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シリーズ
おいでませ!ボカロ家族。〜リンちゃん思春期編〜
メイコ姉。赤ちゃんってどうしたら出来るの?」

マグカップを両手で持った妹が、ポツリと呟いた。

「…またいきなりどうしたの?」

思わず何ともいえない顔になる。
向かい側のソファで私の作ったココアを飲んでいた14歳の妹の問いに、私は何と答えればいいのか。

私は自分のコーヒーの入ったマグカップをコトンとテーブルに置いた。

「今日今回の曲のマスターと話してたら、赤ちゃんの話になったの。マスター赤ちゃんが出来たんだって。それで帰り道にレンに赤ちゃんってどうやったら出来るの?って聞いたら、レン怒ったんだよ!絶対レンは知ってたんだよ!」

次第にその時の怒りを思い出したのか、ぷんぷんと怒り始める。

なるほど。

そのマスターとやら余計なことしてくれたわね。

でも…
足を組み直す。

もうそういう時期なのかしら。
ボーカロイドは年は取らないけど、色んな歌を歌って『心』は成長してくから。

リンもレンも思春期なのねぇ…。

「カイ兄にも聞いてみたんだけど」

しみじみと妹弟の成長を感じていると、とんでもない発言が聞こえてきた。

「…なんですって?」

「帰って来たら居間にいたから聞いてみたんだけどね、カイ兄固まったあとオロオロしてるだけなんだもん。ミク姉も知らなさそうな気がするし」

ぶーと頬を膨らませて文句を並べる。

よかった。
余計なことを言いやがったら一ヶ月アイス抜きにしてやるところだったわ。

けど、

「私たちには子供は出来ないのよ。それは知ってるでしょ?」

私はリンに向けて諭すように微笑んだ。
私たちボーカロイドは子供を産むに準じる行為、すなわち性交は出来ても子供は出来ない。
どんなに努力をしても所詮機械だから。

それでもいいと、だからこそ歌い生き続けていようと思えるようになるには、まだこの子達は早すぎるのだろう。

「…わかってるけど…」

小さな声で言って、ぎゅっとカップを握って俯く。

ふっと笑みが漏れた。

一生懸命生きようとしてるこの子達が、愛おしくて仕方ないから。
私は手を伸ばしてリンのぴょんぴょんと跳ねた髪を撫でた。

「リンには私たちがいるでしょ。私たちは子供を作ることは出来ないけど、かけがえのない『仲間』がいるわ」

どうしようもない奴もいるけどね、と軽く乱れた髪を優しく撫で付けて元に戻す。

「うん…、ありがとっ!カイ兄はアイス一個、レンは一緒に歌を歌うことで許してあげることにするっ」

いつものように笑った妹に、私もこの子達に救われているのだと実感する。

「ただいま帰りましたあ」

「めーちゃんリンちゃんただいまー!あ、ココアの匂いがする。めーちゃん僕の分あるー?」

「カイ兄…子供…」

玄関先からバタバタと声がした。
どうやら三人が買い物から帰ってきたらしい。

「さて、と。ココアでも温め直しますか」

外は寒いから、きっと喜んで飲むだろう。
レンは大人ぶってコーヒーを飲むから、カフェオレにでもしてあげようかな。

「リン。いい女になりなよね」

台所にいくため立ち上がると、リンにウインクをした。

「うん!」

元気一杯に答えた妹がアイスとネギと澄んだ歌声で笑顔になるまで、あともう少し。






2009.11・24


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あきゅろす。
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