短編小説@
大切な貴方へ…(下)
「ッ…はっ…こじゅ、ろ…」
政宗様の部屋に戻ると
先ほどのやつが言っていた通り苦しそうに呻いていて
いつもの彼からは想像出来ないほどに
その呻き声はあまりに弱々しかった
俺は見ていられなくて
思わずその儚い存在に腕を伸ばし
壊れてしまわないようにそっと抱きしめた
「政宗様…。私は此処にいます。大丈夫ですから…」
すると、苦しそうに眉を寄せていた顔がすっと戻り
うっすら目を開けた
「こ、じゅうろう…?此処は…?夢…なのか?」
「政宗様!!意識が戻られたのですね!?……良かった…」
「……小十郎?」
ぎゅっとキツく抱きしめた
夢じゃないと
現実だと知らせるように
「……政宗様。最近寝れてないようですね」
政宗様の意識がはっきり戻ってきたのを確認すると
俺はすぐに政宗様を問い詰める
「…shit…。あいつ、しゃべりやがったな?」
政宗様はバツが悪そうに顔をしかめた
そんな政宗様に
俺は接吻を落とした
軽く思いを込めた
一方通行の接吻
「な、なにしやがんだ小十郎!!」
「……ずっと黙っておりましたが、政宗様が不安になるのなら仕方がありません。この小十郎。貴方の事をお慕いしております」
「なっ!?」
政宗様は真っ赤になって一歩引く
拒絶されるのはわかっていた
だから、本当は隠しておくはずだった…
だが、今は信じてもらうにはこれしかない
いくら言葉を並べようと
不安定な心には届かないから…
だけど…
「私は…政宗様を愛しております。だから…私自らが政宗様を残してどこかへ行くなどあり得ません。……ただ、こんな気持ちを抱いてしまった私など気持ち悪いでしょう…。なので私は…」
「勝手に話しを進めんじゃねぇ!!!」
政宗様は
顔を真っ赤にしたまま怒鳴って言った
「俺の気持ちは無視か!?お前だけ言や終わりなのかよ!?」
「ま、政宗様…?それは……ッ!?」
俺が政宗様の真意を聞こうと首を傾げると
いきなり政宗様が抱きついてきて
なにか小さく囁いた
「……ッきだ…」
しかし、小さ過ぎて聞こえなかった
「今なんと…」
「俺もお前が好きだ!!俺にはお前が必要なんだ!!兵としてじゃなく…恋人としてッ!!」
政宗様の顔はますます赤くなった
そんな政宗様が可愛くて
もう一度政宗様の唇に接吻を落とす
今度は甘い甘い
両通行の優しい接吻
愛おしい貴方へ
「政宗様…。この小十郎、貴方の右目として…、また、生涯の伴侶として…これからも貴方様に仕えさせていただきます。離して欲しいと言われても手離すつもりは毛頭御座いませんので…覚悟して下さいね?」
やっと叶ったこの思い
「HA!!上等!!一生俺様のそばを離れんじゃねぇぜ?小十郎」
必ず幸せにすると誓いましょう
「はっ!!」
必ず楽しい日々にすると誓いましょう
「Ok!!じゃあまず手始めに一緒に寝ようか…」
「えっ!?いや…それは…」
「なんだぁ?俺と寝たくねーのか?」
「い、いえ…そういう訳では…。ですが、色々…我慢出来ないといいますか…」
「Aa?ぐちゃぐちゃ言ってねーでさっさと来いよ」
「うわっ!!」
貴方は私が必ず御守りいたします
「政宗様…。強引過ぎます…」
「たまにはいいじゃねーか…。……なぁ、小十郎…」
「はい?」
「…………ありがと、な」
だから…
「愛してます…政宗様」
ずっと私の側に居て下さいね?
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