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迦陵頻伽―karyoubinga―
C
 一流モデルと花屋の店員。あまりにも不釣合いなカップルだったが、カヤと彼はお互いに愛し合い信頼し合っていた。いつか独立して店を持つことが彼の――二人のささやかな夢だった。
 彼はカヤの成功を自分のことのように喜んで、カヤの立つ舞台に、いつもカヤをイメージした小さな花束を作って届けてくれた。ほかのどんな豪華な花束より、どんな高価な贈り物よりも、彼のくれる素朴で愛らしい花束がカヤには何より嬉しかった。

 「彼がくれる花束は、野の花を集めたような素朴で可愛らしいものだったわ。他の人は私のことを大輪の薔薇や百合に例えたけれど、彼だけは違ってた。……彼だけが本当の私を分かってくれていたのよ」
 そう言ってカヤは嬉しそうに笑う。
 「私達、とてもうまくいっていたの。でも、私がテレビの仕事を受けるようになって、前よりもっと忙しくなった頃から、少しずつギクシャクするようになってしまったのね」

 逢う時間どころか電話で話す時間さえなくなって、彼は少しずつ不満を溜めていったのだろう。毎日のようにテレビや新聞で報じられるカヤのゴシップ、そんなものにますます不安を募らせたのだろう。
 カヤの職業を考えればある程度仕方のないことだと理解していても、一般の常識と良識の中で暮らす彼にとって、それらは耐え難いものだった。
 カヤが売れれば売れるほど、成功すればするほど、二人の時間はなくなり、二人の距離は遠くなった。
 寂しさと心細さに、彼の顔も声もどんどん曇っていった。
 やがて、
 「別れよう。僕たちは住む世界が違ってしまったんだよ」
 とうとうそう言い出した彼に、カヤは涙を流して縋りついた。
 「そんな悲しいこと言わないで。私が愛しているのはあなただけ、本当の私を愛してくれるのもあなただけよ。私にはあなたしかいないの。お願い、私を信じて」
 なりふりかまわず訴えるカヤを見捨てることなど、心優しい彼には出来なかった。何より、彼もカヤを愛していたから。

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あきゅろす。
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