本当になんか…泣きそうな顔で俺様の服の裾をくわえて 「クゥーンクゥーン」 と鳴いた ………なんか、旦那に見えなくもな……いやいやいやいや!! 今何考えてた!?自分!! とか、1人でノリツッコミをしてると その犬は、俺様の背中に前足をかけてきた 「ちょっ!?………はぁ…。一緒に行きたいの?」 しょうがなく諦めたように聞くと 犬は嬉しそうに 「ワンワンッ」 と吠えて尻尾を振った [*前へ][次へ#] [戻る] |