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十二月シリーズ
神無月と文月※
「…で、お前は何がしたいの?」

両手首を見も知らぬベットの頭に括り付けられ、溜め息を吐きたい気持ちになりながら視線を横に投げた。

「この状況で聞くんですか?やっぱり貴方は馬鹿ですねぇ」

笑みを湛え、かつ人を小馬鹿にした顔で微笑むクソ生意気なガキに若干キレそうになる。

じゃあその馬鹿にこれから突っ込もうとしてるテメーは何なんだよっ!

「だから男は専門外だって言っただろ。俺は可愛い女の子専門なの!」

何でこんなヤツ相手に女好きを熱弁しなきゃいけないのか。
女の子も楽しいセックスも大好きだが、男を抱く趣味も抱かれる趣味もない。

「誰が男の相手をしろと言いました?あんたは俺だけに脚を開いてればいいんです」

いかにも優等生です、という笑みを浮かべてヤツが放った言葉は全く俺の理解の範疇を越えていた。

何でこんなヤツに目を付けられてしまったのか。

「あのねぇ、お前が今しようとしてることは強姦だよご・う・か・ん。男同士だろうとしちゃダメでしょ。セックスは和姦で気持ちよーくするものだよ」

悲しいけど一応説得を試みる。
俺のモットーはコンドームを着けること合意ですること、そして気持ちよくすること、だ。

「あんたも煩いですね。強姦だろうと和姦だろうと感じれば同じでしょ?ああそれと今しようとしてることに監禁、も入ってますよ」

よかったですね。

「なん…っ」

だって!?と間抜けな声を上げそうになると、ベットの端からギシリと乗り上げて神那が俺の脚を掴んだ。

「っ、て…っ」

「例えばこの脚の腱を切ってしまえば、ここから出ることは出来ませんよね」

俺の右脚を自分の顔の横まで持ち上げて、腱を指で優しくなぞる。
ゾワゾワと背中に悪寒が入った。

こいつやっぱりおかしい…!

そんなの正気のヤツが考えることじゃないだろう。

「おっ前…おかしいんじゃねぇの」

口元が引き攣りそうになるのを必死に抑えながら軽口を叩くと、クスクスと可笑しそうに笑った神那が見せ付けるように腱辺りに舌を這わせた。

「そんなの今更でしょう。貴方がくだらない女共と遊ぶのが悪い」

まるで仕置きのようにそこに歯を立てられ、ビリッとした痛みが入る。

「ってめぇ、覚えてろよ…!」

痛みで潤んだ瞳で怒りを込めて睨み付けると、傷口を一舐めした神那が俺の胸に手を這わせた。

「楽しみにしないで待ってますよ。まぁ貴方が覚えていられれば、ですけど」

意味深な笑みを浮かべて、粘着質に俺の胸を這っていた手を離すと制服のポケットから小さな小瓶を取り出す。

「…あ?」

「これが何だかわかりますか?貴方がわからない筈ないですよね」

態々俺に見やすいように小瓶を持つ。
確かにそれは見覚えのある物だった。

「sex-joyride…」

脳裏に浮かんだ名を呟くと、神那が駄目な生徒が正答を導き出した時の教師のような優しい笑みを浮かべた。

「正解です。じゃあ今から選択肢を二つあげますので、どちらか選んでください」

縛り付けられた俺の身体を跨ぎ、グッと顔を近付けると神那が俺の顔の横で瓶を振った。

「これを口で飲みたいか尻の穴から呑みたいか選んでください」

死ね。
まず俺が思った感想である。

sex-joyrideは依存性が高い媚薬だ。
一時その効用の良さからこの辺りの場で爆発的に流行ったのだが、死者が出たことや入手方法が難しくなったことでだいぶ鎮静化したと思ってたんだが…。

「何でお前が持ってるんだよ」

至近距離でその優等生面を見つめ返す。
この薬のせいで煮え湯を飲まされた身としては、無駄にセレブな高校生とはいえ一介のガキが何でそんな物を手に入れることが出来たかが気になる。

この際それが自分に使われようとしていることは忘れよう。

「秘密です。貴方が僕の名前を呼んで、可愛くおねだり出来たら教えてあげますよ」

「死ね」

やっぱり言ってしまった。
こちとら貞操がかかってるんだから言っても許されるだろう。
こいつにじゃなくて、俺のポリシーにだ。
この時点でも基本楽観的な俺は割りと暢気に構えていた。

