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シリーズ
おいでませ!ボカロ家族。〜サムライ☆神威がくぽさん崩壊編〜
「む?これは…」

お前どこの時代の衣装よ?的な格好をしたサムライは『Coca-Cola』と書かれた鼈甲色の(恐らく)飲み物を発見した。

ちなみにサムライだから英語は読めない。

ダン〇ング☆サムライに英語歌詞あったじゃんとか突っ込んじゃダメ。ダメダメ。

コーラと見つめ合うこと数十分、本日のボカロ家を恐怖とくだらなさの底に突き落とした事件の幕が、開いたのだった。






「ただいまーってうわあっ!?」

カイトがぽへぽへと居間の扉を開けると、何故か刀が吹っ飛んできた。

ビーーーンッといい音を響かせて、扉の横に刀が突き刺さる。

「えっがっくん?どどどどうしたの?」

居間の中央には仁王立ちしているサムライ、すなわち神威がくぽさん。

うちに遊びに来ていたはずの彼は、紫のオーラを立ち上らせながらどう考えても正気を失っていた。

「腹切れ貴様あああぁぁぁっっ!!!」

「ええぇぇぇっ!?」

どこから湧いてきたのか、もう一本の刀を持ったがっくんが僕に襲い掛かってきた。
もちろん刀を持って。

「カイ兄何騒いでんの?」

その時すぐ後ろからレン君の声がして、僕は真剣に焦った。

「レン君来ちゃダメ―」

と言おうといた瞬間、僕の横を何かが光速で通り抜ける。

黒い…何?

目の前を見ると、がっくんが沈没していた。

その横をころころと茄子が転がっている。

「そのサムライさんどうしたのさ?留守番も出来なかった訳?」

振り返ると、レン君が片手で買い物袋を抱えて片手で茄子を上にポンポンと投げていた。

「レ…レン君っ助かったよ〜っ」

今日がっくんが来るから夕飯麻婆茄子にしておいてよかったっ!(作るのめーちゃん達だけど)

「がっくんどうしちゃったんだろう…」

傍らにしゃがみこんで、がっくんをつんつんしてみる。

「あれ…リンのコーラの蓋開いてるね」

テーブルの上にはCoca-Cola。
リンが飲もうと思ってそのまま放置して出掛けたんだろう。
何故わかるのかというと、横に置いてあるキャップに『リンの!』とデカデカと書いてあるからだ。

あー…もしかして…。

「コーラに酔った…とか」

茄子を袋の中にしまいながら、くだらない憶測に行き着く。

多分真実だ。

「がっくん炭酸苦手だったのかなぁ」

相変わらず動かなくなったがくぽをつんつんしていると、いきなりがくぽが立ち上がった。

「うわっ」

「カイト殿おおおっっ!リズムに乗れぬ奴は腹切り御免である!!!」

うおおおおっと叫んだあと、がくぽが大声で歌い始めた。(しかし無駄に美声)
カイトは驚いて尻餅をついたが、その熱意に心打たれる。

「がっくん…!そうだよねっリズムに乗らなきゃね!」

そしてカイトも立ち上がると、大声で歌い始めた。

「ただの馬鹿だろ…」

いくら家自体が防音してあるとはいえ、防音室で歌えよ。

呆れながら遠巻きに兄と従弟の乱心を見ていると、玄関の扉の開く音がした。

「わあっどうしたんですかこの部屋ー?」

「何でカイ兄とがく兄歌ってるの??」

ミク姉とリンが、俺たちが帰ってくる前に阿呆サムライが踊り歌い狂っていたせいで荒れている室内やその他諸々に驚いていた。

あ、カイ兄も踊り出した。
magnetって踊りついてんの?

「何やってんのあんた達はーっ!」

その時耳をつんざくほどの怒声が聞こえて、メイコ姉が怒りオーラ全開でドアの前に立っていた。

どうやら収録帰りに三人で帰ってきたらしい。

あ、メイコ姉の投げた鞄で一石二鳥、二人が沈んでいた。
さすがメイコ姉。
でもあの鞄…痛そうだよな…。

「部屋の片付けでもしますか」

俺はやる気なく呟いた。




「大変申し訳ないで御座る」

無事片付いた室内で麻婆茄子を食べていると、二ヶ所にコブが出来ている迷惑なお隣さんが、箸とご飯を持ちながら小さくなって謝った。

ちなみに先ほどまで『切腹してお詫びを』的なことを言っていたのをメイコ姉の一喝によって黙らせたところだ。

「僕もごめんなさい…」

その隣で、頭にコブ一つ作ったカイ兄が謝る。

「壊れた物もなかったですし、こうやってみんなで美味しい麻婆茄子を食べれたからよかったじゃないですか」

にこにこと若草色のお茶碗を持って、ミク姉が笑う。

「歌うなら私も歌いたかったーっ。がく兄も今度一緒に歌おうね!」

「ミク殿、リン殿…」

がくぽがうるうると瞳を潤ませる。

「まぁあんたはもう炭酸系は絶対飲まないことね。酒は強いのにねぇ…」

意味不明だわ、とメイコ姉がご飯を綺麗によそって肩を竦めた。
確かにワクレベルのメイコ姉と一緒に飲めるなら相当強いんだろう。
カイ兄は下子だから論外。

「忝ない。感謝するで御座る」

武士のように頭を下げて、がくぽが優しい笑みを浮かべた。

何だ、こういう風にも笑えるんだな。

「俺とも今度一緒に歌おうよ。カイ兄と三人とかでさ」

普通にだけどね、と笑うと、隣でリンが叫んだ。

「ずっるーいっ!リンも一緒に歌うからね!」

「はいはい」




我が家は今日も、平和です。(多分)





2009.11・24


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あきゅろす。
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