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リドダン
Love song of Darkness
初めてあなたを見た時僕の胸を覆ったものは―強烈な、憎悪。


己の魔法使いとしての才能に気付いたのは、いくつだったか覚えていない子供の時。

僕の母親は魔法使いで―父親は、マグルだった。

父は本当に無能な男だった。
何をやっても魔法使いである母に敵わず、へらへらと笑っているだけの弱い“人間”。

僕は何故か、幼い頃から蛇と話すことが出来た。
そのことが普通ではないと気付いたのは、僕が母の使う魔法術全てを使えるようになった頃。

低俗な奴等と話しているより、蛇達と話している方がよっぽど面白かった。

―その本当の意味に気付くのは、僕がホグワーツに入学してからのこと。

僕の“良い子”の擬態にも気付かない愚かな両親。
唯一父に似た、金のストレートの髪と蒼の瞳を強く嫌悪した。


11歳の時、秀才だと評判だった僕のもとにホグワーツの入学許可書が届き両親は大喜びした。
祝いの言葉を僕は張り付けた笑みで聞く。


―ああ、なんてくだらない世界!いっそ壊してしまおうかな―?


ホグワーツに入学した僕はグリフィンドール寮へ入ることになった。

―組分け帽子って、あんまりあてにならないなあ―

くすりと心の中で笑う。
魔法学校の中でも最高峰と言われるホグワーツに入学しても、僕を凌ぐほどの魔法使いは誰一人としていなかった。
誰も僕の"本当の姿"にすら気付かない。

そう思っていた―あなたに、出会うまでは。


齢六百歳以上にもかかわらず、三十代半ばほどにしか見えない外見。
いたずらっぽい笑みを浮かべたその人は、生徒達の席に優しい視線を注いでいた。

新入生歓迎会の夕食の席。

校長席の隣に腰を下ろしていたその人―アルバス・ダンブルドアを見た時、すぐにわかった。

僕を凌ぐほどの力を持った魔法使いなのだと。

(―っどうして!)

慈しみに満ちたアメシストの瞳には、決して闇に堕ちることのない光。
胸の中を今までに経験したことのない感情が入り乱れ、渦巻いた。

(どうして、“そっち”にいることができる―)

それほどに強き力を持ちながら、それを弱者を守るために使うなど―

(何て、愚かな!)

初めて感じた強烈な感情。
表裏一体のもう一つの気持ちには、まだ気付かないまま。

その人と初めて言葉を交わすことになるのは、それから少したった中庭でのことになる。



幸福で狂おしい―狂恋の始まり。






2009.7・2


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あきゅろす。
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