「どちらも選ばないなら僕の意思で決めますね」

唇が触れ合いそうな距離で囁き、ベルトを外され両足を開かされる。

「っ、何すんだよっ」

取らせたことはあっても取らされたことはない体勢に、驚いて叫ぶと今度こそ本当に呆れ返った顔をした神那が、俺のズボンを臀部が見えるほどに上げ見下した瞳で俺を見た。

「だからあんたは馬鹿だって言ってるんですよ。さっき言ったでしょ」

そう言うと差し出すように露わにされた俺の尻の間を指で開き、小瓶の中身を俺の腸内に流し込んだ。

「ひ…っテメ、」

液体の冷たさに身を竦めた瞬間、カッと身体中が火照った。

「ぅあ…っ!?」

腸から発火するように熱が広がり、身体が変化していく。

「という訳で、後ろから呑んでくださいね」

片手で瓶の蓋を閉めベットの下に放り投げて、神那が俺の体内に指を潜り込ませてくる。

「わぁやめ、ろっ」

腸内に指が入り込む感触に身体を動かして抵抗しようとしても、両手を繋がれ脚を押さえ付けられていては、身体を左右に振るくらいの抵抗にしかならない。

「ああ…もう勃ってきましたね。即効性は伊達じゃないな」

指をグチグチと動かしながら、神那が笑う。

「嘘…だろ…」

信じられないことに、脱げかけた下着が盛り上がっていた。
泣きたい。
何でこんな形でこの薬の効能を知らなきゃいけないのか。

中を掻き回す指が不快なはずなのに、身体の熱がそれを許してくれない。

「は…っぁ」

思わず熱い吐息が漏れて、頭が靄がかかったようにぼんやりしてくる。
ペニスがジンジンと熱かった。

「邪魔だから脱いでしまいましょうか」

ズルリと指を抜かれ、神那が脚にまとわりついた俺のズボンに手を掛ける。
下着ごとジーンズを脱がされて、隆々と勃ち上がった俺のペニスが現れた。

「これで何人の女を啼かせたことやら。喰い千切ってやりたいですねぇ」

愛おしげに俺のペニスを指でつぅ、となぞり、ふふ、と蕩けるように笑う。

「っあぁぁ…っ!ふ…ざ、け…んなっ」

軽くなぞる刺激にすら敏感になったそこは過剰に反応して、ペニスがビクビクと震えた。
腰から電流のように這い上がってくる強烈な感覚を無視して、不本意な熱に冒され潤んだ瞳で睨み返す。

「元気ですねぇ、薬の量が少な過ぎたかな?でも…貴方はそうじゃなきゃ、つまらないですけどね」

嬉しそうに笑った神那が指を移動させ、俺の首に掛ける。

「……っ」

グイ、と顎を持ち上げるように首を絞め付けられ、苦しい―苦しい筈なのに、それすらも身体は悦ぶ。

「好きですよ、貴方が。低能な女共なんかに渡したく無いと思う程には」

「…っぁ…っは、」

苦しさに目尻から涙が流れた。
だけど俺は馬鹿みたいに脚を開いたまま、首を絞められて治まらない熱に浮かされている。

「―貴方なんて、好きになりたくなかった」

ポツリと、声にならない音で神那が呟いた、気がした。

朦朧としてた俺にはわからなかったけど。

スルリと首を絞め付けていた指が離れて、急に気管に空気が入って来る。

「っゲホ、ゲホッ、ハ…ッ」

噎せて、口の中に溜まっていた唾液が唇の端から溢れる。

「そろそろ薬が完全に回って来ますかね。本当は正気の貴方を抱きたかったけど…仕方ないかな」

それが俺が意識を保てた最後だった。

遠くカチャカチャと音がして熱い物を後口に押し付けられたと思ったら、勃ち上がったモノで尻の穴を貫かれた。

「あ…っああぁあぁぁあああっ!」

熱で弛緩していた身体を一気に貫かれ、快感とも痛みともつかない悲鳴が上がる。

「ひ…っぃやぁ、」

「熱い。焼け爛れて落ちたりしてね」

子供のように涙が止まらなくて見上げた先で、自嘲するように歪められた唇。

「さぁ、溺れて」

甘やかな自虐な笑みの向こうに待っていたのは、自我など何処にも存在しない、享楽と―白。



「…ぁ?」

声が喉に絡まって不快だ。
だるくて堪らない身体は起き上がらず、視線だけをぼんやりと這わす。

「おはようございます。もう起きるなんて、貴方本当に丈夫ですね」

感心したような小馬鹿にしたような声に、ゆっくりと急速に昨夜(かどうかもわからないが)のことを思い出す。

「…神那」

自分でも聞いたことのないような声が出た。
醜く掠れてたけど、そんなことどうでもいい。

「はい」

ずっと縛られていただろう手首が痛い。

「許さねぇから」

真っ直ぐに見上げた呟きは、俺の大嫌いな笑顔で返された。

「覚えてたんですね。嬉しいことです」

可哀想なお前を、俺は許してやらない。







十×七。
表記の媚薬は存在しません。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

2009.12・5

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あきゅろす。
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