その他の短編小説
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たとえどんなに辛くても、いつか悲しみは消えるだろう。
だから今はそれを信じて、前を向いて歩いていこう。
何も考えず。
ただ前を向いて。
歩いていこう。
いつかこの悲しみに「さよなら」を言える日まで。
悲しみよ、さようなら
玄関のドアを後ろ手に閉めて、パンプスのストラップに手をかけながら、ぼんやりした頭で「ああ、そうだ。鍵をかけなきゃ無用心だな」と思い浮かんだ。
こんな時でもそんなことを忘れない冷静さに、自分で自分が悲しくなる。笑いたいような泣き出したいような変な感じだ。
カチャリ。
その乾いた音を聞いた途端、私は耐え切れなくなって膝から崩れ落ちた。
きっと鍵をかけるのと同時に、それまでピンと張り詰めていた神経の糸が切れてしまったんだろう。
「…っ、ふっ……」
冷たいタイル張りのたたきの上に跪くようにして、私は声を上げずに泣いた。ひたすら泣いた。
涙なんて枯れてしまえばいいんだと思いながら、私は何もかも忘れて泣くことに集中した。
いっそのこと涙と一緒に全部流れていって欲しい。
私の中で嵐のように渦巻く怒りも嫉妬も。彼との楽しい思い出も、彼女との友情も。
恋人も親友もいっぺんになくすなんて、まるで昔流行った歌の歌詞のようだ。
あれは何て曲だったっけ?
残念ながら題名も歌手も忘れたけれど、今の私になんてお似合いの歌なんだろう。
あの歌のヒロインのように、私も彼に親友を会わせたことを後悔している。心の底から後悔している。
だって大丈夫だと思ったんだ。
彼女は彼の好みのタイプとはあまりにかけ離れていたし、何よりも私の高校時代からの親友だったし。
彼の好みは、色白で華奢で、巻き髪のロングヘアが似合う女の子。私が彼に片思いしていた頃からそれはずっと変わっていない。(彼を振り向かせるために、私は一生懸命そんな彼の理想に近付こうと努力したんだから)
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