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False Forest
※サラザール・スリザリン×ゴドリック・グリフィンドールです。
捏造設定ですので嫌な方はご注意ください。









人を呑み込むような背の高い森の中、開けた場所。

一本だけ佇む大樹の根元、黒衣の人物が腰を下ろしている。

俯く顔に黒に近い濃紺色の髪がかかった人物は、不意にその低い声で人語では解することの出来ない言語を紡いだ。

その『声』が空気を震わせた途端―男が腰掛けた巨木の生い繁る葉の中から、一匹の蛇がするすると降りて来る。

巨大な蛇は黒衣の男の前で恭しく一礼すると、チュルチュルとその舌を出した。

男がまた、口を開こうとしたその時―

「ああ、やっぱりこんな所に居たんだ」

と、明るい声が響いた。

もう聞き飽きる程聞いたその声に、顔を上げると繁る葉で陰になった此方の向こう、射し込む光の中癖のある黄金の髪を反射させた男が笑っていた。

「…何の用だ」

苦々しい顔にいつもより更に低い重低音で問うと、腰に剣を佩いた金の男はにっこりと笑い、此方へと近付いて来る。

「サラが衣装合わせサボるから、ロウェナがかんかんだったよ?」

そう言いながら隣へと腰を下ろし、クスクスと笑う。

「くだらない…」

チッと舌打ちする。

その正装である真紅のマントを、座り込んで汚している奴などに言われたくは無い。

黒衣の男―サラザール・スリザリンは目の前で控えていた大蛇に目だけで退散を命じると、一礼した大蛇はその場を去って行った。

その背を見送りながら、腰辺りまで伸びた金の髪に緑青色の瞳を持つ青年、ゴドリック・グリフィンドールは口を開く。

「いいなぁ、蛇と話せるなんて。僕も話してみたかったのに」

そう心底残念そうに言うゴドリックに、サラザールは一瞥を送る。


蛇と話すことの出来る『パーセルマウス』は、魔法族でもあまり生まれるものではない。


その存在の稀有さ故周りから恐れ気味悪がられていた私に、動物と話が出来て羨ましい等と暢気かつ本気でほざいて来るような奴は、後にも先にもこの男だけだろう。

昔を思い出し渋い顔をしていると、眉間にトンと指を置かれた。

「…おい」

何の積もりだ、と静かに青筋を立てると、人の眉間に人差し指を置いた男はにっこりと笑った。

「眉間の皺〜!サラは元々整ってる顔してるんだから、いっつも人相悪い顔してなければ絶対モテるのに」

「余計な世話だ」

楽しそうな声を、右手の甲で払う。

ゴドリックは勿体無いなぁと呟いて、そのまま樹の根元を枕にするようにごろりと寝転がる。

…これでマントは完全に駄目になったな。

「―いよいよ明日だね」

そよぐ風に気持ち良さそうに目を閉じながら、ゴドリックが告げる。

「…そうだな」

木陰の暗がりでも目を引く金糸から瞳を逸らし、遠くの森へと視線を移す。


明日、ゴドリック・グリフィンドールとサラザール・スリザリン、ロウェナ・レイブンクローとヘルガ・ハッフルパフの四人を創立者とした、『ホグワーツ魔法魔術学校』が創設される。

創立者全員が二十代という異例の若さでありながら、それぞれが偉大な才能と実績を持った魔法使いと魔女だった。

今日は明日の式展に着る衣装を合わせる日だったのだが、予想通りというか何というか伝えた場所にサラザールは現れなかった。

そこで唯一サラザールの居場所に見当がついた、ゴドリックが迎えに来たのである。

「どんな子達が来るんだろうね?今から楽しみだよ」

鼻歌でも歌い出しそうにゴドリックが告げると、サラザールの雰囲気が険悪なものへと変わった。

「…マグルを入学させるのは反対だと、言っただろう」

魔法を使うことの出来ない、非魔法族。

下賎で低脳な種であるマグルを、サラザールは深く嫌悪していた。

「そうだねぇ…でも僕は魔法が使えないからこそ知恵の限りを使って進歩する、そんなマグルの堅実さが、とても好きだよ」

住む世界を別にして生きて来た、二つの種族。

マグルを嫌悪する傾向があることは知っている。

サラザールが、マグルを嫌っていることも。

けれど―学びたいと思っている者を拒む理由など、何処にも有りはしないのだ。


ホグワーツは学びたいと思う者全てに、門を開く。


にっこりとサラを見上げると、一瞬眉を顰めた後サラザールは溜め息を吐いた。

「もういい。お前と話していても埒が明かない」

そう行って立ち上がり、スタスタと歩き始める。

「おい…帰らないのか?」

ピタリと立ち止まって不快そうにこちらを見る瞳に、くすりと微笑んだ。

「そうだね、帰ろうか」

ヒョイと上半身を起こすと立ち上がり、マントの土を払う。

「ロウェナ怒ってるかなぁ。ヘルガは心配してるだろうけど」

隣に並び歩くと、腰に佩いた剣がカチャリと音を立てる。

そういえば最近交渉や創立のための準備で、こうやってサラと話すこともなかったなぁ。

「サラ、今日は歩いて帰ろうか」

隣を見てにっこりと笑う。

「…まぁ良いが」

不機嫌そうな顔で答える親友であり盟友に、声を立てて笑った。



歩き続けよう、この道を。

例えどんなことがあろうとも、3人の“友”と共に。






2009.7・24


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