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シリーズ
おいでませ!ボカロ家族。〜レン君思春期(?)編〜
「カイ兄はさ…好きな人とかいるの?」

白い息を吐いて、隣を歩く(一応)兄に小さく問い掛ける。
横を見上げると、ネギやらアイスやらが飛び出した紙袋を両手に抱えた兄が、豆鉄砲を食らったような顔をしていた。

顔だけはいいのに、本当に間抜け面だ。

「えっレレレレン君っそれはもしかしてレン君に好きな人が…?わぁどうしようお兄ちゃん全力で応援するけどちょっと寂し」

紙袋を抱き締めてギュルギュルしている兄を放置して、兄より一回り小さな紙袋を抱えて歩く。

やっぱりカイ兄に言うんじゃなかったな。

「はぁ…」

「待ってよレン君っ!ど、どういうことだったの?」

置いていかれたことに気付いたらしい兄が、後ろから付いてきた。

「別に…『好き』になるって、どういう気持ちだろうって思って」

雪道をサクサクと歩む足元を見つめる。

俺たちでも、恋は出来るんだろうか。

それは俺がリンやミク姉、カイ兄やメイコ姉に向けている感情とはどう違うの?

「うーん…僕はめーちゃんもミクもリンちゃんもレン君も大好きだけどねぇ。でも、そういうことじゃないんだよね?」

考えるように上を向いて、カイ兄が俺を見た。

「まぁね。…で、カイ兄は『そういう』意味で好きになった人いるの?」

視線を向けると、カイ兄が目に見えて動揺しはじめた。

「え?えーと…いやうん、あははは」

視線が泳ぎまくっている。

そっか、カイ兄には好きな人いたんだな。
誰かは聞かないでおこう。

でも少し、寂しいかもしれない―

「レン君はカッコイイから、いっぱい好きだって思えていっぱい好きだって思ってくれる人がいるよ。大丈夫」

袋を片手に持ち直して、カイ兄が俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。

「髪が乱れるんですけど」

片手でその手を払いのけながら、それがちょっと嬉しいと思っている自分がいた。


あーあ、まだまだガキだよな。
でもいつかは、『好き』になった子を必ず守れるような男になるから。



カイ兄みたいな、とは絶対口に出しては言わないけどね。






2009.11・24


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あきゅろす。
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