その他の短編小説
A
一方彼女は背が高くて、ベリーショートに近い黒髪から日焼けした首筋がすらりと伸びる、まるで男の子みたいな女の子。
二人が惹かれあうなんて、いったい誰が想像出来ただろう。
でも現実は違っていた。
待ち合わせした喫茶店で、私が二人をお互いに紹介した時、一瞬だけどその場の空気が止まった。
あの時それを感じられなかったのは、きっと私の目が曇っていたから。恋も友情もこれっぽっちも疑ってなかったから。
「こちらが私のカレシの西野(にしの)さん。で、彼女が私の無二の親友の千佳子(ちかこ)です」
私は満面の笑顔でそう言った。
「どうも。西野康介(にしのこうすけ)です」
「中谷千佳子(なかたにちかこ)です」
そう言いつつ顔を上げた瞬間、二人はお互いの目を見つめて息を呑んだ。
私が何も気づかずニコニコ笑っているすぐ傍で、康介も千佳子も一瞬で恋に落ちたのだ。
それでも――これはあくまでも私の想像だけど――最初は二人とも、そんな自分自身の感情を押し込めようとしていたのではないだろうか。或いは見て見ぬふりをしていたのかも知れない。
しばらくの間、私たちはとても良い関係を築いていた。
結婚間近のカップルとその親友。
それまでと変わらず彼と二人きりでデートしたり、千佳子ともランチをしたりショッピングをしたり。何ひとつ変わらない。
けれど私は気づくべきだったのだ。
彼からもらった指輪を自慢する私を見つめながら、千佳子がほんの僅かに表情を曇らせたことを。何気ないふりを装いながら、彼が何度となく千佳子のことを尋ねてきた時に。
本当に、どうして私には分からなかったんだろう。
我ながら馬鹿馬鹿しくて涙が出てしまう。
もっと早くちゃんと気づいていれば、こんなに辛い思いはしなかったかも知れないのに……。
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