シリーズ
おいでませ!ボカロ家族。〜鏡音レンの困惑編〜
「レンっ!見て見てっこの服可愛いでしょーっ」
リンがワンピースを体に当てて、俺の方を見る。
「あー…可愛いんじゃない」
「何よーっちゃんと見てよね!」
やる気なく返事をしたら、ぷんぷんと頬を膨らませたリンに噛み付かれた。
「あ、リンちゃん。これも可愛いよ」
リンの隣にいたミク姉が、近くにかかっていたワンピースを手に取ってリンに見せる。
「ホントだーこっちも可愛いね!でもミク姉の方が似合いそう」
着てみて着てみて!とキャイキャイ騒いでいる姉二人を、俺は少し遠く離れたところから見ていた。
場所はデパートの、女の子の服売り場。
はっきり言ってさっきから視線が痛い。
何でこんなことになったのかと言うと、俺たちの家族に巡音ルカという新しいボーカロイドが加わったからだ。
いや正確に言うとルカ姉(俺の方が生まれた順は上なんだけど)に可愛い服を買ってあげよう、という女性陣(メイコ姉・ミク姉・リン)の発案によるものなんだけど。
そして運悪く歌の収録に重なってしまったメイコ姉とカイ兄の代わりに俺が連れ出された、と。
っていうか絶対自分の服選びに夢中になってるでしょ?
「はぁ…」
腕を組んだままため息を吐く。
女の子ってよくわからない。
「レンっ見てミク姉可愛いでしょーっ」
リンに声を掛けられて着替え室から出てきた二人を見ると、ミク姉が清楚な感じの花柄のワンピースを着て何だかワタワタしていた。
「リンちゃん…っ何となく恥ずかしい…」
「いいのいいのっ!ミク姉に似合ってるんだから!レンも可愛いと思うでしょー?」
そこで俺に振らないで、リン。
「あー。可愛いんじゃないか、な」
何か気恥ずかしい。
弟って色々大変だよホント。
ぶっちゃけ服のことはよくわからないけど、ミク姉もリンもそのままで十分可愛いと思うけどな。
口には出さないまま思うと、二人がレジに向かっていた。
「あれ?買う服決まったの?」
ミク姉の手にはいつの間に着替えていたのかさっき着ていた花柄のワンピースと、リンの手の中には俺に見せた向日葵柄のワンピースともう一着の、大人っぽさの中に可憐さのある洋服。
確かにルカ姉にはぴったりかもな。
「うん。私たちにも一着ずつ買うことにしたの。せっかくだから」
ねーっとリンがミク姉を見て笑う。
「ルカ姉さんにあげる服も決まったし、たまには…ね」
ミク姉とリンが、見つめ合ってにこにこと笑っている。
…やっぱり女の子ってわからない。
「帰りに三人でクレープ食べようねーっ」
「レン君、今日は買い物に付き合ってくれてどうもありがとう」
両脇から腕を引かれて、とことん俺は姉に弱いのだと思い知った。
2009.11・24
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